【狂気ミステリーBL】14話【あらすじ動画あり】
◆お忙しい方のための冒頭動画はこちら↓
https://youtu.be/Kvxqco7GcPQ
〝笑い犬〟は、舞踏会で淑女をエスコートするように恭しく鉄格子を開いた。そして私が中に入ったのを確認し、鉄格子を閉めると、一言。
「次、他の患者と接する時は、私に声を掛けてからにして下さい」
「……? なぜ?」
「彼らは、貴方のことを良く思っていません。何かあってからでは遅いですから」
『無垢な顔をして人を貶める、とんでもない冷血漢』
〝長老〟の言葉が甦ってくる。ついで〝さかさま〟の言葉も。
「……以前の私は、そんなに嫌な奴だったのかな?」
〝笑い犬〟はわずかに躊躇う気色を見せ、頷いた。
「そうですね。貴方は感情が乏しいせいか、他人の気持ちにも疎かった。普通の人なら良心が咎めて出来ないような言葉や行動も、平気でしてしまう。そんなところがありました」
「……つまり、かなり嫌な奴、だったということだね」
自嘲の笑みがもれる。
今日は楽しく──とまではいかないが、それなりに和やかに過ごせたつもりだったのに、まさか〝さかさま〟も〝長老〟も内心では、そうではなかったなんて。
怖いな、と思った。
ここの患者たちは、表面に見せている顔と、裏にもっている顔がまるで違う。
むやみに彼らを信用したらいけないのかもしれない。
不安が顔に出ていたのだろうか、〝笑い犬〟が、わずかに口端を弛ませた。
「心配しないで下さい。これは、あくまでも昔の話。今の貴方なら、彼らもすぐ受け入れてくれるでしょう。このまま記憶が戻らなければ──いや、消してしまいさえすれば」
「……ずっと気になっていたんだけど、そんなに上手くいくものなのかな? 記憶を消すって」
「出来ます。〝先生〟ならば。彼は、この分野の最高権威ですから。明日から、さっそく記憶をコントロールする治療が始まります。心配することはない。〝先生〟に従ってさえいれば、何もかも上手くいきます」
〝笑い犬〟はそう言い切ると、「おやすみなさい」と残して棟から去って行った。
※
消灯時間を大分過ぎる頃になっても、中々眠れなかった。
グルグルと様々なことが頭をかけ巡り、かえって眼が冴えてしまう。
ベッドからのっそりと体を起こす。高窓からさす月の淡い光の中、ジッと耳を澄ます。
深夜。患者たちは誰もが眠りにつき、閉鎖病棟の中は静寂に包まれていた。
隣の部屋からも、何の物音もしない。あの日以来、〝王様〟は一度も保護房から帰ってきていないようだった。
正直、ホッとしていた。
私は怖かった。あの圧倒的なまでの存在感と暴力が。
だが同時に、気にもなっていた。
『記憶を取り戻せ』。
なぜ、彼はそんなことを言ったのだろうか。
(ダメだ……余計、混乱してきた……)
もう一度、ベッドに横たわる。白でも黒でもない、青白い月光色に染まった病室は普段よりも居心地良く感じた。
「……?」
病室の前で何かが動いた。上半身を起し、ジッと目を凝らすと、大きな人影が〇五室と〇一号室の間を行ったり来たりしているのが見えた。
(あれは……)
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