6.5話 汚い大人共
アタシはシャフトを駆け上がり、出撃口へと向かったメア機一号を見送ってから、憤然とやってくる厳めしい大人達と対峙した。
揃いも揃ってデューアの高官ばかりだし、怒りと困惑に染まってる。まぁ、当然か。
「よぉ、愛しのパパ・ママ共」
アタシはニヤリと口元を綻ばせ、軽やかに挨拶をする。
「よくもやってくれたもんだな、クラーフ……それもこんなに堂々と」
中央に居るグラサンハゲ親父ことゾーガ総帥が物々しく、自分の激怒をアタシにぶつけてきた。
アタシは肩を大仰に竦めて「別に責められるこっちゃねぇだろ?」と、あっけらかんと答える。
「戦えないと思い悩んで、嘆いていた可哀想な子供を助けたんだから」
飄々と打ち返した言葉に、大人達の顔が思い思いに歪んだ。
怒り、悲しみ、困惑、焦燥……本当、大人って奴は自分達の事ばっか考えてやがるな。
アタシは大人の面々にハァと小さく息を吐き出してから、「まぁ、邪魔はすんなよな」と告げた。
「邪魔だと?」
グラサンハゲ親父が、直ぐさま噛みついてくる。
「それをしているのは、貴様の方だろう。クラーフ、我々の我慢にも限界と言うものがあるのだぞ」
「あっそう。だったら、アタシを潰しゃあ良いさ」
潰せるもんならな。と、アタシはグラサンハゲ親父の睨みを迎合した。
そんな事は出来ない。大人達は全員、ソレを分かっている。勿論、アタシも分かっている。
アタシは「もう良いだろ」と、ヘッドホンの中央部分を押し、カシャッと小さな箱を飛び出させた。
「今にも高く羽ばたきそうな子供が居るんだぞ。アンタ等大人がすべきなのは、その羽を掴み続ける事じゃねぇ。後ろからそっと見守ってやる、それが本当にすべき事ってもんだろ」
言うや否や、手に乗せた箱をバシッと床に投げ捨てる。
するとその箱は地面にぶつかる前にパッと開き、地面すれすれで浮かぶ小さなボードに変身した。
アタシはソレにパッと飛び乗り、メア機一号の後を素早く追っていく。「クラーフ!」「おい、どうすんだ!」「すぐにメア機の動力を止めねば!」と、大人達が生み出す喧噪を無視して。
汚い大人共め……。
アタシはスッスッと足腰で上手くバランスを取りながら、空中を猛スピードで走って行く。
「あんな奴等に邪魔はさせねぇ……あの子が、あの機体に乗る。これはそう言う運命なんだ」
吐き出した独り言に、アタシはキュッと唇を結んだ。
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