夫婦経営レストラン「ゴトス」

トシキマイノリティーライター

第1話 2024年10月の心地よい日曜日

旦那はイタリアン料理のシェフで、毎日、厨房で料理を作る。妻は、お客さんを笑顔で迎えて、オーダーを取り、背筋をピンと伸ばして、料理を運ぶ。その夫婦の経営するイタリアンレストランの名は「ゴトス」と言った。そんな洒落たレストランが、田畑の広がる田舎町に、ポツンと一軒営業していた。玄関のわきには、菩提樹の樹が植えられていて、葉を茂らせている。煉瓦で囲った花壇には、赤や黄色や薄紫のパンジーやシクラメンが植えられている。入り口の前に、コーヒーの粉の入ったステンレス製の灰皿が置いてある。ガラス張りの外装で、外からは中で、楽しそうに食事する子供を連れた家族、若いカップル、おばさんたちの食事する姿が見ることができた。遠方からも、わざわざこのレストランに車でやって来るお客さんでも、賑わっていた。


時代は令和。この日はこの国の第50回衆議院選挙が行われる。投票日である今日、日曜日、僕は、投票の帰りにレストラン「ゴトス」に、久しぶりに行くことを考えた。暫く、「ゴトス」に行っていない。以前は、毎週日曜日になると、オシャレであたたかいアットホームな風情を漂わせたこのレストランに、一人で来ては、ランチを楽しんでいた。

僕は、ホームのキッチンで、新聞の「令和衆議院選」の記事を読むと、畳んでテーブルに置き、コーヒーを飲む。

「マスターや、ウエイトレスさんは元気かな。」

僕は、「ゴトス」を、思う。

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