第17話 演説初段階
「まじか、カリベルト本当にするの?」
「やると言ったらやるわ」
「わぁー、かっこいい」
本日最後の授業を突然やってきたカリベルトによって放棄され、校門付近に連れられて来た。目的は演説をするため。カリベルト曰く初日で演説した人物は今までにいない。だから相手に予想外の行動をして焦らせようと画策しているようだ。
俺は従うことしかできない。
「あなたってすごいのね」
...え、なに?怖いわ。感心しているような声を聞いて裏があると勘ぐってしまう。
「はぁ」
「本心よ、功績が本当ってわかって...ほんの少し頼もしい存在と...ね」
少し赤みがかった顔を言われ、金槌で頭を叩かれた衝撃を受ける。こいつは本当にカリベルトなのか疑ってしまう。
「嘘...」
「本当よ、私をそこまで信用できない?」
…学園内で一番信用しているのはカリベルトである。けど俺が見て来たカリベルト・ソファレはそうじゃない。
「...一応」
「一応って、まぁいいわ、もうじき授業が終わるから準備をするわ」
「準備をするといってもカリベルトが魔法を使うだけじゃないか」
「そうね」
カリベルトは邪魔にならない位置に立ち、少しそこの部分だけ地面を上げる。これで他の人たちよりも高い位置にいることになり目立つようになる。
「あとは拡散魔法を使うだけ」
今の魔法を使えるようになれば空中戦仕掛けられるのでは?加えて飛び道具の対策になるのではないか?戦術の幅が広がるんでは?そう考えた。
「今の魔法って土魔法か?」
「一種といったところかしら、正確にいえば土操作技術魔法と呼ばれているわ」
「習得は難しいか?」
魔法の種類とか今はわからないし、たいして重要ではない。習得できることが重要である。
「自由自在に動かそうとしたら難しいけど、今みたいに少し高くしたり、壁にするぐらいなら難しくはないわ、習得したいなら悔しいけど会長に頼んだらいいわ」
「わかった」
悔しいと言っているあたりライバルなんだろうな。
さて、俺がすべきことはないのでどうしようか。せいぜい江戸の監視といったところか?
「んで、いつまで演説する気だ?」
本当はいつ終わるのかと聞くつもりだったがやる気がないように思われるのはごめんだ。やる気はないのは本当だけど。
「江戸カルエを見た瞬間に切り上げるわ」
事前に決めていたのかスルッと言い切る。ウエメンが伝えたのか?...そうだった場合は...どうでもいいや。
「なんでだ?」
知らないフリをしなくてはいけない。一年前、一瞬江戸カルエがいじめたという
「彼女に失礼だと思うが、彼女は会長並みではないのよ、いわば凡人なのよ。はっきり言って去年対抗馬だった人の方が優秀、なぜ圧勝できたのか不思議になるくらい......とにかく江戸カルエという人物が明白にわからない今、警戒することしかできないの、だからこそ敵視しているように立ち回って本性を知ることを狙うわ」
「なるほど」
カリベルトのことだから去年の選挙を調べていたわけで、疑問に思ったのだろう。そう考えるといじめが上手く隠蔽されているのか。
放課後の鐘が鳴り、カリベルトは演説を始める。
「この度、副生徒会長選に立候補した一年A組カリベルト・ソファレです。今回の演説で名前だけでも覚えて帰ってください。さっそくですが私には目標があります、それはこの上因学園生がグランテノール武闘会で優勝することです」
...ビックマウスにならなきゃいいけど。今から校門を出ようとした学生たちはその言葉にザワザワと少しうるさくなる。グランテノール武闘会は学生なら学園の推薦で出場できる国の行事の一つだ。グランテノール中から選りすぐりの選手が出場する名誉ある大会であり、学生相手でも真剣に挑んでくるため、今まで学生が優勝したことはない。去年、会長が出場したが二回戦敗北という結果に終わっている。俺は去年首都に来ていないので結果しか知らないこともあり、どれほどの強者がいるのか明確にわかっているわけではない。
カリベルトが演説し、注目を集めている横で立っている俺は早く江戸カルエが来てくれないか願っていた。
が、江戸カルエは校舎の屋上から様子を伺っており、カリベルトの演説は止まらない。その結果、カリベルトは今日話す話題をすべて出し切ったようで困っていた。カリベルトも俺と同じく江戸カルエが来るだろうと予想していたので困惑と落胆していた。
そうしてカリベルトの演説は無事最後までやり切ったのだった。
転生したから、常識にあらがってやる!男子?武器が鉄扇?なめるんじゃねぇ 隴前 @rousama
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