衝突
「あの野郎!ぶっ殺す!!」
ハンドルを握る直也が吼えた。
力なく走るハイエースのフロントガラスの
向こう、 倒れているイケメンの傍らに
しゃがみ込んでいた野郎がこちらに気付いた。
なんでイケメンが倒れてるのか。
それは気にしなかった。 知ったこっちゃねぇ。
鉄男はただ、前方をジッと見据えた。
筧はハイエースから愛した者に目を戻した。
急いでキヨを車にーだが躊躇する。
ハイエースが遅いスピードとはいえ、 こちらに迫ってきている。 、、、、シボレーに乗せる時間はなかった、、、、。
「・・・・くっ!くそがあぁぁっ!!」
筧は倒れた大沢の手から 奪い取ったレンガと
バッグを掴み、 シボレーに乗り込むとギアを
入れた。
どいつもこいつもふざけやがって!!!!!
筧は怒りの形相でシボレーをバックさせた。
「あの野郎突っ込んでくるぞ!よけろ!!」
鉄男が吼えた。
「何言ってんだ鉄ニイ!受けて立とうぜ!!
俺らに銃なんかぶっ放しやがってよぉ!!!」
直也も前を見据えたまま吼えた。
「馬鹿!こっちはスピード乗ってねえんだぞ!!」
「あ!ごめん!!」
とてつもないスピードでシボレーの尻が二人の眼前に迫った。
慌てた直也がブレーキを踏むのを忘れ、 咄嗟にハンドルを切る。
と同時に、シボレーが急ブレーキの派手な音を上げた。
シボレーのテールとハイエースのフロント
バンパーが衝突し、大きな音を立てた。
弾かれた様にハイエースがスピンし、
車体の横腹を電柱に激突させる。
シボレーはタイヤを軋ませながら そのまま
直進し、やがて道の中央で 動きを止めた。
、、、、静寂。
ハンドルに突っ伏した直也が顔を上げた。
額がパックリ割れ、血が出ている。
「て、鉄ニイ・・・・大丈夫か?」
鉄男はひび割れた助手席の窓に 押し付けられた自分の頭をヘッドレストに移すと
「・・・・へ、平気だ」
後部座席ー自分の真後ろーを見た。
電柱がめり込んだスライドドアが内側に完全に拉(ひしゃ)げている。
自分たちが乗っている前部より
後部のダメージが酷かった。
・・・・自分でもわからない。
鉄男は 少し安心すると
「あの野郎は?」
虚ろな目でシボレーを探した。
フロントガラスの向こう、ハイエースは見るも無残な状態だった。
筧は薄ら笑みを浮かべ、スタートボタンを
押したがエンジンが止まってしまった シボレーは反応しなかった。
軽い脳震盪も起こしている。 さすがに無傷って訳にはいかねぇか。何度も何度もスタートボタンを押した。
あいつらは所詮安っぽい犯罪者だ。
”学”なんてものは持ちあわせてないんだろう。
こっちがスピード上げて突っ込んでいったら
案の定応じてー直前でビビりやがったがー
きやがった。
スピードが速い方が勝つ訳じゃない。
こういった場合は”頑丈な方”が勝つんだ。
外国産の大型ピックアップのこの車と
中古車丸出しのハイエースとじゃ話になる
訳ない。
『相対速度』って習ってねえのか?バカが。
衝突の直前にブレーキを掛けたのもその方が
生存率が高まるからだ。シートベルトもブレーキを踏む前に しっかり掛けておいた。
「・・・・動け。動けよ!!」
だが、いつまでもエンジンは掛からなかった。 こいつが走ってくれりゃあよぉ!!!
「くそっ!」
筧は漸くシボレーを諦め、シートベルトを外すと バッグと共に運転席から降りた。
ハイエースを背に必死にその場を離れる。
痛みが限界にきた右足に目をやったその時ー 「!」
気配がした。 筧が顔を上げると視線の先、
数メートル向こうに 勇次が立っていた。
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