第4話 ライフワークの男

 星新一さんに、鍵を手に入れる話があった。その鍵に合う扉(錠)を求め続けた人生の最期に… というもので、私はそれが大変気に入った。鍵を拾い集めることがライフワークとなったほどだ。

 もちろん、盗んだりはしない。落ちている鍵を拾って、コレクションするだけだ。

「ひどい! 落とした人はきっと困っているはずだ」というご批判も頂くが、どうしても必要ならば、鍵屋を呼んでもいいし、合鍵を作ることだってできるだろう。


 壁一面に引っ掛けてある鍵の一つ一つに、私は無限の物語を思う。

 最近は鍵の形も様々で、いわゆる「鍵型の鍵」は少なくなってきた。「これが鍵?」と首を捻ってしまう形状のものも多い。それに、拾うための手間が面倒なものも増えて、そういうものはホルマリン漬けにして棚に並べているが、気持ちのよいものではない。ならば、やめてしまえばいいのだろうが、ライフワークにしているので、そうもいかないのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る