第10話

湊が言った通り、今日はお客さんの入りが良かった。



そのおかげで湊もキッチンを担当しつつカウンターにも立つことになって。



私は遠目から、リョウが持ってきてくれたジントニックを飲みながらぼーっと女性客と話す湊を眺めていた。



「心配?」



「いや…ちょっと気になるだけ。」



「それって同じことだよ。」



いつの間にか近くに来ていたヒナタが私に一声かけてきたかと思えば、すぐにテーブル席からお声がかかり、メニューを取りに行ってしまった。



3人の動きを見ていれば今日が忙しいことくらい分かる。



それに…これは仕事で、私が嫉妬することじゃないってことも。



私はあの時と全く変わらず、弱いまんま。



そんな自分に嫌気が差す。



こんな弱くて嫉妬してばかりの自分に私はもううんざりしているのに、湊は決して見放そうとしなかった。

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