カウントダウン

「何やってんだ、あのガキ? あんな野郎の

写メなんかとってよぉ」

 鉄男が直也の額をピシャリと叩いた。

「あたッ!」

「バカ。黙って見てろ」

 鉄男は橋の中央をジッと見据えた。



「こんなモンでいいか?ちゃんと話したろ?

俺がお前にやらせた事をよ」

 画面の中の筧が言った。

 勇次は頷き、動画の『停止ボタン』を押すと

筧に向けていたガラケーを下ろす。

 そしてズボンのポケットにしまおうとするとー 筧が一歩踏み出した。

「!」

 勇次が咄嗟に後退る。

それを見て筧は小さく笑うだけで

それ以上動かなかった。

「・・・・」

勇次は筧を見据えたまま、ポケットにガラケーをしまった。

「じゃあ、交換だ」

 勇次が言うと、筧は首を横に振った。

「?」

「俺はお前の注文に応えた。 今度はお前が

俺の注文に応えろよ」

「え?」

「交換はそっからだ。でなきゃ金はー」

 橋下の京浜運河に目をやった筧の言葉に

勇次は思案しー

「なんだ?」

 慎重に聞いた。

 筧は勇次を舐める様に見回し、

「銃。持ってんだろ?キヨが持ってたヤツだ」 「!」

「それをこっちに寄越せ」

「・・・・そうしたら、あんたが銃を持ったら

対等じゃなくなるじゃないか」

 筧はくくくっと笑いー

「じゃあ、お前が持ってるのはいいってのか?

それこそ対等じゃねえだろ?」

 小馬鹿にする様に言った。

 勇次は自分のバカさ加減に唇を噛んだ。

「お前の足元に置け。 そんで互いの真ん中に来るように下がれ。 それなら対等だ」

「・・・・」

 勇次はズボンの後ろポケットから出した

リボルバーを自分の足元に置くと、

島川を伴い数歩下がった。

筧の動きに警戒しながら。

 筧は動かず、ただジッと勇次の動きを見据えている。

 やがて、リボルバーを挟んで勇次と筧は改めて対峙した。

「よし。じゃあ、いよいよ交換だ」

 筧の言葉に勇次が頷く。

「”3・2・1”で、俺はバッグをそっちに放る。 お前もそのタイミングでキヨの身体をこっちに

押せ。 それで交換は無事終了だ」

「・・・・俺はちゃんとこの人をあんたの

元に放る。 だからあんたもちゃんとー」

「わかってるよ」

 勇次の言葉を遮り、筧が言った。

「いくぞ。3・・・・」

 筧がカウントダウンを始めた。

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