7話 夢の中での作戦会議
会話が筒抜け、行動もバレバレ。
それは反乱を企む僕達にとっては、かなりの痛手だった。
だから僕達の作戦会議は、もっぱら夢の中。誰の侵入も許さない唯一の場所であり、行動の不審さもまるで目立たないからだ。
「正直、アタシ等二人だけじゃ厳しいかもしれねぇ」
幾らこっちに強さがあっても、人数差があるとなかなかなぁ。と、クラーフは苦々しい面持ちで言った。
「しかも、抑えなきゃいけねぇ所が二つある。一つは、ハゲ共が居るコントロールルーム。ここを抑えねぇと、メア機の強制シャットダウンやら何やらがあって面倒くせぇからな。そしてもう一つは、庇護地。じゃねぇと、悲劇の緞帳が下りねぇ。だから早々に抑え、救出を行いてぇが……ここはナイトメア予備軍が有象無象居るから援軍が来やすいし、不測の事態が起きやすい」
僕はクラーフが紡いだ状況の整理に、「成程」と唸りながら頷く。
「色々と加味すると、この二つは同時に抑える。つまり二点同時襲撃をかけるのが、最善だろう……が。ここで戦力を分けると、アタシ等の分がかなり悪くなる訳だ」
圧倒的な数を一人で捌くには限界があるし、どちらがヘマしたらカバー出来ねぇからな。と、クラーフは仏頂面で腕を堅く組んだ。
僕はうーんと考え込んでから、小さく息を吐き出す。
「……やっぱり僕達だけじゃ難しいね」
「……まぁ、悔しいが、そうだな」
クラーフは苦々しく舌を打った。
「こっちは力だけ、だが向こうには力と数があるからな」
僕はクラーフの言葉に、小さく息を吐き出して肩を落とす。
簡単に勝てる相手だとは思っていなかったけれど。改めて色々と考えていくと、僕達二人が倒そうとしている相手が強大過ぎると痛感する。
僕は、「うーん」と言う呻きと共にため息を吐き出した……が、突然「そうだ!」とピコンッと頭の中の豆電球が光った。
生まれたアイディアを伝えようと、クラーフに「ねぇ!」と興奮気味に顔を向ける。
するとクラーフは、死ぬほど冷めた目で僕を射抜いていた。
思わぬ冷たさに、僕は「え、何?」とキュッと眉根を寄せる。
「お前なぁ、豆電球が光るって古すぎだよ。何千年前の技法だと思ってんだよ」
「僕の心を読み取らないでよっ!」
幾ら夢の中だからって! と、込み上げる羞恥をぶつけた。
勿論、その流れにいつまでも佇む僕じゃない。恥ずかしすぎるから。
僕は、すぐに「そっちじゃなくてさ!」と、持って行きたかった流れに話を強引に引っ張った。
「僕達二人だけじゃ厳しいなら、こっちも数を増やせば良いんだよ! 他の子達にも、協力を要請するんだ!」
「……他の子、ねぇ」
クラーフは顎に手を当て、勿体ぶった言い方をする。
「え、駄目かな?」
「駄目、ではねぇが……そう上手く他を味方に引き込めると思うか? アタシはハジャだからこそ、嘘偽りねぇ真実を話した。けど、他の子等にも馬鹿正直に話したらどうなると思う? あんまりにもショックすぎて、反乱どころじゃねぇだろ」
淡々とした指摘に、僕はハッとした。
「アタシと言う物証があるから、信じられねぇっつー反論は潰せるだろうが。戦闘に支障をきたす位の衝撃は喰らうだろ? じゃあ、曖昧な話にして引き込むかってなると、嘘だなんだ言う奴は多くなるだろうし、裏切りが続出する事間違いなしだろうな。如何せん、ここのガキ共はデューアの大人達は絶対っつー洗脳にかかってるから」
淡々と重ねられる指摘に、「確かに」がドンドンッと重なる。
パッと思いついただけの案が、かなり安直だった事も思い知らされて、僕は完璧にベシャリと潰されてしまった。
「そ、そうだよね」
簡単じゃないよね、もっと考えてみるよ。と、僕は消えいりそうな声で答えた。すると
「まぁ、でもやってみる価値はあるか」
「……え?」
僕は弱々しく顔をあげる。
上がった視線の先に居るクラーフは、どこかニタリとした笑みを浮かべていた。
「く、クラーフ?」
「ハジャが言い出しっぺなんだ。協力しろよ?」
なんだか、暗雲が広がり始めた気がするんだけれど……気のせい、だよね?
僕はゴクリと唾を飲み込み、彼女の笑顔を怖々と見つめるしかなかった。
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