第7話
────────────とあるマンションの一室。真っ暗な部屋の中、灯りはスマホの画面だけ。
「……」
「……」
込み上げてくる衝動と、そのまま出る行動。
目の前には目に涙を溜めてすがる目で僕を見る女。感情なんてない。ただ、加虐する。ただ、それだけ。
行為はしない。僕が行為をするのは…したいのは…誰だったっけ…。
僕は女の顔に唾を吐きつけて、少しだけ頭を撫でてその場を後にした。
────────────とあるBAR。
無言でカウンター席に座るとママがウイスキーを出してくれた。
「ありがとう」と言うと、
「迷子?」と僕に聞く。
「飼い猫ばっか増やしてる感じ。極限まで追い込める奴が欲しいのに。」
「あんたの場合ちゃんと見極めないと。とんでもない所に行っちゃうからね。」
「……どう?今日寝てみる?」
「溜まってるの?」
「残念ながら誰とも『したい』って感じない。」
「繋がりがほしいのね。深いところでの」
この人は1話せば10分かる凄い人。
「純白がいい、誰にも染められてない奴。」
「私の事?」
「…真っ黒だ。漆黒。」
「どこが黒いって?」
「そんなこと言ってねーよ」
「そう?」
こんな冗談を言い合えるのも長年沢山話してきたから。多分どの女性よりこの人に一番色んな話をしてきた。
「……」
「死なないでよ。」
彼女がカウンターの中から出てきて後ろから僕を包み込んだ。
「蓮花…」
「ん?なに?」
「ほんとは溜まってる。」
「わかってる。」
彼女は椅子を回して向き合わさせると、僕の首を掴んだ…。
「…久しぶりね。」
「これだけでもいいよ。」
「触られないままも寂しいでしょ?」
「っあ…」
彼女に直接背中に指先を這わされたただけで、全身の力が抜けて彼女に身を預けてしまった…。
そんな僕を見て彼女が問う。
「答えなさい。あなたが本当に可愛がられたいのは誰?求めてるのは誰?」
「……言いたくない」
「私がこの仕事だから?…そうね。もし手元にあなたを戻せるなら私はこの仕事いつ辞めてもいい。あなたを安心させるためならなんでもできる、」
「そんな価値俺にない。」
「モノの価値なんて本人にしかわからない。」
「あぁっ、、、」
「そうでしょ?」
「もうダメ…」
「大丈夫。あなたの扱いなら私が一番慣れてるから。」
「おかしくなる…」
「大丈夫。全部ゆだねなさい?隅から隅まであなたを熟知してる。」
─────────「あぁっ!!……」
「あなたのその目が好きなの。あたしに溶けてるその目がね…。……あえて聞くけど、なんで他の子をちゃんと抱いてあげなかったの?」
僕は彼女の腕の中で小刻みに震えていた。
「蓮花だけ…」
「なにが?…」
「あっ…」
彼女に腕をつねられた。
「なにがあたしだけなの?」
「こうなっていいのは蓮花だけ…」
「……ほら、いきなさい。」
「っあぁ……」
耳元で囁かれただけで彼女に体を預けて果てた。
「他の人にあなたは扱えない。なぜならあなたは裏にも表にもなるの。それにあなたは1か100かしかない。それに対応できるのはあたししかいない。」
「はぁっ……」
囁きながら首に唇を這わされて溶け切っていた。
「あなたが欲しいのは『快楽』そのもの。光になろうが闇になろうがあなたは極限まで求める…。それに合わせられるのは何度も言うけど私だけ。」
そう言って彼女は僕の唇を強引に奪って彼女が満足行くまで僕を玩具にした。
───────────────翌朝。
「おはよ、」
彼女が腕の中にいた。
あまりにも彼女が可愛く見えてたまらなくなってしまった。
「おはよ。」
そう返して彼女を下にして両腕を押さえ付けた。
「たまんねーな。そそられる。」
「…たくましい」
「欲しいか?」
「いずれはね。でもそんな簡単に頂いてもつまらない。」
「…出来た女だ。」
「…でもそれ我慢できる?」
「焦らしてる。」
「暴発させないでよ」
「寸前…」
「勿体ないことしないで」
──────────────────。
彼女は僕を理解している。
手に取る様に扱える。
僕にマウントを取らせた様に見せかけて、
僕の被虐心を煽ってくる。
なんなら時には目だけで昇らせる事も。
───────────────。
「どうする?これから。」
「蓮花がいいなら。」
「ん?」
「…鍵かけていいよ?」
「かけていい?」
「かけてください…。蓮花しか使えないように…あぁ……やべぇ…気持ちいい…」
「これ好き……ほら…もっと来て……」
「蓮花…!!…爪…もっと爪…爪…」
─────────出なくなるまで愛して愛された。
「ダメね…あたしの方だわ。」
「なにが?」
「ずっとあなたに触れてたい。」
「ぁっ…」
「もっと聞かせて?…」
───────────────。
光と影 海星 @Kaisei123
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