第3話 鎌江コアという男子は初めて
「勝算ある?これ」
時間がないことを抜いても当選は難しいと判断する。
「...やるしかないじゃない」
「実際はそうなんだけさー」
副生徒会長選挙に出馬する際、一番の壁になるのが前年副生徒会長をしている江戸カルエである。前年の選挙結果を見てみると江戸カルエの圧勝であり、票の九割を占めていた。なので今年は江戸カルエしか出馬しないと思っていた生徒も多いだろう。
中庭に設置されたテラス席に座り、お茶を片手に話し合う。
「生徒総会まであと数日あるから、それまでに方針を決めたい」
「いえ、決まっているわ」
さすがに情報が足りなさすぎるだろ。キッパリと言うんじゃない。あと決まっているの!?俺何も知らないんだけど?まぁ、いいか。推薦人は立候補者をほんの少しサポートする役だという印象あるし、必要な時になれば説明をくれるだろう。
「早計な判断になるだろ、後々後悔して知らねぇぞ」
「織り込み済みよ、それと方針上、あなたの力が必須」
「推薦人だから当たりm...男だからか?」
推薦人だから協力するのは...強制とはいえしないといけない。そんなわかりきっていることを言うようなやつではない。俺にしかないもの、それは性別。加えて不運なことに一個上、つまり江戸カルエの代には男子の生徒はいない。
良くも悪くも注目されるわけか。あれか、著名人が参議院選挙にでるのと似ている感じか?
カリベルトは小さく頷いた。
「あなたは男子生徒で初めての生徒会入りを果たす、このことの大きさはわかっている...わね?」
カリベルトは微笑みながら首を傾けてくる。
俺にとってメリットしかない。元をいえば推薦人となって選挙に出るだけでメリットが発生する。男が挑戦する、このことは重大な意味をもつ。
「わかった、んで演説の時どうすんだ?」
「確かに差があるから、質問を求めてみるわ」
いわゆる質問返しみたいなことか。いかに経験の差を埋めることが大事に...違うな。普通な演説では負けるから、違う方向性を指しただけか。
「承知した、んじゃ、帰っていいか?」
俺はカリベルトにお茶の片付けをしれっと押し付けることにした。一方的に連れてきたんだ、これぐらいしてもらわないと文句が出る。
「いいわよ」
「それでは、お先に失礼」
「さようなら」
俺は立ち上がり、学園の門に向かって歩いていく。...思ったんだが質問返しは俺もしなくてはいけないのか?まぁ、なんとかなるか、質問ぐらい。
この時、俺はきちんとカリベルトに聞かなかったことを後悔するのだった。
△▽△
私は夕日によってオレンジ色に照らされる彼の後ろ姿が確認できたため、立ち上がる。
彼と交流があって良かった。彼を推薦人にできてよかった。でないと私は負けが確定しただろうから。そう片付けをしながら思っていた。
鎌江コア、男爵を得た鎌江家の子息にして、元貴族や君主にすら注目されている男子。理由は世界七大魔獣の一匹である
もしかすると彼は世界の
カリベルトは強い思いを胸に秘めて校舎の方に戻っていった。
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