第2話
四十歳の同窓会の翌日、同級生からその時の写真がLINEを通じて送られてきた。沢山ある写真だった。これも定番の事だが禿てしまって誰だか分からない人や体重が二倍以上になってしまった人。皆の変身した面白い写真の数々だったが、どれだけ外見は変わっても、昔のままの気持ちの良い奴ばかりだった。
参加して本当に良かったと心から実感していた茂雄だった。ただ残念な事が一つだけ。英雄はそれほど優秀ではなかったが、クラスで一番優秀で彼と仲が良かった医者をやっている
「アッコ」の画像もあった。英雄は何となくドキドキしてスマホを弄る指がワナワナと震えた。四十歳になっても時めいている自分に照れた。
「ゼネラルマネージャーだったら洋服を買うのも大変だよね?」と明子が二次会の隣に座った時に言った。
「一応はネクタイ着用だけど、春夏はノーネクタイなんだ」
「そうなんだ。私が働いている市役所と一緒だね?」
「市役所なんだ」
「うん、障害福祉課よ。それも今、問題になっている非常勤公務員って待遇だけどね」
「その課だったら、俺も良く行くよ」
「えっ、何で?」
「だってうちの会社は
「そうなのね、もしかして、岩崎君は保育士さんなの?」
「
「後は?」
「自慢に思われるから言わないようにしているんだ」
「そんな自慢なんて思わないから言ってよ!」
「介護福祉士と……ケアマネージャー」
「大学で思いっ切り勉強頑張ったんだね。凄いね!」
「子供やお年寄りの現場で働くのが好きだからさ。一番好きなのは障がい者なんだ。彼らは純真だからね。現場に戻りたいと思う時が、最近良くあってさ」
「立派だと思うよ、他人の事なんか関係ない、自分さえ良ければという世知辛いご時勢なのに、そうやって他人を思える仕事に就こうとして学生時代に勉強していたなんて」
そんな明子の会話を思い出していた。
英雄は四十歳になるという事に全く、馴染めないでいた。高校生の頃、四十歳という年齢への響きとイメージは「疲れた大人たち」だった。しかし英雄が四十歳になり、今思う事は、生きるだけで、必死で大変な時という印象だった。
中途入社でゼネラルマネージャーまで生え抜きの社員を牛蒡抜きして誰もが羨む昇進をし、周りからは良くやっていると思われているかもしれないが、その反面、常に結果を求められ、上司から期待され、上からも下からも常に見られているという日常の日々は、かなり精神面での疲弊がある。しかし、そういった激務の中でも一所懸命に、そして誠実に生きてきたつもりだった。
そんな時に開催された高校の同窓会は、乾き切っていた英雄の心に水浸しになるほどの打ち水をしてくれた。あの高校時代は思いっ切り背伸びをしたり、突っ張ったりして生きていたけど、何をやっても心から笑っていたことだけは確かだった。そんな自身を思い出し、「思いっ切り青かったな」と苦笑した。明子は、知的で優しい笑顔で接してくれた。高校時代の彼女や英雄自身の事を思い出して妄想に耽っていた。
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