7話 闇へと葬られるもの

 エヴァンスとリーリエが連れ去られてから、僕達はゾーガ総帥等幹部に呼び出された。

 事情聴取の後、僕達は今後二度と同じ事が起こらない様に取り決める。

 それを締結させる時には、バン・ナイトが終了間近に差し迫っていた。ようやく解放され、カナエと合流するも僕達は何も言えずにいた。


 カナエはそんな僕達の様子から重要な事が起きたと察し、ただ無言で側に居てくれた。

 悄然とする僕の心が彼女の優しさに包まれて、殊更涙が溢れそうになった。

 そんな心のまま、僕達のバン・ナイトは終了したのだった。


 

 それから二日後、エヴァンスの「庇護地」送りが決定した。

 戦えないと大人から判断されても、庇護地に送られるには大体一ヶ月の猶予がある。その一ヶ月でもめざましいものがなければ、仕方なく送ると言う形が常だ。


 それなのに、エヴァンスは事件からすぐに庇護地に送られる事が決定したのだから、これは異例中の異例だった。幾ら理由が「彼は急病を患い、とても戦える身体ではなくなった」とあっても。


「ああなったら、もう二度と戻らねぇからな。庇護地送りは遅かれ早かれある事さ。傲慢に思い上がってなけりゃ、今頃も戦士として生きられていただろうになぁ。ま、それを放棄したのはアイツ自身だ。だからハジャが気にする事は何もねぇよ」

 クラーフなりの慰めだったのだろう。彼女はいつもより優しい声音と口調で告げてきた。


 一方、エヴァンスの共犯だったリーリエはどうなったかと言うと。忘却措置を取られ、彼の存在とメアの存在を完全に忘れる事になった。


 メアと言う機密に触れた事も原因ではあるけれど。狂乱しているエヴァンスの姿が枷と成り、今後の戦闘に影響があるのではないかと言う懸念あっての事だった。


 彼女にとっては、もっとも残酷な措置であったと思う。大好きな人を忘れるばかりか、自分が抱いていた恋心までもが綺麗に消えてしまうのだから。

 勿論、彼女の記憶の蓋がバコンッと開かない様に、周りも「エヴァンス」と言う名前を口にする事を禁じられた。


 こうしてエヴァンスとメアの暴走は闇に葬られた。

 それでも時間は淡々と何事もなかった様に進んで行く。そこで立ち止まるなんて事は出来ないし、させてもらえないのだ。


 だからこそ僕は、今も黒い制服を着て、メアの前で訓練をしている。

 現れる悪夢を晴らす為に。

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