【狂気ミステリーBL】15話【あらすじ動画あり】
◆お忙しい方のための冒頭動画はこちら↓
https://youtu.be/Kvxqco7GcPQ
「〝眠り男〟……?」
あの巨体は、間違いない。
〝眠り男〟は日中、ずっと寝ているため、まだ会ったことはないのだが、話に聞いていた通りの容貌をしていた。
天井につきそうなほどの長身。岩のようにがっしりとした肩幅と胸。それに反して、小づくりで小さくまとまった顔の造作。
(でも、どうして……?)
見ると、〇五号室の鉄格子は完全に開け放されていた。
あぁ、そうだ、と〝笑い犬〟との会話が甦ってくる。
夢遊病を患っている〝眠り男〟のために、彼の病室──〇五号室の鍵は夜だけは開けてあるのだった。
「夢は現、現は夢。夢の夢こそ現なり」
ブツブツと呟きが聞こえてきた。
私は気になってベッドを下り、鉄格子に近づいた。鉄格子に手をかけた時、ギシリと音がしてしまい、〝眠り男〟が廊下の中央でピタリと止まった。くるりと私の方を向き、じっと見下ろしてくる。
いや、見てはいない。実際には、その目は閉じられているのに、なぜか何もかも見通されている気分になった。
「夢は現、現は夢。生は死、死は生。破壊は救済、救済は破壊」
淡々とした〝眠り男〟の声が、廊下に響く。他の房の患者たちが起き出してくる気配はなかった。熟睡しているのか、もしくは彼らにとっては慣れた日常なのか。
暗闇の中、静かに立つ〝眠り男〟は、〝笑い犬〟が言っていたような木訥とした印象とは違い、まるで予言者のような、どこか浮き世離れしたような雰囲気をもっていた。
「常人は狂人。主人は奴隷。王様は愚者。人形は──」
「ちょっと待って。王様は、何だって……?」
言ってから、後悔した。夢遊病を起している人間は、身体は起きているが脳は眠っている状態だ。そんな相手に、質問などしても意味がない。
「王様は、愚者。まれにみる愚者」
予想外にも、〝眠り男〟は答えた。私は驚きつつも、さらに質問してみることにした。
「王様って、もしかして〇二号室の〝王様〟のことかい?」
こくりと、相手が頷く。私はさらに近づき、鉄格子をギュッと握りしめた。鉄格子はひんやりとして冷たいのに、私の掌はうっすらと汗をかいていた。
「教えて欲しいんだ。〝王様〟は一体、何者なんだ?」
〝眠り男〟は私をジッと見たあと、答えた。
「……〝王様〟は愚者。まれに見る愚者。彼は一人のためだけに、全てを捨てようとしている」
「一人? それは一体、誰?」
「〝人形〟」
「〝人形〟──って、私のこと?」
〝眠り男〟は首を振った。
「違う。〝人形〟は、もういない。〝王様〟の頭の中にしか」
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