第14話 生徒総会が始まるぞ

「行くよ」


「おう」


開校された日の昼食を早めにとった後、体育館に向かっている途中でカリベルトと会う。本日初めて会うが挨拶せず、一瞥しただけで一緒に向かいだす。

生徒総会が昼食後に始まるため、立候補者は先に会場に着いておかないといけない。


「確認だけど、この後の動きはわかっているわね?」


「ある程度は」


発表されるまでは舞台袖に待機して、発表された後はすでに当選確定な生徒会長から意気込みを語っていき、質問を軽く受けることになるが推薦人には質問は来ないことを事前に教師から聞いている。


「そう、下手な真似をしないでね」


「そうだな」


そうしていると体育館に着き、中に入る。

入学式以来に入ったが、広すぎると思ってしまう。そんなことを思いつつ、舞台袖に向かう。


「一番乗りか」


「そうね」


壇上の照明の光があるが遮光カーテンによって薄暗くなっている。

生徒会長しかいないから、実質一番乗りだな。カリベルトも同意しているから間違いない。


「ちょっと二人?私の事見えてる?」


横から声が聞こえてくるが無視してカリベルトと会話する。


「そうだ、カリベルト」


「何?」


「おーい?二人?」


「聞き忘れていたんだけど、当選してからしたいことは何?」


「...簡単にいえば魔法は量と最低限質が在ればいいとわかっているから、それを普及し、向上させる活動っといったところかしら」


「質派の私を怒らせたね?カリベルト・ソファレ」


一人でキレてる人は放っておくことに限る。


「そうっすか、頑張れ」


量も大事だけど、結局は自分自身に合った魔法との付き合い方をしたら良い気がする。でもガチ勢が居て、対立することで新しい境地に辿り着くから無駄ではないと思う。


「曖昧な返事ね、もしかして質派かしら?」


「...男として魔法に関わっているからわかるが、覚えれる魔法の種類と数は女性ほどじゃない。どっちかと言われれば質派ではあるが、個人に合った方で良くない?とは思ってる」


「さすが鎌江コアだ、きちんと自分なりの考え方をもててる。それに対してカリベルトというやつは古い考えに支配されている、可哀そうな子だな」


「なるほどね、男として...違う視点からか。それとしてハプスベル・スーザン、うるさい!」


カリベルトは横で邪魔をしてくる生徒会長に対して怒る。

まぁ、悪いのは無視をし始めた俺らではあるが...面白いね。


「二人が無視するから悪いからね?!あと挨拶大事」


「ご機嫌麗しゅう、スーザン会長」


「ども」


挨拶だけでも生まれの差が出るもんだな。少し騒がしくしていると別の足音が聞こえてくる。こっちに向かっている人で一人になりそうな人はあの人か。


「ご機嫌なわけがないわ、あと鎌江コアに関しては適当すぎる!」


「何を言っているの?スーザン」


舞台袖にやってきたのは現会計にしてハプスベル・スーザンの推薦人アルベド・ハグルア。君主を選定する昇明院で最も発言力があるアルベド公爵のご令嬢である。


「「ごきげんよう」」


「ごきげんよう、二人とも揃っているなんて仲がよいわね」


「当たり前です」


「ふふ…さっきからうるさいわよ、スーザン」


「ち、違う!この二人が私のことを無視するからだもん」


よくよく考えれば君主の娘に対して、仕掛けにいったのはまずいことなのでは?と少しの危険を感じていた。


「そう…まぁ、どうでもいいわ、それよりも鎌江コア」


あぁ、どうでもいいんだ。生徒会長がしょぼんとしているのを横目に、アルベド先輩の方に意識をやる。


「なんでしょうか?アルベド先輩」


「私はあなたのことを認めない」


「ふぁ?」


突然なことに驚く。無慈悲な瞳をしたアルベド先輩がこちらをしっかりと捉える。カリベルトと生徒会長は何かを納得していた。


「白蛇江の件よ、ありえないわ、女が出来なくて男が出来るなんておかしい」


「そうですか」


白蛇江の件のことは記憶喪失だったことを除けば、どうでもいい。男が魔力量を増やしていることに対して否定的なコメントをしていないし、まともな人だな。この世界の善人であることが確定した。


「え?」


アルベド先輩は意外そうな声を上げる。目もきょとんとしている。残りの二人も同様だった。俺はそんなにおかしい対応したか?


「案外素っ気ないな、鎌江コア」


自分の中ではすでに終わったことにしているけど、周りはそうではないんだ。男性で唯一、魔力量を増やし、女性でも倒せなかった世界七大魔獣の一匹を討伐した功績が一部では英雄視され、否定され続けている。

英雄なんて誰がなるか。


「もう二年前ですよ、それと、すでに白蛇江よりも強い敵に出くわしているんです、白蛇江なんて過去のことなんです」


どうでもいいとぶっきらぼうに答える。面白みのない答えになるのは俺の気持ちを考えればそうなってしまう。


「......そ、そう...白蛇江よりも強いと感じたのは誰かしら?」


アルベド先輩はこいつおかしいみたいな視線を向け、たいぶ引きながら聞いてくる。

すでに他の立候補者とその推薦人全員が集まっている状態ので俺とアルベド先輩との会話は聞かれていた。


「ハグルア、もう少しで始まる。鎌江コアの返答を聞き次第、檀上に」


どうやら会長も聞きたがっているらしい。他の人たちも聞き耳している。


「面識がある中なら、俺の師匠の生霊せいれい蜘蛛ぐもえん、セレーノ教幹部グリージョ・オノーレとベッロ・オッディオ」


「「「「「「「「「はっぁああ?!」」」」」」」」」


一同はまるで知らぬうちに地雷を踏んだかのような反応をする。


「え?え?後者二人は知っていたけど...前者について全く聞いていない」


カリベルトは驚きすぎて咄嗟に言ってしまう。それほどの大物だ。

生霊蜘蛛援は世界七大魔獣の一匹というか一柱である、アラクネ族が祀っている存在であることが知られている。


「現生徒会メンバーは、檀上に上がって総会するぞ」


生徒会長が壊れたのか瞳の中をグルグルと渦が巻いていた。なんなら生徒会長は他のメンバーを押しながら、舞台袖から逃げていく。

これが現実逃避か...。俺はなんとも言い難い気持ちになっていた。


そんな状態でもしっかりと生徒総会の進行役を果たしたのはさすがである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る