第4話 開会宣言

2人は3年生の教室へ行くことにした。今日は僕も鈴本も先輩たちに会っておらず、何組かは知らなかったので、適当に歩いて探していた。少し歩いたところで、

「あっ、なおちゃん!」

「ん?おお、こーちゃんやないか」

どうやら、見つけたらしい。鈴本と松本先輩が抱き合いながら喜びを分かち合っていた。シーンはさながら、生き別れの兄弟の再開である。まぁ、一応いとこの関係だが、、、

僕はその2人の後方に艶間先輩がいるのに気付いた。向こうもこちらを認識したらしく、ギョッとしていた。

「艶間先輩、僕らも抱き合いましょーよ」

「なんで何もしてないのに、俺は罰ゲームを受けなくちゃいけないんだよ」

「罰ゲームじゃないですよーだ、先輩のかわいい後輩じゃないですか」

「お前はかわいくない。」

「もー、艶間先輩は素直じゃないなぁ」

艶間先輩に文字通りかわいくない返事がきた。僕は後ろで抱き合っていた鈴本たちをちょっとだけ羨ましいと思ってしまった。

「いいところに来たな、お前たち。」

声のした方向を見ると、教室の教卓に、今まで誰にも声をかけられていなかった小田先輩がいた。気のせいか、小田先輩の声は少し悲しそうだった。

「あ、小田先輩いたんですね」

「「「・・・」」」

鈴本よ、そのセリフは言ってはいかん、、、

どうやら、鈴本の放った言葉は、小田先輩にとどめを刺したらしい。小田先輩はその場でうずくまってしまい、教室には沈黙が立ち込めた。それを好機と思ったのか、

「おっ、小田の話は終わったらしいし帰るか」

「せやせや、ほなこーちゃん帰ろか」

「ちょっとまてぃ!」

小田先輩がものすごい勢いで走ってきて、艶間先輩と松本先輩の首をつかんだ。

「なんや、終わったんちゃうんか」

「作戦会議はこれからじゃい!」

そう言って松本先輩の頭をたたいた。”ポンッ”という間抜けな音がした。

「作戦会議ってなんのですか」

鈴本が質問すると

「うむ、では発表するぞ・・・」

小田先輩が妙に仰々しく溜める。僕は今すぐに教室から出ていったほうがいい気がしたが、遅かった。

「われわれは、これから生徒会戦に挑む!!」

と、声高らかに宣言するのであった。


「それで、副会長は艶間だ」

「キター、副会長ごっつあんです!」

どうやら艶間先輩は副会長が楽なポジションだと思ってるらしい。まぁ副会長といえば、僕も楽そうなイメージがあるのは否めないな。小田先輩が黒板に”副会長→艶間”と書いた。うちの学校では、生徒会執行部は生徒会長がすべて決められるらしい。役職のポストは「会長、副会長、風紀、書記、会計」の5つであり、会長以外のポストは2人まで決められるが、必ず1人はいなくてはいけないらしい。したがって、僕らは役職が被ることはない。

「あとは、書記は鈴本、会計は榊原、風紀は残念ながら松本にお願いしたい。」

「残念ながらってなんや、残念って」

松本先輩がかみつくと

「でも、なおちゃんに適任だと思うよ。それにほら、風紀は腕章つけられるしかっこいいじゃん!」

「まじか、ならええか」

意外と早く矛はしまわれた。単純なやつめ!

「小田ー?決めてくのはいいんだけどさ、教官たちからの推薦書はどうすんの?」

「そこなんだよなぁ」

艶間先輩の声に小田先輩が頭を抱える。

「なおちゃん、推薦書ってなに?」

「なんか、教官から”生徒会に推薦しますっ”ってのを証明してもらうもんや、知らんけど」

「もー、なおちゃんったら無責任ー」

そう言って、2人は「ハッハッハー」と、笑い合っている。

「今は、とりあえず多懸教官からは貰えてる。」

「でも、期限は来週の水曜までじゃん。」

僕は頭の中で推薦書をくれそうな教官を考えて、

大鳥おおとり教官に頼んでみましょうか?」

大鳥教官とは我らが魔法研究部の指導教官だ。

「うーん、一応お願いしてみてくれ。それでも、あと1人か。見つかるかな。まぁ、まだ期限まであるし、何とかなるでしょ」

「先行きが不安だなぁ」

艶間先輩がそう呟くのであった。


本日はここで一旦おひらきとなり、解散となった。僕と艶間先輩は大鳥教官に推薦書を頼みに、職員室へ向かった。艶間先輩は帰りたがっていたが、僕がずっと抱き着いていると折れた。職員室に入る前に、

「別に貰えなくてもいいからね、ていうか、貰えないほうがいいからね」

と言われたが、大鳥教官は意外にも二つ返事でOKしてくれた。さすが我らが大鳥教官である。僕が「ありがとうございます」と言って部屋を出ると、艶間先輩が廊下で「あと1人、、、あと1人、、、」

と念仏のように唱えていた。僕は、壊れてしまった艶間先輩を引きずりながら、帰路についた。

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教官とボク ~生徒会戦編~ 葛西落 @kamo84

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