四十二、論理くん、窮地に立たされる

土曜日の夜、学校の宿題でわからないところがあったので、私はお母さんに教えてもらおうと思い、お母さんの部屋に入った。お母さんの学校ではもうすぐ中間テストなので、お母さんはその問題作りをしているところだった。

「お母さん、ちょっといい?」

「…なに?今ちょっと忙しいんだけど」

お母さんは無愛想にそう言う。あれ、今日機嫌悪いのかな。お母さんは、たまに機嫌が悪くなる。

「宿題でちょっとわからないところがあるから教えてほしいんだよ」

するとお母さんは、机に向かっていた手を止め、振り向いた。うわ、なんだか不機嫌そう。

「それくらい自分で考えなさい!お母さんは今忙しいって言ったでしょ!鬱陶しい!」

カチーン‼︎私の頭の中に、一瞬で怒りがこみ上げて来た。

「鬱陶しいってなに⁉︎宿題見てほしいって言っただけじゃん!」

「それが鬱陶しいって言うの!忙しいから出てって!」

なにこの人!こんな人、お母さんじゃない!あー腹立つ!

「あーそうですか!出てってって言うなら出て行きますよ!」

私は、腹立たしさをぶつけるように、扉を思いっきり閉めた。なんなのお母さん!鬱陶しいなんて、酷いよ!もういい!お母さんの望み通り私は出て行きますから!私は、居間を通り過ぎ、玄関に行くと、靴を履いて外に出て行こうとした。

「おい、文香、どうした?どこへ行く?お母さんと何かあったのか?」

背後からお父さんが話しかけてきた。

「知らない!お母さんに出て行けって言われたから出て行く!」

「はあ?おい、待ちなさい」

私は靴を履き終えると、玄関の扉を開けて家を飛び出した。駆け足で走る。もう!酷いよお母さん!あんなこと言わなくたっていいじゃん!もう、お母さんなんて大っ嫌い!私は、いつのまにか泣いていた。論理…こんなときに、そばに論理がいてくれたらな…。私はそう思い、いつもの公園に行くことにした。論理はいないだろうけど…。私は夢中で走った。でも、そのうち疲れたので、トボトボと歩いた。論理の公園への道、こんなに遠かったかな…。

「論理ぃ…論理ぃ…すはあああっ、えええ…ん」

街路灯の薄明かりを浴びながら、私は泣いて歩いた。どれだけ歩いたかわからないけれど、行く先に公園の灯りが見えてきた。私は、再び駆け出した。いないだろうけれど、いないだろうけれど…。そんな私の耳に、微かにブランコの音が聞こえてきた。まさか…⁉︎公園に飛び込む。

「論理…!」

薄闇の中、ブランコに乗っていた人影が、ゆっくりと振り向く。

「よう、文香。どうした、こんな時間に」

論理だ!やっぱりいてくれた!私の目から、改めて涙がドッとわきだしてくる。

「論理ぃぃっ…!すはああああっ!ええええええええええええんっ‼︎」

私は論理に抱きつき、お腹をぐうっとふくらませて激しく息を吸い込むと(合唱のフォルテシモのときだってこんなに吸い込んだりしない)思い切り泣いた。


「なるほど、そんなことがあったのか」

夜のブランコに論理と私は揺られながら、私はこれまでの経緯を話した。論理は、深くうなずいて、私の話を聞き終えた。

「酷いよね、お母さん…私はただ宿題を聞きに行っただけだったのに」

「そうだな」

と、論理はきっぱりと言った。

「忙しいのはわかってたけど…鬱陶しいなんて言わなくてもいいじゃん」

「お母様、穏やかな人なのに、親子の間でも言ってはいけないことを、一気に言ってしまったな」

論理はブランコを降りて、私の背後に立ち、私の胸を後ろからそっと抱きしめてくれた。

「そうでしょ、あんな言い方はないよ」

「お母様、よっぽど虫の居所が悪かったと見えるな。そんなことまで言ってしまうとは。一体何してたんだっけ」

「テストの問題作り」

「なるほどなぁ…」

論理は、私の胸を抱いたまましばし黙っていて、何かを考えている様子だった。しばらくそうしていたあと、口を開く。

「俺さ、国語のテスト解いているときに思うんだけど、国語なんて答えがいくつも出てもよさそうなものなのに、それが、一つに絞られるように問題が作ってあるんだよ」

「そういうものなの?」

「うん。きっと問題を作るときには、この問題に生徒がどう答えてくるか、あらゆる可能性を考え抜いて作ってると思う。お母様も、そういう作業をしておいでだったんじゃないかな。無論、だからといって、文香にそんなことを言っていいというわけじゃないけれどな」

あ…お母さん、そんなことしてたんだ…私、自分のことばかり考えてて、お母さんのことあまり考えてなかった。

「そうだったんだ…私、そこまで考えてなくて、論理に言われてようやく気づけたよ」

「よかった。泣きながら公園に飛び込んできたときには、どうなるかと思った。文香、将来教師になるんだろ?お母様の忙しさも、受け止めてあげないとな」

論理にそう言われて、私はやっと、笑顔になることができた。

「論理、ありがとう。やっぱり論理は、なくてはならない人だよ。…論理、愛してるよ」

「愛してるよ」

「大好きだよ」

「大好きだよ」

「ずっと一緒だよ」

「ずっと一緒だよ」

私は首を回して、背後の論理を見つめた。論理の唇が、すぐ前にある。私たちは、唇を重ねた。秀馬くんも素敵だし、ドキドキするけれど、こうやって私を穏やかに温かく受け止めてくれるのは、やっぱり論理だけだ。熱く脈打つ私の胸に、論理の腕が入ってくる。乳首を摘まれ、私は小さく喘いだ。

「んあっ!」

論理の腕に促されて、私は立ち上がった。背後から論理が迫ってくる。私は思わず、ブランコの鎖につかまった。金属音が響く。

「好きだぞ、文香」

論理の唇が、私のうなじに走る。あ、そういえば、昨日剃るの忘れちゃったんだ。ジョリジョリしてて恥ずかしいよぉ。そして論理は、私のスカートを捲り上げ、ショーツに手をかけた。

「あっ…ダメっ…」

この公園でこういうことをするのも、もう何回目かだけれど、やっぱり少し恥ずかしい。ふと見上げると、いつも止まっているところにいるタクシーが、今日も公園の向こう側にいる。あそこから私たち、どう見えてるんだろう。

「文香、いくぞ」

論理は、ショーツを一気に下ろした。そして、指で私のおまんこを弄る。ほどなく、その指は、私のクリトリスに到達して、ここを激しく責めた。

「あぁん!ダメぇっ…!私のクリトリスぅ…!はぅあぁぁっ!おかしくなっちゃうぅぅっっ!」

「じゃあ俺のために、おかしくなってくれ。もうこんなにびしょびしょじゃないか」

論理は、私のおまんこに深々と指を入れ、高速で動かし始めた。

「ああんっ!あうぐぅっ!やだぁっ!ぐっ…っ…!ぐぅぅぅううううっっ!」

私は果てた。でも、ここで終わってくれるような論理じゃない。論理は、ファスナーを下げて、高々とそそり立った、あの二十センチを突き出した。ポケットからコンドームを取り出して、素早く装着する。

「文香!文香!文香が欲しい!」

「論理!私も、論理が欲しいっ!」

論理と過ごす、この温かい時間。これが私は欲しい。この時間は、論理にしか、与えられないものだ。

「文香、文香を俺にくれ!いくぞ!」

論理は私のお尻を広げ、おまんこをめがけて一目散に走ってくる。私の中に、熱い、でも、温かい感触が満ちた。

「よし、文香、動かすよ」

「うっ…!うん!」

私がそう答えると、論理は、ゆっくりと二〇センチを動かし始めた。その動きがどんどんと早くなる。ああ、気持ちいいよぉっ!そして、私は昇っていく。

「あうっ!あうっ!うぅぅっ!はぁあんっ!論理ぃっ!論理ぃぃっ!」

「文香ぁっ!」

論理の腰の動きが、限界まで速くなる。論理の激しい息遣い。私の視界が真っ白になりかけた、その瞬間──!

「おい‼︎ガキども‼︎いい加減ざけんなよ‼︎」

私はまだ、正気に戻りきらない。ぼやけた視界の中に、黒い大きな人影がある。

「いつもここで休んでいりゃあ、こんなもの見せつけられて、いい迷惑だクソガキ‼︎」

「なんだと‼︎貴様、どこのクズ野郎だ‼︎」

論理はコンドームを外すいとまもなく、二〇センチを中にしまった。私もとりあえず、手早く服装を直す。ようやく現状がわかってきた。七十歳くらいの少し大柄の男の人が、私たちに迫ってきている。これはやばい。

「いいかよく聞きやがれ!タクシーってのは激務なんだ。その中の貴重な休み時間が、この公園だ。そんなときにそこの雌ガキの、あへあへあへあへした声が聞こえてくる。休めるものも休めやしねぇ!いい加減にしろよ‼︎」

「すみませ…」

謝りかけた私を、論理が乱暴に押しとどめる。

「文香、こんなやつに謝る必要はない。大体どこで交わろうと、俺たちの自由だ。それが鬱陶しいと言うのなら、ここじゃなくて、別のところで休憩すればいいだけの話だ。いちいちこんなたわけた言いがかりをつけられる筋合いはない!」

「なんだとっ‼︎…てめぇ、言葉だけではわかりそうにねぇやつだな。俺もいい加減休みを邪魔されてイラついてたところだ。一気に片付けてやる‼︎」

そう言って、男の人は向かってきた。これって、喧嘩になるの⁉︎脳内に、浦野先輩たちとのことが思い浮かぶ。論理、またやられちゃうよ!

「論理!ダメだよ!やめて!」

私は、論理を制する。でも、論理はそれを聞き入れずに、男の人に正面から相対した。

「そうか。それなら相手になってやろうじゃねぇか!言っておくが、ハンドルが握れなくなっても知らねえぞ!」

「うおおおおおおおおおっっっ‼︎!」

論理は、吠え猛る男の人の直前まで来ると、繰り出されるパンチの下をくぐって、やにわに腕を畳み、男の人の顎を、下から肘で殴った。

「ぐぅわぁしっ‼︎」

飛上先輩に、『蚊でも止まったのか』と言われた論理の攻撃だけれど、この男の人には効いていた。男の人は尻餅をつきながら、顎を押さえている。

「てめぇ‼︎よくも‼︎」

男の人は跳ね起きて、再び論理に襲ってくる。左のパンチ。でもそれは、私の目から見ても、浦野先輩たちのパンチと比べると、あきらかに遅い。論理は余裕を持ってそれを見切ると、強烈な膝蹴りを、男の人の腹に見舞った。

「ぐはぁっっ‼︎」

倒れこむ男の人。そのとき、公園の端から金切り声が響いた。

「論理くん‼︎論理くんでしょ⁉︎なにやってるの‼︎」

見ると、公園の入り口付近に、論理のお母さんと同じくらいの年格好の女の人が、三人立っている。わあ、またやばい状況になってしまった…。

「まあ、大丈夫ですか⁉︎」

女の人たちは口々にそう言って、男の人を介抱した。女の人の中の一人が、論理をキッと睨みつける。

「論理くん、これ、あなたがやったのね。どうしてこんな乱暴なことをするの⁉︎とりあえず、お父さんたちを呼んでくるからね」

その女の人は、論理の家に向かって走り出していった。ええ…やばいよ…どうするの、論理!というか、この人たちなんなの?

「論理…この人たちは?」

論理は頑なな顔をして、唇を引き結んでいたけれど、やがて、低くボソリとつぶやいた。

「……町内会の人」

男の人が、お腹を蹴られたショックから立ち直り、ものが言えるようになった辺りで、薄闇の中から、論理のお父さんと、お姉さんが走ってきた。げっ!お姉さんまで来た!これはほんとにやばい!

「論理!なにやってるんだ!」

お父さんは厳しくそう言うと、まだ地べたに尻餅をついている男の人に向かって寄り添った。その脇では、お姉さんが私のことをじっとりと見ている。何があったのか薄々気付いているような感じで、その視線には、勝ち誇ったような色があった。

「うちの息子が大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」

「申し訳ございませんもなにもあったもんじゃねえ。こっちはこいつに少しばかり注意しただけなのに、このザマだ」

「違う!」

論理は、激しくかぶりを振った。

「注意だと?が一方的に絡んできただけじゃねえか。ざけんなよ!」

お父さんは、ため息をついた。

「どのような経緯があったか図りかねますが、そもそも息子たちが何をしていたからこんなことになったんでしょうか」

男の人は、踏ん反り返った。

「そりゃあよう、言うまでもねえや。こんな夜の公園でよ、人の休憩時間を邪魔して、ほれ、男女の営みってやつか?それを堂々とよ、へっへっへ!」

「ええっ!」という声が、町内会の三人の中から上がる。お父さんは、しばし言葉を失っていた。論理は、唇を噛んでうつむいた。お姉さんは、一人ほくそ笑んでいる。私は…立場がなくて、おろおろとすることしかできなかった。

「わかりました。息子には、このあと厳しく言って聞かせます。後々ご連絡も差し上げたいと思いますので、連絡先を交換させていただいてもよろしいでしょうか」

お父さんがそう言うと、男の人は、卑屈げな笑いを浮かべた。

「ああ、そうしてくれると助かる。こっちも酷くやられたからな。治療費も持ってもらわなきゃな」

大人たちの中で、一方的に話が進んでいく。論理は何も言えずに、私も何も言えずに、うつむいているだけだ。こんなことになるとは思わなかった。私がもっと、論理を止めることができていれば、こんなことには…これからどうなっちゃうんだろう…。不安で、胸の中が渦巻いた。お父さんは、もう一度男の人や、町内会の人に深々と頭を下げると、論理の腕を強く持って家の方へ引っ張っていった。論理…。名前を呼ぼうとしたけれど、この状況では…。お姉さんが振り向いて、私を見る。

「あらあら、名前呼んであげなくてもいいの?ひょっとしたら、名前呼べるの、これで最後になるかもしれないのに」

悪魔の台詞を残して、お姉さんの含み笑いが離れていく。そんな…そんなこと…。不安の渦が、また胸の中で大きくなる。

「やあねぇ、近頃の子は」

「恥ずかしいってこと、知らないのかしら」

「親の顔が見てみたいわ、私だったらこんな子育てない。でも、論理くんも論理くんよね」

町内会の三人は、私をちらちらと見ながら、そうやって囁き合う。私はどう言われてもいいけれど、論理やお母さんの悪口まで…!私はいたたまれなくなり、公園をあとにした。


もうすっかり辺りは暗くなった。そして、私の心も…暗い。そんな中、私はまたトボトボと家に向かって歩く。不安でたまらない。私は立ち止まり、思わずスマホを手にした。ラインの、論理の画面を開く。震える指を、画面に走らせた。

『論理…。大丈夫?』

でも既読がつかない。いつも私のラインには、五秒と置かず既読にしてくれる論理なのに。歩道にたたずんだまま、論理のリプライを待つ。でも、いつまでたっても未読のままだ。

「論理…っ!」

こらえきれなくなって、私は論理に電話した。お願い、出て!でも…。

『お掛けになった電話は、現在電源が切ってあるか、電波の届かない場所にいます』

無慈悲な機械音声。

「ううう…論理ぃ…す、すはあああっ、えええ…えええん…」

泣きながら私は歩き出す。歩くしかなかった。もうこのまま何処かへ逃げてしまいたい気もしたけれど、逃げる場所などどこにもない。論理…このあとどうなっちゃうんだろう。私たちもどうなっちゃうんだろう。行く手が暗い。私たちの行く道も暗い。

「お姉ちゃん‼︎」

前の人影がそう叫び、走り寄ってきた。お母さんだ。

「お母さん…」

「お姉ちゃん!ごめんね!あんな酷いこと言って…ごめんね…」

私は、お母さんに抱きとめられた。ああ、そう言えば、私、お母さんに酷いことを言われて、家を出たんだっけ。もうかなり昔のことのような気がする。

「みんなで探してたの。でも、無事に見つかってよかった。さあ、帰りましょ」

無事…か…。でも、無事じゃないんだよ、お母さん…。お母さんの温もりが体の芯まで伝わる。私は、涙が溢れてきた。

「お、お母さん…お母さんっ!すはあああっ、えええ…ええええええんっ‼︎」

「ごめんね…ごめんね…」

違うの!そうじゃなくて!無事どころじゃなくなってるの!今は、泣くことしかできなくて、私は、お母さんに寄り添われ、家路に着いた。


「……………………」

家に帰って、私の涙が収まったあと、話しづらかったけれども、お父さんとお母さんに、一部始終を話した。今度ばかりは、ことの大きさが違う。二人とも言葉を失って、居間を重い沈黙が覆っていた。

「文香…」

お父さんが、ようやく口を開く。

「日曜日ごとに、公園で、その…営んでいたというのは…本当なのか?」

「うん…」

「いい加減にしろ‼︎」

お父さんの平手が。私を打った。痛い…。

「お前はいつからそんな恥知らずな娘になったんだ‼︎それとも何か!論理くんがそうするようにお前に無理を言ったのか!だとしたら、交際はもうやめろ‼︎」

「違う!論理に無理やりされてるわけじゃない!」

「うるさい‼︎とにかく、そんな破廉恥なことをするやつとは、もう別れなさい‼︎」

お父さんは、そう怒鳴る。そんな…!論理と別れるなんて…!心臓が圧迫された私は、その圧迫を払い除けようと、叫ぶ。

「嫌だっ‼︎誰になんと言われようと別れない‼︎もし別れさせようとするんだったら、私はこの家出て行くから‼︎」

立ち上がりかける私の腕を、お母さんが取った。

「まあ落ち着きなさい二人とも。お父さん、別れろと言って別れる二人でもないわ。お姉ちゃん、この家を出て行ってどうするの?」

「知らないよそんなこと!論理と二人でホームレスにでもなるわ!」

「あああああ‼︎なんでこんなことに…あぁぁぁぁ…」

お父さんはそう唸って頭を抱える。それはこっちの台詞だよ!

「ふう…」

お母さんは、ため息をつく。

「お姉ちゃん、性というものは、普通は家の中でこっそりやるものよ。どうして公園なんかでやったの?」

「…愛の巣にするって決めたから」

「愛の巣?それはどういうこと?」

怪訝な顔をするお母さん。

「あそこは、論理との待ち合わせ場所だし、思い出の場所なの。だから…」

「そういう思い出があるから、そこで営もうとしたわけね?」

「うん…」

「その気持ちはわからなくもないわ。でもね、夜の公園って、怖い場所でもあるのよ。誰も見ていない所だから、変な人もやってくる。そういう変な人と関われば、厄介なことにもなる。そこまで予測できなかった?」

私は、床をずっと睨んでいた。お父さんに叩かれたほっぺがジンジンと痛む。

「そんなの、知らないよ…私はただ論理と…温かい時間を過ごしたかっただけで…」

「知らないで済むか‼︎」

お父さんがまた声を荒げる。でもそれを、お母さんが制した。

「お父さんはちょっと黙ってて。いい、お姉ちゃん。お姉ちゃんたちがエデンの園にいるというのなら、話はそれでいい。でもここには、いろんな人間がいる。そしてそういう人たちと関わっていかなければいけない。愛の営みだって、そういう関わりの中でやらなければいけないわ。わかってくれる?」

お母さんは、優しく私を諭す。わかる…わかるけど、私はただ論理と甘い時間を持ちたかっただけなのに…。お母さんは、私の気持ちを見透かしたように、言葉を続けた。

「お姉ちゃん、一緒にいたいと思って一緒にいた結果、どうなったかな。今度という今度は、太田さんも、いよいよ黙っていないと思う。太田さんにしてみれば、今回のことで、町内会中に恥ずかしい思いをしたことにもなるからね。論理くんとお姉ちゃんを引き離そうと画策しても不思議はないわ」

えっ!論理のお母さんの顔が目に浮かぶ。私たち引き離されちゃうの?そんなの嫌だ…!そのとき、電話が、プルルルルルル!と、鳴った。

「ほら、噂をすればなんとやらだわ」

お母さんは、電話を取った。初めから全力で喧嘩腰。内容は、いつもの通りの言い合い。論理のお母さんは、私の悪口を散々言ってるみたいだった。

「ふう…あの人の悪口にも、ずいぶん抵抗力がついたわ」

お母さんは、苦笑いしながら戻ってきた。

「どうせ何を言おうと、自力じゃ動けないんじゃないの。悔しかったらここまで乗り付けて、私にサシで文句言えってんだ」

「なんて言ってた?」

自分の悪口なんて聞きたくはなかったけれど、それでもやっぱり気になった。

「論理くんは、しばらく自宅謹慎させるって。学校も行かせずにね。それと、月影中は、あまりに環境が良くないから、転校させることも考えているって」

「そんな!」

もう、二度と論理に会えないの?さっきお姉さんに言われた言葉が蘇る。その通りになっちゃうのかな…。ライオンに見つかったシマウマのような気持ちだ。私たちは、ただ一緒にいたいと思っただけ。誰に迷惑をかけようとも思っていなかった。なのに、どうしてこうなるの?


『あんたたち、公園でエッチしてたの⁉︎』

優衣の素っ頓狂な声がスマホから響く。。

「うん…」

私は誰かに相談したくて、優衣に電話をしていた。

『やっぱりあんたたちって勇者だわ。真似できない。でもさぁ、それって、言っちゃ悪いけど自業自得なんじゃない?』

「優衣、酷いなぁ…。そう言われればそうかもしれないけど…私はただ論理と一緒に温かい時間を過ごしたかっただけなんだよ」

『それにしても、場所が悪いわ。あの公園の夜って、ガラが悪いので有名なんだよ。どうせやるんなら、棚町(たなまち)公園の方が安全だったよね。やるんだったら、そういうことまでリサーチしていかなきゃ』

「そんなこと、今更言われたって…」

『そうだよねぇ、もう、論理と会えなくなるんだもんね〜』

「やだっ‼︎そんなの考えたくない‼︎」

私は、泣きそうになる。

『ぶんちゃんさ、本当にこのまま論理と会えなくなったら、どうする?』

「だから!そんなの考えたくないって言ってるじゃん‼︎」

私がそう叫ぶと、優衣は「はあああっ」と大きく息を吸った。

『ぶんちゃん。論理よりも、頭が良くて、かっこよくて、性格も良くて、家庭環境も良くて、お金持ちな、男子が一人、ぶんちゃんのことを、ずーっと好きでいてくれてるよね』

「………‼︎」

秀馬くん!その顔が、頭に浮かんだ。確かに、論理がいなくなってしまったら、私は…。

『ぶんちゃん、今あんた、なに思った?』

「べ、別に…秀馬くんは、秀馬くんで素敵だけど…私が好きなのは論理だもん!」

『ふ〜ん。まあいいけど。どちらにしてもね、今ぶんちゃんは、大きな別れ道の上にいると思う。論理がこのあと、ぶんちゃんに会いに来て、この月影中にい続けるならば、ぶんちゃんは論理に進むだろうね。でももしそうじゃなかったら、ぶんちゃんの彼氏は、坂口くんになるよ』

そ、そんなことって…!ありえない!とは思いつつも、さっきから秀馬くんの顔が頭から離れない。

「ありえないよ!ないない!私には…論理だけだもん」

『まあ、私はどっちでもいいけどね。ただ、恋愛やるにしても、夫婦やるにしても、お互いの家庭環境が悪いと、なにかとストレスが溜まるよ。だからそういうのは無いほうがいいんじゃないかってね』

秀馬くんのお父さんは優しかった。きっと、お母さんだって、論理のお母さんのような人じゃないだろう。あーもー!さっきから私、秀馬くんのことばかり思ってる!なにやってるの!論理、ここまで会いに来てよ…論理に会えたら、この胸のモヤモヤが、一気に晴れてくれるだろうから。


日曜日は、論理といつも図書館で勉強をしていたけれど、今週はないと思った。一応、待ち合わせのあの公園に行ったけれど、論理は来なかった。論理の家に行こうかとも思ったけれど、とても怖くて行けなかった。当然、この日の夜は一人で過ごす。火事で家が焼けて、何もかも失ってしまったときのような思いで、胸がいっぱいだった。


明けて月曜日。朝、待ち合わせの公園に行ったけれども、やっぱり論理は来なくて、欠席だった。私の真後ろに、ぽっかり空いた空間を感じる。うなじを触られることもなかった。

「おや、論理、今日は欠席なのか。珍しいな」

休み時間、秀馬くんが私の席に来てくれていた。

「う、うん…ちょっと、あってね…」

「どうしたんだ?」

私は、黙り通せなくなって、秀馬くんを廊下に連れ出した。教室を出る際、優衣と沢田くんが、私たちを見ていた。

「あのね…」

私は、秀馬くんに土曜日の一件を話して聞かせた。秀馬くんは、真剣に私の話を聞いていてくれた。

「そうか…話してくれてありがとう」

秀馬くんは、深いため息をついて、私の話を聞き終えた。

「公園でのことについて、文香はもう散々怒られただろうから、俺は何も言わない。ただ、論理がどうなっているか心配だな…。普通は、よっぽど酷くいじめられたとか、深刻な理由もない限り、転校なんてことはないだろうが、あそこの親御さんは難しい人みたいだからあり得るかもしれないな」

秀馬くんは、深刻そうにそう言う。

「論理が転校しちゃうなんて…私、どうしたらいいの…」

また泣きそうになる。そんな私の頭を、秀馬くんが撫でてくれる。秀馬くん…こんなときに…。

「心配するな。俺は、論理の鉄砲玉ぶりを信じている。浦野たち三人に蟷螂の斧を振りかざした論理のことだ。親にあれこれ言われたって、それをへともせずに文香のもとに走って来るはずだ。だから大丈夫だ」

大丈夫と言われても、そう思いきれない私がいる。

「本当に大丈夫なのかな…」

私が悲しげにつぶやくと、秀馬くんは、爽やかな微笑みを見せてくれた。

「ああ、大丈夫だ。大丈夫って、文香の専売特許だろ。あのとき、バスケで怪我を負ったときの、文香の『大丈夫だよ』。今も忘れないぞ」

「…………‼︎」

ああ、そうだ、そんなこともあった。秀馬くん、ありがとう。その優しさが、今はとても温かい。

「うん…ありがとう…秀馬くん…」

「論理のことが好きなら、信じていろ」

そう言ってまた秀馬くんは、私の頭を撫でた。目の前に、秀馬くんの吸い込まれそうな瞳が、あった。


放課後になった。論理がいない一日は、ショートケーキの上にイチゴが乗っていないような、実に無味乾燥なものだった。論理…このままずっと学校来なくなっちゃうの?そんなの、耐えられないよ。私は、論理の席を見つめたまま動けなくなっていた。

「おーい、ぶんちゃん」

優衣の、朗らかな声に、私は振り向く。

「優衣…」

優衣は、私の肩を勢いよく抱き、ニヤリと笑う。

「もう!そんな顔しないの!さあ、一緒に帰るわよ!」

「えっ…、だって、沢田くんは?」

「義久は帰ったわよ。…義久は、私の大切な彼氏だけど、それよりも大切な親友がピンチなんだもの。そばにいてあげなくちゃね」

そう言ってウインクする優衣。

「優衣…うっ…うっく…ううっ…す、すはっ、すはああああっ!ええええええええええええんっ‼︎」

私は、優衣の優しさにとどめを刺され、泣き声が止まらなくなった。

「よしよし、つらいね。まあ、ここにいてもしかたないから、帰るわよ」

私は、優衣に促されて教室を出た。


帰り道、優衣は私の手をずっと握っていてくれた。そして、私の気を少しでも逸らそうとしてくれているのか、たわいのない話をずっとしてくれていた。優衣、ありがとう。優衣にいじめられたこともあったけれど、やっぱり優衣は、いなくてはならない私の親友だよ。

「それでね、沙希ったら、ほんと間抜けなんだけど…」

「優衣、ありがとう」

「え?なにが?」

私は、優衣の手をぎゅっと握る。

「優衣は、私の大切な親友なんだって、心底思うよ。前はちょっと喧嘩したことあったけど、今はこうやって私を支えてくれて、なんでも言い合える仲になれた。私、優衣が親友で本当によかった」

少し歩く速度を落としながら、私はそう言った。

「な、なによ急に改まって…照れるじゃない。まあ?私もぶんちゃんが親友で最高によかったけど?」

優衣は、ぎゅっと手を握り返してくれた。

「優衣がいて、論理がいて、沢田くんがいて、秀馬くんがいて…私、本当に幸せ者だと思う。…まあ、論理はいなくなっちゃうかもだけど」

「…ねぇ、ぶんちゃん、ぶんちゃんてさ、論理のどこがそんなに好きなの?」

優衣が、不思議そうにそう聞きながら、私の顔をのぞき込む。

「春にさ、私が髪の毛切りすぎちゃったことあったでしょ?あのとき論理は私に、『おかっぱ、短い、かわいい』ってストレートに言ってきたの」

「論理、そんなこと言ったの?」

「うん。そのあと、音楽の時間に論理が、私のことじいっと見てきてくれるようになって、他の女子に嫌われても、そんなこと知るかって感じで見つめてくれたの」

「あー、今じゃ恒例の、『文香凝視』ね」

「あと…決定的だったのが、『架け橋』なの」

「架け橋?」

木枯らしが吹く。もう十月も終わりが近づいてくる。論理と過ごす、三つ目の季節。四つ目は、果たしてあるのだろうか。そんな不安を抱きながら、私は優衣に語る。

「論理と私の机の隙間にね、論理が定規を渡して、『これ…俺と池田さんの、架け橋だよ』って、言ってくれたの」

「ぷっ!なにそれ!論理だなぁ!」

「うん、論理なの。こんなことするのって、論理だけなの。不器用で、一途で、温かくて、論理なりの愛し方をしてくれるの。私のためには、実力もないのに、強い人たちに向かっていってもくれる。そんな必死さが、私は好きなの」

また目に涙が浮かんできて、目の前が歪む。ドラえもんに出てくる、のび太の机の中の空間みたいだ。本当にここがその空間で、私はタイムマシーンを持っていればいいのに。そしたら、土曜日の、お母さんと喧嘩する前まで遡って、喧嘩をしないで公園にも行かずに済むようにすることができたのに。そうすれば、今、こんな状況じゃないのに。論理と離れるかもしれない状態に陥ることはないのに。また泣きだした私の腰を、優衣がそっと抱いてくれる。

「なるほどね…。でもさ、ぶんちゃん。論理って、ほんと、周りが見えてないって言うか、自分でこうだと思い込んじゃうと、それ一筋になっちゃうよね」

「ひっく…それが、私は好きなの。すはあああっ…うっ…くっ…自分の世界を、ひっく…ちゃんと持ってる。す、すはあああっ、うぅっ…あんな恐ろしい家庭環境の中で、よく押しつぶされずに、っく…自分を保っててくれると思うよ」

「…そっか。そんな大切な論理と、関係が続くといいよね」

優衣は、私を家まで送ってくれた。親友とさよならをして、私は家の中に入った。家にはまだ誰も帰ってきていない。私は、よろよろと自分の部屋に入ると、ベッドに倒れこんで、泣いた。


あくる火曜日。論理は、今日も公園には来ずに、欠席だった。さすがにクラスのみんなも気にかけているようで、朝のホームルームのときには、峰岸くんが、倉橋先生に、

「先生、論理、どうしたんですか?」

と、尋ねた。でも先生は、

「ああ、ちょっとな」

としか、言ってくれなかった。転校の話が倉橋先生のところにまで来ているのだろうか。私の中の不安が、お風呂の排水溝に詰まった髪の毛のように、絡みつき、盛り上がっているように感じた。


二時間目に音楽の時間があったけれど、もちろん、論理の視線はなくて、歌う気力もなくて、私はただ、口パク人形になっていた。論理が聞いてくれないのなら、歌う意味はなかった。


休み時間や昼休みには、いろんな人に、「論理どうしたの?」と、聞かれたけれど、正直に言う気も起こらなくて、倉橋先生のように、「うん、ちょっとあったみたい」と、答えるのがやっとだった。もう何もやる気が起こらなくて、早退しようかと思ったけれど、早く帰ったって、誰もいない家の中で一人でいなくちゃいけない。私はまた、強烈な寂しさの吹雪の中に放り出されていた。


部活は、きついの一言に尽きた。私は何があっても部長でいなければいけない。突き上がる寂しさに耐えて、私は、部長の仮面を被り続けた。なんとかやり抜いて、帰り支度をしているとき、後ろから声をかけられた。

「おいっ」

振り向くと、そこには、不満げな顔をした、佐伯さんが立っていた。

「な、なにかな」

「なにって、何かあったのかよ、部長」

「えっ」

しっかり部長をやってたつもりなのに、見抜かれた?

「そんなしけたツラで音取られても、困るんだよ。集中できなくなるだろ」

「ご、ごめんなさい…」

私が謝ると、佐伯さんは、はぁ、と、苛立たしげにため息をついた。

「まあ、何があったか知らねえが……ほら、やるよ」

いつもの幼いソプラノで佐伯さんはそう言って、ポケットから飴を取り出し、私に差し出す。

「えっ…」

「ほら!…これで少しは元気出しな」

佐伯さんは、私に飴を手渡すと、早足で帰っていった。佐伯さんって…案外優しい子なのかも…。私は、胸が熱くなった。


部活のあとは、優衣と沢田くんと一緒に帰った。

「池田、それで…論理からまだ連絡はないのか?」

「うん…」

私はそう答えてうつむいた。

「心配だな。なんなら俺が様子見に行ってやろうか?学校の宿題渡しに来た、とか言って」

「駄目だよ義久、私たち、あそこのババアにめちゃくちゃ印象悪いじゃない」

いいなあ、二人はなんの弊害も無く交際が続けられて…。

「どうして、論理の家はああなんだろう。でもせめて、お父さんと連絡が取れたら…」

「でもぶんちゃん、今回のことでは、お父さんも怒っているんでしょ?じゃあ連絡が取れたとしても、いい話にはならないと思う」

「太田家は、ブラックボックスになったな」

私は唇を噛んだ。もとはと言えば、自分が蒔いた種なのに、こんなときにすら、何もできないのが悔しい。

「そうだぶんちゃん、こうなったらさ、ダメもとで論理の家電に電話するってのはどう?」

家電に電話⁉︎そんな…怖い!でも、ここでこうしていても始まらないし、私が動かなくちゃ!

「うん、やってみる!」

私はスマホを取り出した。連絡先の、論理くんの画面を出す。いつも掛けている論理くんの携帯番の下に、家電の番号があった。指の震えを抑えられないまま、その番号をタップする。スピーカーホンに切り替えた。二人が、耳をそばだててスマホのそばに寄ってきてくれた。プップップ…と音がして電話が繋がっていく。私は、深呼吸をして覚悟を決めた。プルルルルルル。プルルルルルル。呼び出し音が二回鳴り、ガチャっと、誰かが出た。ああ、神様!

『はい、太田です』

ああ…!お姉さんだ!私は目の前が暗くなっていくのに耐え、勇気を振り絞って声を出した。

「……も、もしもし、池田です」

私の声が震えている。

『あらぁ、待ってたのよ、文香ちゃん』

お姉さんの変な余裕。このありすぎる余裕に、私は最初からついていけなかった。

「こ、こんにちは…あの…そのあと…論理くんは、どうなりましたか…」

『それよ、それ!大切なことでしょ?こちらから池田さんのほうに、最後通告を申し上げようと思ってたところなのよ』

さ、最後通告⁉︎なにそれ⁉︎

「…ど、どういう…ことですか?」

『惜しいことをしたわね文香ちゃん。だから私があのとき、『名前呼んであげなくてもいいの?』って、言ったじゃない。やっぱりあれが最後になった』

心臓がうるさいくらいに警鐘を鳴らす。

「さ、最後って…」

お姉さんは、高笑いをした。

『あはははは‼︎論理はね、転校するの。誰かさんとのね、不純異性交遊が激しくって。これ以上、月影中には置いておけないってことになったの』

そんな‼︎論理、本当にいなくなっちゃうの?私のせいで!そんなの嫌だよ‼︎

『あなたたちも、私たちを相手に、よくぞそこまで抵抗したものよね、褒めてあげるわ。だけど、おままごともこれでおしまい。私たちの力を思い知りなさい。あなたたちの負けよ‼︎』

お姉さんは、言いたいことを言って、電話を切った。でも、お姉さんの最後の言葉は、私の頭にはほとんど入ってこなかった。これって現実なの?夢なら覚めて…。無力感と脱力感と絶望が私を襲ってきて、私はそれに倒されるように、その場に崩れ落ちた。

「ぶんちゃん…!」

優衣が私を呼ぶ。論理は、もう私を呼んでくれないってことなの?瞬く間に涙が溢れてきた。

「うええええええええええええええっっっ‼︎!」

叫び声だか喚き声だかわからない狂おしい絶叫が、私の全身から噴き出した。

「やだっ‼︎やだやだやだやだあっっ‼︎やだああああああああっっ‼︎論理ぃぃっ‼︎論理ぃぃぃぃぃぃっっっ‼︎」

叫び尽くす私を、優衣と沢田くんは、それでも抱きかかえながら私の家まで送ってくれた。そして、お母さんたちが帰ってくるまで、二人して私のもとについていてくれた。そんな二人の前で、私は、声も涙も枯れるまで泣き叫んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月12日 23:00
2024年12月12日 23:00
2024年12月12日 23:00

【論理×文香三部作 中学編】私が呼吸するとき 徳間・F・葵 @hhivy725

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ