第2話



 ハロウィンが、万聖節のイヴなのは知っている。万聖節は、All Hallow's Day といって、ハローが、アングロサクソン語の「聖人」で、それぞれの日に割り当てられている、キリスト教の天国にいるとされるすべての聖人をまとめて祝う日だそうだ。


 ハロウィンはその前夜祭。クリスマスイヴとまあ、同じ趣旨で祝われているらしい。


 そういうことはふつうまあ、カンケイなしにコスプレや仮装をして騒ぐ人が多いが、もともとはそうで…と、小説のト書きを作っていると、玄関のチャイムが鳴った。

「デリバリーヘルスです。入ってもいい?」

 来客用には、いろいろな電子機器のハイテクで、オートマティクに対応できるようになっている。


 …ちょっといざこざしたが、「こんばんわーレモンでーす。よろぴくおねがいしまーす💓」と、二十歳そこそこ位の、フレッシュで可愛らしいギャルが、白い息を吐きつつ、オレの座っているソファの隣に傅いてくれた。


 「こんなカラダなんやけど…5割増しでいいんだよね?」

 「大丈夫よ。地獄の沙汰も、なんとやら、だからね」

 「よかったーこの仕事は長いんですか?」


… …


 おれは事故の前は饒舌なたちで、女性との会話は、経験も豊富だったので、スムーズに進むのだが、あのオトタケくんという人もテレビとかで見ると全く顔から上は障碍者に見えない。おれもそんなかんじだから?女の子も打ち解けて、ケラケラ笑ったりする。


 「ハロウィンだからね、あんまり寂しいのもつまらないと思って…」

 「わかるわよ。普段はずっとひとりきりなの?」

 「介助の人がついていてくれることおおおいけどね、家族が死んじゃっただろ?基本孤独だな。まあいろいろ最近はネットとかのコンテンツが充実してるからそんなに退屈しないなー」

 「そういえばね、”検索してはいけない言葉”っていうのがあるのよ。たーくさんあるみたいだけど、だいたい「閲覧注意」で、観ないほうがいい動画なんかにつながるのよ。知ってた?」

「ああ、何となく知ってるけど…なんかこわいから避けてるけどね?」

「さっきスマホいじってたら、ハロウィン限定の「コレずえっっっったい、検索してはいけないけど、ごくまれにいいことあるかも?」ていう超マルおかしな触れ込みの言葉もあるんだって! 都市伝説ぽいけど、ここにつくちょっと前に見つけて、まだググっていないんやけど…」


「へえ!ハロウィンの夜だけ? なんやろね。流行ってるの? 検索した人いるの?」

「だから、今年のハロウィンだけらしいし、まだそこまで調べてないよ」

「ふうん…見当つかへんなあ。」


おれは考え込んだ。女の子は、色白でかわいいけど平凡で、だけど怖いもの見たさではちきれそうになっているお年頃、とそういう感じもあった。

一興だから、誘いに乗ってみようか?と、臆病なおれもなんだか勇を鼓されて?その気になってきつつあった。

… …


<続く> 



 

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