第11話
『また来たのか。』
湊と出会ったのは、高校2年生。
私が17歳だった時。
当時の私は家のこと、学校のこと、進路のこと、友達のこと…。
とにかく色んなものに押しつぶされそうになっていて、弱い私はそれだけで息が詰まった。
そして逃げるように夜遅くここに来て、道行く人たちを眺めていた。
ここには色んな人がいる。
酔っ払って道端で寝てる人、寒い中で露出の激しい服を着て客引きをしている女の人、口論をしているおじさんたち。
そんな人たちを見ていると、私の人生まだ捨てたもんじゃないのかな、って多少なりとも思えた。
要は自分を慰めるためにここに来ていたのだ。
『また人間観察か?』
『うん…。』
『ここは冗談じゃなく、危険な場所なんだぞ。』
『そう…。』
湊の忠告にも私はどこか上の空で、気にかけてくれる変人だ、くらいには思っていたけれど、放っておいてほしい、というのも事実だった。
『…そんな危険な場所にいるのに、あなたは大丈夫なの。』
初めて私から質問したときだった。
湊は少し考えるようにして、それでも私の質問に答えてくれた。
『俺は、近くで店を持ってるからな。別に危険じゃねぇよ。』
『それ、答えになってないよ。』
『まぁ…その店をバックアップしてくれてるヤツらの方がもっと危険だってこと。』
どういうこと、と問いただしたくなったけどその時は怖くてやめた記憶がある。
湊と話している時、突然切り離される感覚がしたことがあったけれど、その時にもそれを感じたから。
『私がここにいると嫌?』
『どうして?』
『だって、近くにお店があるんでしょ…今日も話しかけてきたってことは少なからず私を気にかけてるんじゃないの…。』
少しの期待と、恐怖。
また切り離される感覚がしたら、多分もうこの人とは会えない。
でも、もしかしたら…。
その期待を込めて、吐き出した言葉だった。
だけど、湊が返してきた言葉は私が想像していたものとは少し違っていた。
『どうだろうな…自分でも分からねぇ。』
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