転生したから、常識にあらがってやる!

隴前

学園生徒会選挙編

第1話  没落した貴族が再興を目指しているらしい、で俺はどう反応したらいいんだ?

「ということで、あなたに私の生徒会選挙における推薦人になってもらいます」


「は?」


俺はおもわず箸で掴んでいた角煮を落としそうになる。

こいつは一体なんてことを言ってくるんだ。


俺は上因じょういん学園一年C組鎌江コア。んで目の前にいるのは一年A組カリベルト・ソファレ。艶やかなアメジスト色の髪、一見美しいそうだがよく見るとかわいらしい顔立ちをしている。というか、この世界は美形が多すぎるのでそんなモテてないはずだ。

んでA組とかC組ってのは力の強さで決まるみたいだ。そんないらない情報はどうでもよくて。


「推薦人だって?お前が当選したら強制的に俺も生徒会入りしないといけないじゃないか、誰がするか」


「そうですか、しかし私はあなたがいいの、であるあなたに」


真剣な眼を俺の方に向けてきたってなびかない。こういう面倒ごとは関わらないことが一番良い。


「俺はこの世界が男に厳しい世界だ、なんて思っていねぇ」


「ふーん、私が理由もなくあなたをぶっても問題にならない世界でも?」


この世界はとある常識が根底にある。だからこそ俺は転生したかもしれない。


「女性中心の歴史に、今更変えようとしたって無理だな」


さも当然だと諦観したかのように話す。


「確かに、ではこれを」


カリベルトは俺に見えるように一枚の紙を見せてくる。


「生徒会選挙立候補者用申請書か。推薦欄間違えて、俺の名前を書いているように見えるんだが?」


「間違えていませんよ?」


...なるほどね~。このまま提出しても問題はないんだよな。はぁ、どうしようもないな。関わらないことが一番良いだけであって、別に嫌とは一言も言ってないし。


「はぁ、そうか、んじゃあ、なぜ立候補するんだ?」


わざとらしく息を吐き、渋々納得しておく。強制的に出されても問題にならない、だって男は弱いのだから。


「申請書に書いてあるじゃないですか」


志望理由が書いてある枠に指をさしてくるが見る気にはなれない。こいつはそんなに純粋じゃない。


「どうせ、偽だろ?俺が聞きたいことは本当の理由だ、これから動くにあたって大事になってくるかもしれないだろ」


そう言うとカリベルトは信じられないものをみる目をしていた。そんなにも俺は動かない人間だと思われているのか?


「てっきり、断れるかと」


......俺はそんなやつじゃないはずなのに。


「なら断ろうか?」


「い、いや、そ、それは、ダメですぅ...」


カリベルトは明らかに慌てながら対応する。こういうところがかわいく見えてしまう。


「話戻すけど本心は?」


「将来のため、私は家の再興を目指します」


「無理だろ」


カリベルトが意を決して言い放つ。が俺は思わず本音が口から漏れ出る。

なぜならグランテノールという国は元々女王による絶対王政が続いていた。カリベルト家はその当時の貴族の一家で準伯爵の中では一番権力が高かった。しかしたった一人の少女によって君主制に代わる革命が起きた。革命は成功し、昇明院というところが君主を選定、抑制している。この革命により貴族の爵位は表向きには形骸化していったのです。そうして色々ありカリベルト家は没落しました。

この革命は十一月に起こったので十一月革命といわれている。初めて聞いた時は、社会主義国家の始まりになったのかと焦った。

こういった歴史があるため無理なのは明白で、没落した貴族が再興しようとすることは、今の体制において不満を持っているのではないかと疑われてしまう。たとえ今後再興しても一度没落した貴族というフィルターで見られてしまう。


「しかしあなたの母君は女爵という爵位を得た」


なるほど、さらなる爵位を得れば再興の一手になると思ったのか。間違えではない。貴族の爵位は形骸化したとなっているが伯爵以上になると今でも一定の地位を得ている。カリベルトはそれを狙っているのだろう。ちなみに俺は母が女爵になったせいでこの学園に入れられているので、結構不満はある。


「そうは言っても、なぜ得たのか知っているだろう?」


「...もちろん」


母が爵位を得た理由は、世界七大魔獣の一匹を倒したからである。けして母が倒したということではない。事実はどうであれ、世界七大魔獣の一匹を倒せば爵位が得られるのだ。

俺はカリベルトが現実を見ている間に手を動かし、角煮を食べていく。うま!


「それでも私は諦めない」


数分が経ち、結論が出たみたいだ。きっとカリベルトにも事情があるのだろう。

俺は勝手に解釈して納得する。


「承知した」



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