第2話 「ゴトス」の思い出
数年前、僕は、「ゴトス」で、好物のマルゲリータピザを食べた後、レジで、ウエイトレスさんに聞いた。
「この店のマスターは、本場イタリアで修業を積んだのですか?」
「それは分からないわ。」
彼女は、笑顔で応えた。マスターとの出逢いは、どうだったのだろう。ウエイトレスに、マスターとのなれそめは言いたくないような芯の強さが、僕には感じられた。
実は、この店は20年前のM市のアーケード街の一角に小さな店舗で営んでいたことを、僕は知っていた。僕が、M市に住んでいたころ、よく妻と一緒に食べに来ていたのである。その話を、僕は、ウエイトレスさんに話すと、
「確かに、M市でやっていたわね。それからK町に行って、ここに来たの。古物件を改装したわ。駐車場も作って。でも、まだ借金があるの。」
「僕は、M市に住んでいた時、当時の妻とは、この店のファンだったのです。僕たちは、別れてしまいましたが、今だに、夫婦で営んでいるこの店は素晴らしいと思います。」
ウエイトレスさんは、照れくさそうな笑顔を浮かべた。
「ごちそうさまでした。」
「いつも、ありがとうございます。」
僕が、帰っていく後ろ姿を、彼女は、見送った。
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