第4話




 ”ジャック・オー・ランタン”は、着ぐるみとかそういうものでない、モノホンのお化け、魑魅魍魎ちみもうりょうの類らしかった。


 なぜなら、目鼻をり貫いた超ヘビー級の南瓜かぼちゃの中は本当に中空で、中に真っ赤な蠟燭ろうそくがあかあかと灯っていたからだ。


 「ハッピーハロウィン!よくぞ召喚してくれたな!この前オレが人間に会ったのは、56年前だ! オレら妖精の存在する次元は、人間からすると説明が通じにくいほど異質らしいよ。で、詳しい説明は省くが、オレの役割というか、存在理由レーゾンデトルは召喚した人間の望みをかなえることだ! せっかくのハロウィンだから、恒例の儀式をしようぜ! 景気良く盛り上げてやる! 叶える望みは、要するに二者択一だ! ”Trick or Treat ”という例のキマリ文句にちなんでいて、お前の個人的な望みをかなえてやるか、それとも、全世界を平和に、幸福にするか? そういう究極の選択だ! 見たところあんたは身体不自由で相当難儀しているらしいな! 自分の不自由な身体を何とかして、そこで失神しているかわいい姉ちゃんをお嫁さんにしたい、とそれだけでも全然かまわないよ! どうする?」

 ジャックオーランタンは、誰も聴いたことのないような、不思議な声音で、そう言った。 


 オレは、もちろん面食らったが、ジャックランタンの話はのみこんでいた。

 (成り行きも、ジャックランタンの外観にしても、リアリティがありすぎるのに、事実として、あまりにも超現実的なシチュエーションで、却って、単なるジョークとは思いにくい説得力があった。ややこしいといえばややこしい話だが…)

 

 …要するに、世界か自分か?という選択なのだ。「自分」が、トリックのほうなのか?だとしたら、エゴイスティックなほうを選択すると災いが降りかかるのかもしれない。「雀のお宿」という童話にもそんなところがあったっけ…?


 しばらく考え込んだが、「オレの障碍を直してくれ、この娘を嫁にくれ」という望みを普通に言って、それがかなっても、なんだか後味はよくないかもしれない。


 それに、強欲ばあさんみたいに私利私欲を丸出しにして、「ひっかかったなー」と、懲罰を加えられるのではみっともない。「鉄の斧が私の斧」と言ったから、金の斧がもらえたり、こういうストーリーはだいたいそうなるのが、童話とかでは普通だ。

  

 どうするべきだろうか…?


<続く>

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