第2話 数少ない友人

昼食後、また放課後会うと約束してカリベルトと別れ、自教室へと戻る。


窓から見える鳥をのんびりと観察しながら授業を受けていると、いつの間にか本日最後の授業も終わっていた。


放課後となり、ここからカリベルトに会いに行くのだが一旦、生徒会選挙までの期間を考えよう。一週間しない内に生徒総会があり、その際に立候補者が発表される。そこから二週間経ち、生徒会選挙となる。つまり約三週間といったところ。時間がなさすぎると判断していいだろう。

おそらくこの学園独自の風習である立候補者発表から生徒会選挙までの二週間は立候補者はその期間の間に自由にひにちを選んで四回演説ができる。この前、調べたことによると例年通りならこの期間で選挙の八割は終わっているらしい。それほど大事な期間である。そのことを考えてみると戦略や準備を行う時間はほぼない。


中々の鬼畜ゲームだな。流石は上級国民か貴族しか入学できない学園だ。将来に向けてよい経験になること間違いないな。


俺はまだ暑くない季節なのに鉄扇を出して仰ぐ。すでに戦いは始まっていたのか。ならば勝つだけだ。なんて格好づけていると、


「コア?どうしたの?扇子なんかだして?」


隣の席から俺の名前を呼ぶ声が聞こえて反応する。その時一緒に鉄扇をしれっと懐に仕舞う。


「ああ、クセでな、少し考え事をしていただけさ」


同じ一年C組である香賀かがタイセイに返事をする。背が平均よりも小さく、前髪は目が隠れるか隠れないほどあり、男の娘ぽく見えてみることで一年C組の中で有名だ。ちなみに入学式からの仲である。つまり一ヶ月ほどの仲だ。


「考え事?まさか選挙にでもでるの?」


この世界は政治体制が変わってから二十年ほどしか経っておらず、民衆からの政治に対する注目度は高い。そのことも要因して、上因学園の生徒会選挙は将来の体験ができると生徒からの興味が持たれている。


「...推薦人として」


ぽつりと呟くように発する。どうせバレることなので先に明かしておいて問題はない。


「当選したら、生徒会役員になれるんじゃないの?」


香賀は少し意外そうな表情をしながらも声は楽しそうに明るい。


「そうだが…まぁ頑張ろうかなと」


「できることがあった言ってね、力になるから」


「んじゃ、俺らのところに投票してくれ」


一票でもいいから確保しておきたい。来年のことを考えると圧勝か接戦での勝敗を狙いにいくしかない。


「わかったよ、で誰の推薦人なの?」


「カリベルト・ソファレ」


俺が素っ気なく言うが香賀は明らか目を輝かせた。


「準伯爵家の人だよね!?」


香賀は急接近しながら、鼻息を少し立て、興味のある声を発してくる。

興奮しているのか。


「有名人なのか?」


「当たり前だよ、コアが最近会っている人ってカリベルト様だったんだ、これはもっと有名になるぞぉ」


コアは興奮しているせいで俺の聞きたいことが通じていない。というか俺もそんなに有名なの?せいぜい一学年ので唯一の男性という違和感を多くもたれていることで有名なのだろうと思っていたのだが、少し違うかもしれないな。


「なんでカリベルトが有名なのはなんでだ?」


「それはね、カリベルト様は学年一の魔力量を誇り、扱える魔法の種類は学年二位であって、さらに総合一位をとったからでそのこともあってこの学年で一二を争う強さをしていることで有名なんです、むしろコアがそんなことを知らなかった方が不思議だよ、どうやって近付いたの?」


「近付いたんじゃない、面倒ごとがあって目をつけられただけだ」


この世界では生まれた時から女性と男性の魔力量に圧倒的な差がある。さらに魔力量が大きければ身体能力が大きく強化されるため、男性よりも女性の方が強い。このため世界は女性中心に回っているのだ。ゆえにこの世界では『一生男性は女性に対して武力において勝つことはない』ということが当たり前として定着している。

......これはあくまでもこの世界の常識であって真実ではない。


後ろから嫌な気配するんだが?気のせいだよな?


「香賀、もしかしてしなくても、俺の後ろにカリベルトいる?」


「うん「はい、もちろん」


香賀の少し気まずそうな返事に声を被せてくる背後の人物カリベルト

背後の人物に俺は向き合う。正解かぁ...。


「約束は忘れていないんだが、なんで来た?」


「時間がないです」


その通り、対抗馬が強力であることがわかっているのだから、油を売っている暇はない。


「その様子じゃ、対抗馬は江戸えどカルエで確定だな」


「そうよ、香賀さんでしたよね、私はこいつと計画をたてないといけないから失礼するわ、御機嫌よう」


「ご、御機嫌よう!」


香賀は焦りと憧れを抱きながら返事したみたいだ。一方俺はカリベルトに引きずられて教室を出ていく。香賀が「カリベルト様、少し不機嫌だった」という幻聴だとしか考えれないことが聞こえていたが無視する。


「対抗馬は一人か?」


「ええ」


抵抗していない俺をどこかに引きずっているカリベルトから肯定の頷きを得たので到着するまで考えることにした。



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