第3話
英雄は三十八歳までは一軒の施設を任された施設長だったが、その後には五十施設を監督するゼネラルマネージャーに昇進した。今年で三年目を迎える。一年目はその激務と環境の変化からかなり心身の悪化をきたしていた。このままでは潰されてしまう。彼は食生活や健康の見直しをした。
その中で始めた事は朝一番で、「百回のジャンプ」と「早足での散歩」だった。人間はストレスを感じた時には、足を使う、「ジャンプや徒歩」という本能の原点に戻るのだと思った。英雄は平日の朝は早めに出勤して本社周辺を歩いた。
休日には自分の好きな場所を早朝に散歩していた。英雄は持病の高血圧と狭心症があったので激しい運動は控えていた。
休日は朝五時に自宅を出発して、車で十分ほどの運動公園の駐車場に停めて、初めて早歩きの散歩をした。晩春の心地良い風と高校時代に剣道部の一年下の岡崎 雪代と良くデートして初キスまでした公園が懐かしい思い出を運んできてくれて、とても気持ち良く歩いていた。
そして、英雄はそこで、明子と再開する事になった。彼女は、ジョギングをして走っているその姿は一所懸命さと爽やかなオーラに溢れていた。そしてお互いに気付いた。
「岩崎君、散歩?」
「うん。ここは今日、初めてなんだ」
「私は毎朝、走っているのよ」
「だからだね?」
「何、それ?」
「スタイルがいいからさ!」
「ありがとう。何にも出ないわよ!」と言って笑いながら、「岩崎君も同じだよ」
「俺はストレス回避のようなものだからさ」
「そうなんだ……、でも一緒に頑張ろう!」
短い会話の中に誠実さが表れていた。そして、化粧をしていない素顔の表情も清楚で新鮮で、彼女がバレーボールで汗を掻いていた高校時代にタイムスリップしたみたいだった。
英雄は小学二年生から東京品川区の大崎警察で剣道をやっていて、中学、高校と剣道部だった。高校では二段は一人だけで主将だった。彼女はバレー部のキャプテンだった。体育館での光景を思い出した。彼女の長い手と足を存分に使った華麗なサーブやブロックをする姿に見とれていた自分がいた事を思い出した。
そんな事を思い出しながら、英雄の中にある種の感情が芽生えてきた。「彼女はどんな人生を歩んで来たのか、もっと近付きたい」と。二十歳代の頃に結婚して、その後、暫く結婚生活をした後に離婚した事は、同窓会の二次会で聞いた。「子供はいるのか? 今は一人なのか? 彼氏はいるのか?」と彼女に興味を持ち始めている彼だった。
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あの頃の心から笑える自分に戻りたい @k-shirakawa
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