第3話 部活見学

 「へぇ~、ここが魔法研究部デシかぁ~」

武器和田は部屋を見回して言った。

 今は始業式とホームルームが終わり放課後。僕は鈴本と「魔法研究部を見たい」という武器和田を連れて、魔法研究部の部室に来ていた。ホームルームのあとも鈴本はずっと「やりたくない」と駄々をこねていたので、”3年生の学年集会が終わるまで”という条件で武器和田に部活紹介をしていた。

 この春卒業していった先代の八十やそ先輩と渡辺わたべ先輩がいないからか、部室はなんだか閑散としていた。

「榊󠄀原くん、もう友達ができたのかい?」

鈴本がおどろおどろしく尋ねた。

「いや、ただ隣が席になっただけだよ。でも、自己紹介の時に魔法研究部のことを話したら、興味が出たみたいで」

「なーんだw」

なんだこいつ。

 武器和田は部室の中を歩き回っていた。棚の中や、壁に貼ってあるポスターとかも嬉々として見ていた。やがて、武器和田は水槽のカニを見て

「このカニかわいいデシね。魔法を使うと会話ができたりとかするんデシか?」

「いやぁー、まだそれは研究中かなー、、、」

まさか、このカニが人間になれて、先代の先輩は魔法を使わなくともしゃべれますとは言えないので、僕ははにかんでそう言った。

「えぇ!さすがデシ!その魔法ができたらぼくにもやらせてほしいデシ!」

武器和田が机に手をついて身を乗り出してきた。その衝撃で机のうえにあったペンが落ちてしまい、「あわわ、、、」と焦って拾っていた。

「武器和田君はおっちょこちょいだねぇ」

「別にそんなにあせらなくても」

「えへへ」

鈴本は窓の外を見て、

「おっ、雨がやんだみたいだぞ」

とほぼ「帰りたい」と同義のことを言った。外からは、ぽつぽつと生徒たちの声がが聞こえる。どうやら、3年生の集会は終わったらしい。僕も早く帰りたかった。

武器和田はそんな気持ちを察したらしい。

「それなら今日は見学終了にして帰るデシ。次は間近で魔法を見たいデシね。またいつか呼んでほしいデシ!」

「そうだね」


 僕らは下駄箱に向かった。「教室に忘れものをした」という武器和田とは途中で別れた。僕は鈴本と一緒に校門の近くで艶間先輩たちを待っていた。朝からの雨はどこかへ流れ、空は青々と澄んでいて。グラウンドには、雨雲が残していった水たまりをスポンジで抜いているサッカー部の姿が見えた。

「先輩たちもうそろそろくるかなぁ」

「そうだねぇ、おそいねぇ」

僕は鈴本のの声につぶやいた。

しかし、5分10分経っても先輩たちは来なかった。春とはいってもまだ4月初頭であり、幾許か寒さが残っていた。僕は

「どうする?ちょっと先輩たち探しに行く?」

と提案すると、

「うん、そうしよう」

鈴本はそう返事をした。こうして、僕らは再び校舎へと向かった。

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