十八、論理くん、私で感じまくる
翌日私たちは、昼近くまで寝ていた。起きたとき、まだ論理くんは寝ていたけれど、私はその腕の中にいて、論理くんと一緒に朝を迎えられることが幸せだった。相変わらず今日も暑いようで、夜通しエアコンをかけて寝た。気温は、また三十六度くらいになるだろう。起き抜けの頭に、蝉の、生を満喫しているかのような鳴き声が届き、窓からは白熱の日光が差し込んでいる。そのうち、起き上がってきた論理くんと一緒に、昨日の残り物で昼食を済ませた。
「論理くん、今日はどうする?」
「俺さ…」
論理くんは、やや熱を帯びたような表情で言う。
「池田さんのソプラノ、また聞きたい」
「え?ここでアカペラで歌うの?」
「それもいいけど…」
論理くんは、苦笑いをしてこう言った。
「あの噴水前で待ち合わせしたときみたいなカラオケとかいいなと…」
「カラオケかぁ!いいね!だけど、今論理くん外に出たらやばいんじゃないの?」
「そのときは一悶着あるかもしれないけど、やつらはどうせ口だけだ。昨日何もないから、わかるでしょ」
「ならいいか。じゃあ、支度して行こう!」
私はパジャマから、この前買った、背中ボタンの胸に薔薇の刺繍が透かされたブラウスに袖を通した。
「池田さん、ボタンはめてあげるよ」
「あ、ありがとう、論理くん」
論理くんは、いちばん上のボタンから一つ一つ丁寧にボタンをはめていってくれた。でも、一つはめるごとに、論理くんの鼻息が荒くなる。そして、ボタンを全部はめると、論理くんは、後ろから私を抱きしめた。
「池田さん、このブラウス、後ろボタンだね」
論理くんの腕に力がこもる。
「これも、この前買ったんだよ。…論理くんが喜んでくれるかなと思って。あははっ」
「ありがとう、すごく似合ってる」
論理くんはそう言うと、右腕を動かして人差し指を、私の背中のボタンとボタンの間に滑り込ませ、私の背中に触った。
「やっ!論理くん、なにするんだよぅ」
「ファスナーと違って、背中ボタンは、こうしてボタンとボタンの間が見える。指を入れていると、池田さんの背中が感じられる。歌っているときの池田さんの背中が息づいて、少し汗をかくのを指で感じれるわけだ。素晴らしいことだな」
論理くんは、自分の世界をまた語った。こういうときの論理くんって、すごく輝いてる。でも、自分の世界を持ちすぎているから、家族ともクラスメイトともうまくいかないんだろうな。
「私にはどう素晴らしいのかわからないけど、そういう論理くんが私は好きだよ」
「ありがとう」
論理くんは、右腕を再び私の胸に戻した。しばらく無言で論理くんは私を背中から抱き、唇を私のうなじの剃り跡に遊ばせた。
「池田さん」
「論理くん」
「愛してるよ」
「愛してるよ」
「大好きだよ」
「大好きだよ」
「ずっと一緒だよ」
「ずっと一緒だよ」
この言葉も、もうすっかり私たちの定番になった。男の子の中には、「俺がお前を好きなことは言わなくてもわかっているよな」という人もいるけど、私は、好きな人にはいつも「愛してるよ」と言いたいし、言われたい。論理くんも、私と同じタイプの人で本当によかったと思う。
「それじゃあ論理くん、行こうか」
私たちは出発した。
カラオケボックスに着いて歌い始めた。私は、アニソン。論理くんは、沢田研二が多かった。でも、私が水樹奈々の『深愛』を歌ったとき、論理くんの様子が変わった。
「池田さん、ソプラノがよく伸びるから、水樹奈々が似合うね。やっぱり、池田さんに吸い込まれた空気は輝いて出てくる。池田さん、中三になったら合唱部の部長になれるんじゃない?」
「ありがとう。私、小六のとき合唱団の団長やってたから、またなれたらいいなって思ってる」
「やっぱり!それならきっとなれるよ。ただの空気が、池田さんに吸い込まれるとこんなにきれいなソプラノになれるんだもの。俺、池田さんに吸い込まれる空気になりたい」
「じゃあ、吸い込んであげるよ」
私は大きく口を開けて、論理くんに近づき、吸い込む真似をした。冗談のつもりだったけれど、論理くんは真顔だった。そしてこう言う。
「池田さん、本気で俺、吸い込まれたくなった。ちょっと、俺のやる通りの体勢をとって歌ってみてくれ」
論理くんは、あれこれ私に指示を出しながら、その体勢を作っていく。それは、論理くんが私の隣に座り、大きく屈みこんで、私の口の前に論理くんの耳が来るようになっている体勢だ。まるで、論理くんの耳がマイクのように私の口の前にある。
「論理くん…また面白いことを思いついたね」
論理くんとの距離が近すぎて、私が手を伸ばせば抱き合う形になる。それがなんだか恥ずかしかった。
「こうすれば」
と、論理くんが屈みこんだまま言う。その呼吸は、少し苦しげだ。
「池田さんのソプラノも、愛らしくて必死な息継ぎも、そして、舌と唾液がくちゃっと音を出すのさえも、この耳で聞ける。どうだ、素晴らしいだろ。つまり、人間マイクだ」
「人間マイク…。なんだか恥ずかしいよ、論理くん。でも論理くん、すごく生き生きとして嬉しそうだね。恥ずかしいけど、こんなことしてまで私の歌や息を聞いてくれるなんて、光栄だよ」
「俺にとっては、池田さんの歌や息は、かけがえのないものだからね。それじゃあ、始めようか」
「何歌えばいい?」
「COSMOS」
「言うと思った」
デンモクを操作して、『COSMOS』を予約する。機械が動いて、イントロが流れた。論理くんの耳の前で歌うの少し恥ずかしいけど、一生懸命歌うぞ!私は、いつも歌うときのように、大きく口を開いて「すはあああっ!」と息を吸い込んだ。あぁ、このブレス音、論理くんの耳に入ってるだろうな。感じてくれていればいいな…。そして、私は歌い始める。
「なつのくーさーはーらにー」
うまく声出てるかな。論理くんの耳にはどう聞こえてるかな。論理くん、どう思ってるかな。私はそう思いながら歌って、そして息を吸い込む。普段は意識しないけれど、私のブレス音って、論理くんが言ってた通り目立つかもしれない。あぁ、論理くん、私の息継ぎ、歌声、どう聞いてくれてるだろう。私は論理くんを想いながら、どのコンクールで歌うときよりも必死に歌った。やがて、あのサビの部分にやってくる。さぁ、行くぞー!吸うぞー!息続いてくれー!いい声出てくれー!私は、いつも以上に大きな口を開けて、目の前の論理くんを吸い込むくらい、体いっぱいに息を吸い込んだ。
「すはあああっ!ひーかりのこーえがそらーたーかーくきこーえるー」
よし!ちゃんと歌えた!息も続いた!この先も!息を全部吐き尽くしたので、苦しい。でも、がんばらなくちゃ!論理くんが聞いてくれてるから、がんばらなくちゃ!また私は、口を思い切り開いて、息を吸い込んだ。
「すはあああっ!きーみもほしーだよーみんなーみーんなー」
この場には、論理くんと私の二人しかいない。会場いっぱいのお客さんがいるわけでもない。私たちを厳しく審査する人たちがいるわけでもない。もっと酷いことを言えば、ここで私が少し手抜きをして歌っても、論理くんには多分わからないだろう。それなのに何故か私は、今まで経験してきたどのコンクールよりも、このとき必死に歌っていた。この歌が、私の論理くんへの想いなのかもしれない。そんなことを思いながら、私は歌って、最後のサビを三回リフレインするところまできた。
「すはああああっ!ひーかりのこーえがそらーたーかーくきこーえるー」
このときの私のブレスは、息がきつくなるリフレインの前なので、泣きじゃくるような音を立てて一層激しく吸ったものになる。そのとき、今までじっとしていた論理くんの体が、ピクピクと震えて、「あうっ…うっ…」という声が聞こえた気がした。どうしたのかと思ったけれど、私は歌に夢中だったからそのまま歌い続けた。三回目のサビで、いちばん息が苦しくなったから、また泣きじゃくると、また、論理くんがピクピク。そのピクピクは、歌が終わるまで続いた。
「論理くん、どうだったかな…」
歌が終わった。恐る恐る聞くと、論理くんは顔を上げた。真っ赤に上気して息を弾ませている。恍惚とした表情だ。
「池田さん…。俺、ここまで天に昇ったの初めてだよ、ありがとう」
私は、顔に花を咲かせた。
「よかったぁ!私、ちょっと緊張しちゃってうまく歌えたか不安だったけど、論理くんが喜んでくれたみたいでよかった!」
「必死に歌ってくれる池田さん、そのソプラノも、必死なブレスも、間奏のときの『くちゃっ』という音も、残らず聞いて、残らず満喫した」
「論理くん、恥ずかしいよ…。でも論理くん、終わりのほう様子がおかしかったけど、どうしたの?」
そう聞かれて論理くんは、それまで以上に赤い顔をして、股間に目を落としていたけれど、やがて、白状するような口調で言った。
「精液、出ちゃった。今俺のパンツの中、ねちょねちょ」
「えっ!」
論理くんが、私の歌で射精してくれた…!合唱コンクールで表彰されるときのスポットライトよりも輝かしい喜びが私を包んだ。合唱部の、優衣だって、部長さんだって、誰だって、自分の歌で射精してもらうことはできないだろう!
「嬉しい!」
「本当?俺、『射精なんてしてんじゃないよ』って怒られそうな気がしてた。自分を使って射精されるの、嫌がる子も多いから」
「怒るわけないよ、嬉しいよ」
「そっか。それならホッとした」
「ねぇねぇ、パンツの中見ていい?」
論理くんは、再び顔を赤らめたけれど、すぐに、ジーパンの半ズボンを下ろした。中の灰色のトランクスには、生々しい染みが手のひら大に広がっている。
「パンツ下ろすよ」
「うん…」
私は、ゆっくりとトランクスを下ろす。論理くんのちんこが見えてきて、あの愛おしい匂いも漂ってくる。全部下ろすと、白いのりのような精液が、ものの見事に広がる。その中に、論理くんの陰毛が一筋二筋泳いでいた。あぁ、これが、私の必死の歌とブレスと『くちゃっ』の産物なんだね。嬉しいよぉ…。
「私の歌が、論理くんの精液になったんだね…!」
「うん、そうだよ。最後のリフレインでグッときた」
「嬉しいよぉ!論理くん!」
私は思いきり、脱ぎかけている論理くんのトランクスの、精液が付いているところに顔を埋めて精液を舐めとった。
「いい匂いがするよぉ…おいしいよぉ…嬉しいよぉ…。論理くん…はぁ、はぁ…」
「えぇ…そんなのが…?でも、俺もすごく嬉しい」
私は、精液の中にあった、論理くんの隠毛を二本、もうベタベタになった私の鼻の下に貼り付けた。
「見て見て論理くん、鼻毛〜きゃははっ」
「池田さん、絶好調だね」
そう言って論理くんは、優しく笑ってくれた。顔を男の精液まみれにして、その精液に陰毛を貼り付けて、『鼻毛〜』だなんて、落ち着いて考えれば、私すごい子だなと思う。でも、このときの私の気持ちは真剣だったし、論理くんも、それを笑って受け止めてくれた。それが嬉しくて、私は、まだ温かみの残る論理くんの精液に顔を埋め続けた。
「そう言えば、池田さん。人間マイク以外にもやってほしいことがあるんだ」
「なにかな?」
論理くんは、何か熱いことを言うときの、例によって私を真正面から射抜くように見て、こう言った。
「池田さんがそこのステージに立って歌う。俺は、その池田さんを、後ろから抱きしめたりボタンとボタンの間に指を入れたり、いろんなことをして、『お触り』をする。こういうのはどうかな」
論理くんの世界にまた侵食される私である。
「えぇ、論理くん変態だよぉ…。そんなこともするの?論理くん、ほんと好きだねぇ」
論理くんの視線は、相変わらず。そしてこれも相変わらずの、「はああああっ」という深いブレス音と上がる肩。
「全ては、音楽の時間の池田さんへの憧れだよ。歌っている池田さんを見ながら、あのブレス音を聞きたいとか、膨らむお腹を触りたいとか、恋心を燃え盛らせながら思った。それを今、池田さんが叶えてくれている」
もう、論理くん…。いつもいつも、私を嬉しくさせる言葉を言ってくれる。
「論理くんが喜んでくれるからだよ。じゃあ、ここに立てばいい?」
「ありがとう」
論理くんは、さっきの人間マイクのときに勝るとも劣らない顔で喜びを表現した。
「じゃあ、入れるよ。『春に』でいい?」
「いいよ」
イントロが流れ出す。論理くんの腕が伸びてきて、私のお腹の横隔膜の部分を抱きしめた。私がどこでいちばん息を吸うか、論理くんは知り尽くしている。さぁ、論理くん、私を目一杯感じて!私は、思いきり息を吸い込んで、歌い出した。私のお腹が膨らむと、それに応えるように、論理くんの腕に力がこもる。
「すはああああっ!このきーもーちーはーなんーだろー」
このフレーズを歌うと息が苦しくなるので、最初のとき以上に、私は懸命に息継ぎをする。すると論理くんの腕がお腹から離れ、変わって論理くんは私の背中に耳を付けた。何をしているかわからなかったけれど、私は夢中になって歌った。論理くんは、そのまま三回私が息継ぎするまで、そこを離れなかった。
「すはああああっ!えだのさきのーふくらんだーしんめーがこころをつつくー」
今度は論理くんは、私の前に回って、さっきの人間マイクのように私の前に屈みこんで右耳を私の口に付けた。右腕が私の腰に回っている。論理くんは、私を抱きながら、しばらく私のソプラノと息継ぎをそうして聞いていた。
「すはあっ!あこがれだーそしていかりがーかくれているー」
論理くんはもう一度、私の背後に戻ってきた。すると、私の背中のボタンとボタンの間に指が二本入ってくる。その指は、私の背中の汗を軽く掻き取るように動き、かつ、私の背中の呼吸を確かめるように張り付いてくる。私、今、歌を歌っていて、汗をかいているのに、恥ずかしい…。
「すはああああっ!このきーもーちはなんーだろーこのきーもーちはなんーだろー」
次に論理くんは、私の肩に両手を置いた。そのまま腰を私のお尻の上辺りに擦り付けてくる。スカート越しに、論理くんの二十センチの固い感触が伝わってきて、私は歌いながら、おまんこが熱くなるのを感じた。やだよこんなところで感じたら…。私の呼吸が少し荒くなって、息継ぎをするときに、「ひぃっ」という音が混じるようになる。肩に置かれた論理くんの手に、力がこもった。そうか、そうさせることが狙いか。なかなかやるなぁ。論理くんも隅に置けぬわい。
「すひいいっ!あのそらのーあのあおにーてをーひたしたーい」
一層目立つようになった息継ぎで、私はさらに歌い続ける。すると、左の肩越しから、論理くんの顔が伸びてきて、あろうことか論理くんは、鼻先で私の吐息のにおいを嗅ごうとしている。さすがに恥ずかしい。私は首を右に少し傾けて、論理くんの『攻撃』から逃れようとした。でも論理くんは、右手で私の右頬を押さえて、首をもとへ戻してしまう。ほんとにもう…。並みのカップルなら、昨日のうんち事件から今までの間に、論理くんの変態が原因で、もう百回は別れているよね。私が寛大な性格であることに、論理くんはもっと感謝してほしいわ。
「こみあげるー」
私は、最後の息を吸い込んだ。論理くん、最後まで感じていてくれたかな。
「すはああああっ!このきーもーちはなんーだろー」
ピアノの後奏と共に、論理くんは私の背中にぴったり顔を付け、横隔膜の上で、両腕に力を込めた。
「………ありがとう。もう、パンツ、パリパリだよ。ありがとう、池田さん」
「感じてくれた?」
「もう、天にも昇るくらい。まさか、人間マイクも、お触りも、許してくれるとは思わなかった」
「許すだなんて、別に、当たり前のことをしただけだよ。ありがとう、論理くん」
私のその当たり前という言葉に、論理くんは一層顔を輝かせた。
「俺の意思をそこまで認めてくれたのは、池田さんだけだよ。ありがとう」
「こんなんでよければ。ねえ、論理くん、歌ってるとき、背中に耳当ててたでしょ?あれ、何してたの?」
「ああ、あれか」
論理くんはそう答えて、私の背後に回り、さっきと同じ位置に耳を付けて言った。
「ここね、池田さんが吸い込んだ空気の通り道の上だよ。池田さんがブレスすると、ごおっって音が聞こえる。たくさんの空気が一気に通っていく音だね。池田さんが吸い込む息の量によって、この音も変わってくる」
「そんな音がするんだ。でも肩越しに、私の息のにおいを嗅ごうとしたでしょ。あれ、恥ずかしいんだからね」
「あの匂いは嗅がなきゃ」
論理くんは、そう言って笑う。
「あれは、池田さんの、『ソプラノの匂い』だ。あの匂いがあるから、池田さんの美声がある。俺は、あれを嗅がずにはいられないよ」
「そんな、息のにおいなんて臭いよ。でも、そう言ってくれるの、嬉しい」
論理くんは、私のどんなところも愛してくれる。それが嬉しい。
「ありがとう。俺は、池田さんのことなら、なんだって感じたいし、なんだって詳しいんだ」
きゅん。天使の矢が心臓に刺さると、きっとこういう音がするんだね。
「ありがとう、嬉しい。論理くん、文香博士だね」
「これは名誉だな。なんでもこの文香博士に聞いてくれ。俺は、池田さん以上に、池田さんのことを、よく知っているから」
「じゃあ、文香博士、私の好きな食べ物はなんですか?」
私は、ニコニコしながら聞いた。
「知ってる。ハンバーグ」
「おお!正解!さっすが〜」
私は舞い上がって、その場でぴょんぴょんと跳ねていた。
「大当たりだろ。俺はなんでも知っている」
しばらく私たちは、じゃれ合いながら笑った。それも落ち着いたとき、論理くんは、また、例の目をして私にこう頼んできた。
「池田さん、今日の最後に、やってほしいことがあるんだけど」
「なぁに?」
「俺がさっきみたいに背後に回って、いつもみたいに愛してるよとか大好きだよとか言うから、それに応えてほしいんだ」
論理くんは、そう言って、私を後ろから抱きしめる。
「え?応えるって、いつもやってるけど、どういうこと?」
「愛してるよって言うとき、泣いてるときみたいな、『すはぁっ!』っていう音を立てて、思いっきり息を吸い込んで、言ってくれるかな」
論理くんはそう言った。いつの頃だったか、論理くんの前でそんな音を出して恥ずかしかったことがあったなぁ。
「あ、わ、わかった。じゃあ、やってみる」
「じゃあ、俺のほうからいくね。池田さぁぁぁん!」
私は、普通に息を吸うときに加えて、声が混ざるような感じで息を吸った。
「すはぁぁっっ!論理くぅぅぅん!」
「愛してるよぉぉぉっ!」
「すはぁぁっっ!愛してるよぉぉぉっ!」
「大好きだよぉぉぉっ!」
「すはぁぁっっ!大好きだよぉぉぉっ!」
「ずっと一緒だよぉぉぉっ!」
「すはぁぁっっ!ずっと一緒だよぉぉぉっ!」
論理くんは、私の背中にドサリともたれかかり、また私を背後から抱きしめてくれた。
「こんなんでいいの?」
「うん…最高だよ」
私は、論理くんの腕に両手を添えた。論理くんが喜んでくれると、私も嬉しい。きっと、これが幸せっていうものなんだね。私たちはしばらくの間、二人で温もりを分かち合っていた。
お夕飯は、私がカレーを論理くんに振舞ってあげることになったので、その材料を買って家に帰ってきた。今日も暑い一日だ。外も暑かったけれど、家の中も暑い。背中ボタンのブラウスが汗でベトベトだ。
「論理くん、カラオケ楽しかったね」
私は玄関のドアを閉めると、論理くんに笑いかけた。でも論理くんは笑ってはくれず、真顔で熱い視線を私に向けた。
「論理くん?」
その瞬間、論理くんは私を玄関のドアに追い詰めた。論理くんとドアに挟まれて、私は身動きが取れない。論理くんの顔が目の前にある。その口からは、荒い息が吐き出されていた。
「池田さん…。俺、早く池田さんの中に入れたい」
え?と思った刹那、論理くんは私にキスをした。舌が入ってくる。いつもとは違う乱暴な動きで、私の口内を乱れる。どうしちゃったんだろう、論理くん…。でも、気持ちいい…。そう思いながら、私も、論理くんに合わせるかのように、舌に絡みついた。
「んっ…んんっ…」
くちゃくちゃという卑猥なリップ音が玄関に響く。
「池田さん、後ろ向いて」
長いキスを終えると、論理くんはそう言った。私は後ろを向く。論理くんは、私のうなじにチュッとキスをすると、ブラウスの背中ボタンの、ボタンとボタンの間に指を入れ、私の背中に触った。
「池田さん、こんなに汗かいてる…」
論理くんは、私の背中を官能的に触ったあと、
「ん、しょっぱい」
と言った。どうやら、論理くんの指についた私の汗を舐め取ったらしい。
「やだ、論理くん、そんなの舐めないで…」
「いいじゃん、池田さんから出たものだもの。愛おしいよ」
「もう、論理くん、いつもいつもそんなこと言って。ありがと」
背中のボタンが外される感触。一つ一つ丁寧に、でもどこか自分で自分を急かしているような様子で外していく。ブラジャーのホックも外され、私は上半身裸になった。
「池田さん、下も脱いで」
私は、論理くんに向き直り、スカートを脱いでいく。論理くんも自分の服を脱ぎ始め、あっという間に全裸になった。二十センチのちんこがそそり立っていて、先端は濡れてテカっている。私も、ショーツを脱いで全裸になった。
「ねぇ、論理くん…。こんなところでセックスするの?ここ、玄関だよ」
論理くんは、ふぅ、と息を吐くと、私を玄関マットの上に押し倒した。
「俺をこんなにしたのは池田さんなんだから」
論理くんは、獲物を捉えた鷹のような目をしてそう言うと、私の股をグッと開かせ、おまんこに舌を這わせた。
「あっ、ああん、ああっ、あっ」
汗もたくさんかいたし、絶対臭ってるだろうけど、論理くんにおまんこ舐められると気持ちいい…。私は、論理くんに舐められるがままになっていて、その度に喘ぎ声を発していた。
「池田さん、次はどうしてほしい?」
論理くんはわたしのおまんこを舐め終わると、そんなことを言ってきた。
「えぇぇ…どうしてほしいって…」
指を入れてほしい…。昨日、すごく気持ちよかったし…でも、そんなこと恥ずかしくて言えないよ…変態みたいじゃん…。
「さぁ、言って。言わなきゃわからないよ」
論理くんは、クリトリスを触りながら、私を急かす。
「あぁっ!言えないよぉ、論理くん…」
「言いなさい」
論理くんのその言葉に私の体が反応した。火照って熱い。私、命令形に弱いのかな…。
「あぅ…指…を…入れてほしい…です…」
恥ずかしい!けれど、そんな恥ずかしさが快感となって、また全身を熱くさせた。
「よろしい」
論理くんは満足げにそう言うと、溢れそうなくらい濡れに濡れきった膣に指を入れ、動かし始めた。
「あぁっ!ああんっ!あぁんっ!ああっ!」
昨日よりも速いスピードで、論理くんの指が膣の中を動く。また、熱い潮が吹き出すのを感じる。気持ちいいよぅ…!まるで、快楽の空を飛んでいるような気分だった。論理くん、論理くん、論理くん!
「池田さん!」
論理くんは指を動かしながら言う。
「ああんっ!ろんりっくんんんっ!」
「愛してるよ!」
動かすスピードが速くなる。
「あぁっ!あいしてるよぉぉっ!」
「大好きだよ!」
速くなる。
「だいすきっだよぉぉっ!ああぁっ!」
「ずっと一緒だよ!」
速くなる…!
「ずっっといっしょだよぉぉぉっ!ああああぁぁぁぁん‼︎」
快楽の空に稲妻が落ちた。私は思い切り体を乱れさせ、果てた。
「池田さん、今度は俺のを舐めてほしいんだ」
まだ呼吸が乱れている私の身体を無理矢理起こさせた論理くんはそう言って、はち切れんばかりのちんこを私の顔の前に出した。ちんこからは、論理くんの香ばしくも愛おしい匂いが漂い、私を酔わせた。
「うん、わかった」
私は、匂いに誘われるかのように、論理くんのちんこの先端をペロリと舐めた。しょっぱい。
「ううっ」
論理くんが喘ぐ。論理くん、気持ちいいのかな。ペロペロと先端を舐めるたび、論理くんは喘ぎ声を発していた。それがとても嬉しくて、私は、もっと論理くんが気持ちよくなってくれるように一生懸命に舐めた。ちんこの先だけでなく、側面や、飴を舐めるときのようにちんこを口に含んで舐めたりした。大きかったから顎が痛くなって舐めにくかったけれど、論理くんが喜んでくれるなら…!と思ったのと、舐める度に私のおまんこがじんじんと熱くなっていくのを感じたため、一心不乱に舐めた。
「ううぅっ!あふぅっ!あふっ!…い、池田さん、もういいよ」
論理くんは、ちんこを私の口から離した。
「じゃあ池田さん、こっちにお尻を向けて四つん這いになって」
四つん這い?私は少し恥ずかしかったけれど、論理くんの言う通りに四つん這いになった。するとすぐさま論理くんは、鞄からコンドームを出してちんこに付けると、私の膣の中に入れた。
「ううっ!あああぁっ!」
「ううっ!あふぅぅっ!」
論理くんは腰を動かし始める。また私は快楽の空を飛び始める。今度は論理くんも一緒に。玄関でセックスするなんて…燃える…。でももし外に聞こえてたらどうしよう…。まぁいいか…そのときはそのときだよね…。気持ちいいよぅ、論理くん…!と、私のお尻に何か入ってくるのを感じる。これは、論理くんの、指?え!論理くん、やだっ!
「あうっ!論理くん!痛いよぉ!」
「池田さん!あふっ!こっちも気持ちいいはずだろ!」
論理くんは、お尻に入れた指を出し入れし始める。やだ、またうんち付いちゃうよ…!痛い…!でも、私、今、論理くんのちんこで膣を犯され、論理くんの指でお尻の穴を犯されてる…!ああああぁぁぁん‼︎私、こんな子じゃなかったのに!感じちゃうよぉっ!
「いけださぁぁぁぁん‼︎うっううぅぅぅっ‼︎」
「ああぁぁぁっ‼︎ろんりくんんんんんっっ‼︎」
論理くんは大量の汗を流しながら私の中で果て、私も体を痙攣させながら果てた。
「はぁっ、はぁっ…はぁっ…池田さん…ありがとう…。最高だよ…!」
論理くんはそう言って、私の膣からちんこを、お尻から指を抜き取る。
「池田さん、見て」
私は、快感の余韻の中、論理くんのほうを見た。論理くんは、自分の指を私の眼前に出す。その指には茶色い物体が少し付いていて、嫌な臭いが私の鼻を貫いた。
「やっ!やだぁ!またうんち付いてるじゃん!」
私は、即座に顔を逸らす。やだ…恥ずかしいよぉ…。でも、論理くん、また、それ、舐めてくれるかな…。
「ねぇ、池田さん、これ、どうする?舐めてほしい?」
論理くんは、私の心の中を読み取ったかのように聞いてきた。
「うっ…嫌っ!舐めないで!」
私は、思ってることと反対のことを言ってしまう。だって、舐めてほしいなんて、絶対言えないよ!すると、論理くんは、意地悪そうにニヤァと笑った。
「本当に?池田さん、本当のことを言ってよ。本当は舐めてもらいたいんだろ?」
「そんなこと思ってないよ!だって汚いし…」
「じゃあ、しかたないから洗ってくるよ」
論理くんは、立ち上がった。え…洗ってきちゃうの…。
「いいんだね、池田さん。洗ってきちゃうよ」
「あぅ…うん…」
ああ、今、私、すごく残念そうな顔してるだろうな…。
「…池田さん、なにしてほしいか、俺に言いなさい」
論理くんは、優しく私に問いかける。もう、さっきから論理くん、意地悪なんだから…。でも、それが、好きだよぉ…。
「……舐めて欲しい…です…うぅ…」
あぁ!言ってしまった!ピリピリとした恥ずかしさが全身を刺す。
「ありがとう!池田さん!」
論理くんは、私のうんちが付いた指を、勢いよく自分の口に入れた。よく味わっている様子だった。私は、羞恥のウイルスに冒されて高熱が出てきそうだった。
「うん、いい味だ」
論理くんはようやく指を口から出すと、しみじみとそう言った。
「恥ずかしいよぉ…」
「池田さん、命令形に弱いんだね。かわいいよ」
論理くんは私の後ろに回り込み、強く私を抱きしめた。玄関のドアの向こうは、もう薄暗くなっていた。外から、車が走っている音が聞こえる。私は、論理くんの腕に手を添えながら、論理くんと付き合えて本当によかったと、心から思った。
夕食のカレーは、がんばって作った。論理くんも、手伝うよと言ってくれたけれど、どうしても私一人で作ってあげたいからと言って断った。論理くんは、居間のテレビでナイターを見ながら、私の料理を待っていてくれた──はずだった。
「池田さん」
野菜を炒めているときに、不意にうなじに熱い息を感じて、私はびっくりした。そして私に隙を与えず、あの両腕が例によって私の横隔膜を抱きしめる。
「さっきと同じようにね。池田さぁぁぁん!」
「すはぁぁっっ!論理くぅぅぅん!」
「愛してるよぉぉぉっ!」
「すはぁぁっっ!愛してるよぉぉぉっ!」
「大好きだよぉぉぉっ!」
「すはぁぁっっ!大好きだよぉぉぉっ!」
「ずっと一緒だよぉぉぉっ!」
「すはぁぁっっ!ずっと一緒だよぉぉぉっ!」
論理くんのちんこが、一段と固くなるのを、私はスカート越しに感じた。
「ほんとに手伝わなくていいの?」
「うん。論理くんに私の手料理食べてもらいたいから」
論理くんったら、私の知らない間に後ろまで迫ってきて、ほんとに油断も隙もないんだから。でも、嬉しいな。論理くんに後ろから抱っこされると、温かい気持ちになる。私は、右手で野菜を炒め、左手を論理くんの腕に添えた。論理くんのために、世界でいちばん愛情のこもったカレーを作ってあげようと、心底思った。カレーをコトコトとじっくり煮込んで、その分論理くんには待っていてもらったけれど、仕上がりは上出来だった。論理くんはすごく喜んでくれて、三杯もお代わりしてくれた。それがすごく嬉しかった。私たちの幸せなときが流れる。食後、私たちは二人で後片付けをして、お風呂に入った。お風呂から出たあとは、夜の十時頃に二人で私のベッドに入っておしゃべりをした。このとき、二人で抱き合うことを、『だっこっこ』と呼ぶようになった。程なく眠くなってきて、私は昨日と同じように、論理くんとだっこっこをして眠っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます