第10話
11:00 地下駐車場
アキはお開きになってすぐにセイをおいて車へ戻った
和田「今日は篠宮さんと何話したんだ?」
アキ「内緒。」
和田「なんだよ…ちょっとくらい~。…疲れただろ。明日も早い。ゆっくり休め。」
アキ「和田さん。お願いがあるの。」
アキはバックミラーにむけて真剣なまなざしを向けた
和田「なんだ~?給料はちゃんとあげてるぞー」
楽観的な和田の返答
アキ「私、隼人と別れる。」
急ブレーキがかかった
和田は細い道の脇に車をつけた
和田「………今なんて言った?」
アキはもう一度言った
アキ「隼人と別れる。」
和田は魂をぶち抜かれたように口をポカンとあけたまま固まった
和田「隼人さんは…超人気俳優なんだぞ。愛情がなくてもアクセサリーとして利用するんじゃないのか?わざわざ別れなくても…」
アキ「和田さん。隼人は人気俳優。だからこそ、今別れるの。篠宮を手に入れようとしている今、もう隼人はいらない。私が隼人を振った。そして篠宮が私にぞっこんということになれば、これ以上にない話題性がある。今なの。」
和田「だからって…あっちの事務所は大きいんだぞ。それでもいいのか。大きな影響が出る…」
アキ「そこで篠宮の出番じゃない。なんのための篠宮なのよ。あの会長は孫にぞっこんなの。ここを利用しない手はないわ。」
アキの目は真剣だった
和田「ほんとにいいのか…それで…本気で好きでもないやつ…なんでそこまで…」
アキの目つきが変わった
アキ「そんなの決まってるじゃない。ハルのためよ。」
アキ「ハルのためだったらなんだってできる。」
和田「…わかった。何をすればいい?」
アキ「1か月後、記事を出してほしいの。」
和田「記事?」
アキ「はい。内容は…」
和田「内容は…」
“交際2カ月で破局 あの実力派人気俳優隼人も引き止められず”
“隼人を振った新進気鋭のパリコレモデル 今度は御曹司と熱愛”
“お泊まり愛!広告代理店御曹司 パリコレモデル・女優アキににぞっこん”
アキ「一か月後をスタートにして順に流して。」
和田「アキ…本気か?」
アキ「本気よ。ハルのために。私はやりきって見せる。」
和田「悪女になる勇気はあるのか?女性からの反感は否めないぞ。」
アキ「はい。いいんです。初主演スペシャルドラマの宣伝のためです。これで売れれば…5000万貯められるでしょ…」
和田「ああ…桜の咲くころにはな。」
アキ「そうですね…。ハル…」
和田「あんまり無茶するなよ」
___________________
新緑が綺麗な5月
プルルル プルルル
とあるスタジオ
隼人「もしもし?アキ?どうした?僕の声聞きたくなった?」
アキ「ある意味ね。」
隼人「一昨日もあっただろ~で、どうした?」
アキ「話があるの。」
隼人「どうした?」
アキ「今日の11時に代官山のカフェで。」
隼人「わかった。楽しみにしてるよ。」
隼人の表情が曇った
いつものアキの声色と違って聞こえたからだ
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