quick&rob

「いくぞ。3・2・・・・」

 目の前の若造はカウントダウンに息を呑みー 「・・・・1」

 キヨの身体をこちらに目掛けて力強く押した。

 それと同時にバッグを若造に向けて放るー と

いうよりアンダースローの様な態勢でとてつも

ないスピードで投げた!!

 バッグが地面を素早く転がる。 驚いた若造は、瞬く間に 自分の傍らを通過するバッグを目で

追った。


 駆け出した。随分久しぶりに。

 痛ぇ!だが、出来る限り走った。

これを”走る”、というのかは知らないが。


「キヨ!受け身を取れぇっ!!」

 押し出されたキヨとすれ違う。

 抱き抱えてる余裕はなかった。

 今、目指すモノは地面に置かれた

リボルバーだった。

 バッグに目を取られていた若造がこちらを

見た。

 次の瞬間、リボルバーの銃把グリップを

ラリアットの様に奴のこめかみに叩き込む。

「うぁっ!」

 若造は身体を切り揉ませ、地べたに

倒れ込んだ。


 転がるバッグの向こう、駆け出してきていた

二人組に向け 牽制でリボルバーの引き金を引く。

 二人組が地べたに伏せた。 転がるのを止めた

バッグを手に取るとすかさず踵を返し、キヨの

元へ駆けた。 痛ぇ!痛ぇ!!痛ぇ!!! だが、

あとほんの少しだ。ほんの少しで終わる。


 若造が地べたに倒れたまま、痛みに呻いて

いた。

 銃口を向ける。お前は死ね!!! だが、瞬時に躊躇した。

 ここで人一人殺しちまったら今までの事が

意味をなさない。


「てめええええええええぇっ!!!」

 背後で咆哮がした。 咄嗟に振り返る。

 デカブツだ。 アレはヤバい。もう一発放ち牽制した。 デカブツが身を屈める。


 その間に若造のズボンのポケットから

ガラケーを強引に奪い、キヨの元へ到達した。 「キヨ!!」

 シボレーの手前で横ざまに倒れていた。

 急いで抱き起す。 助手席に乗せると運転席に

回り込みドアを開ける。

 後部座席にバッグを放りエンジンを掛けた。

アクセルを踏み込む。


 走るシボレーの目の前、若造は まだ地べたに

転がっていた。 ハンドルを切る。

 若造をやり過ごすと、二人組がハイエースに

乗り込もうとしているのが見えた。

 窓を開け、片手でリボルバーを 構えると轟音を響かせた。


 ”バスン!!” ハイエースの右前輪に弾丸が命中した。 一気にその傍らを通過する。

 そのまま橋から脱出し一気にその場を離れた。


 やったぞ!やりきった!!

 筧は高揚を抑えきれず高笑いした。

ずっとずっと。

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