10話 逃れられると思うな
「クラーフ!」
ハゲが現れたアタシに向かって怒号を飛ばす。
アタシはハゲの顔近くにしゅるりと移動し「コウナリャ、コッチノカチダナ」と、ニヤリとして言った。
子供に反乱を持ちかけたら、確実に大人に計画をチクる裏切り者は出てくる。
裏切りなんて、アタシ達からすれば危険な事だったけれど。狙いでもあった。
だから一回目の会合で話を打ち切った後に、アタシ等は裏切らないと分かった子供を集めて話をしたのだ。
そうして本当の決起日を告げ、作戦を打ち明けた。明日、裏切り者がチクった事を確認して、ハゲ共が計画を立てている隙に急撃する、と。
ハゲ共はアタシ等の計画を知れば、前もって潰しにかかる算段に入ると分かっていた。
だからこそ、この絶好のタイミングで潰しにかかりたかった。
もうこれ以上、クソ共の思い通りにはさせたくなかったから。
「イイキミダゼ」
アタシはニタリと口を歪め、舞台に捕らえた幹部連中を見渡した。
皆、この悪夢に顔を歪め、恐怖にじわじわと脅かされている。
ただ一人を除いては……。
「クラーフ、貴様、我々がどれほど貴様に温情をかけたと思っているのだ! 貴様の蛮行に、どれほど目を瞑ってきたと思っているのだ!」
ふざけるのも大概にしろ! と、ハゲは猛々しく唾棄する。
こんな状況になっても、コイツだけは思っているのだ。
まだアタシが、自分の制御圏内にあると。まだアタシが、己に従順な破壊人形であると。
「フザケテンノハ、ドッチダ」
物々しい威圧を込めながら、冷淡に告げた。
広がった暗黒の世界がアタシの怒りに刺激され、ガタガタッと震撼し、キャアアッと甲高い悲鳴をあげて怯え始める。
「テメェラダケガ、エイガヲキワメ、トミトメイセイヲテニイレルタメニ、シテキタコトニクラベタラ……コンナノ、ナンデモネェダロ」
そう。コイツ等は、自分達が栄える為だけに他人を淘汰し続けた。
尊い命を次々と踏みにじっていくばかりか、それぞれが抱く大切な想いや志さえもバキバキに折って壊し続けた。
コイツ等は、自分以外の者達の「全て」を奪い続けたのだ!
募ってきた怒りが、憎しみが、苦しみが、悲しみが、アタシの力を強大な力に押し上げていく。
「イツマデモ、オトナノオモイドオリニナルトオモッテンジャネェゾォッ!」
アタシの憤怒に呼応し、舞台から数々の凶器がゆらりゆらりと牙を向けて飛び出した。
「テメェラダケハ、ゼッテェ、アタシノテダケデブチノメスッ!」
そう、コイツ等はアタシの手だけで倒す。
そうしなくちゃいけない、絶対に。
……何故なら、アタシはコイツ等を崩壊させる為だけに生きる
「コレハ、オマエラガツクリダシタアクムダ! ノガレラレルトオモウナアッ! ?」
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