【狂気ミステリーBL】13話【あらすじ動画あり】
◆お忙しい方のための冒頭動画はこちら↓
https://youtu.be/Kvxqco7GcPQ
「アレって、まさかアレ!?」
〝さかさま〟がバンと勢い良く卓に手をつき、身を乗り出した。いくつかの牌が、盤上でぴょんと跳ね上がる。
「本当かよッ!? 〝王様〟はそれで平気なワケ!? 俺ヤだよッ。〝王様〟がまたアレにかけられるのなんて!」
「ふん。相変わらず、お前さんは〝王様〟びいきなのじゃのぅ」
ばらけてしまった牌を〝長老〟がイライラしながら戻した。
「当たり前だっつーの! だって〝王様〟は、ここでは一番まともなヤツだし」
「阿呆か。狂人の王と名付けたのは、一体どこのどいつじゃ? 相変わらず、さかさまな口じゃのぅ。イカレておるのか」
「はぁ? そんなの全員だろう?」
〝さかさま〟が一同を見回すと、しーんとその場が静まりかえった。
「──っと、リーチじゃ」
全員の隙を突いて、〝長老〟が点棒を置いた。「あっ、ずりぃ」と〝さかさま〟が身を乗り出す。
「じゃぁ、俺、ポン! ポン!」
「おいおい、勢いで鳴くな。そんなんじゃから、いつも揃わないんじゃ」
ブツブツと小言を言う〝長老〟の向かいで、私はそろそろと手を上げた。
「……えぇっと、私も鳴きたいんだけど……」
全員の視線が、一斉に私が開いた牌に向いた。
「これは何て鳴きかな? よくわからなくて……」
「「それは鳴きじゃない! ツモだっ!」」
〝さかさま〟と、〝長老〟が同時に叫んだ。
「ツモ?」
「ええいっ、アガリのことじゃ!」
〝長老〟は吼えると、私の自牌を見てぐぬぬと唸った。
「断(タン)ヤオ、一盃口(イーペーコー)、ドラドラ」
「……それは、どれくらいのもの?」
「簡単に言えば──」
〝長老〟は、クッと悔しそうに声をひそめた。
「現時点で、お前さんが一位だ」
言うなり、〝長老〟が頭を抱えた。
「まったく油断したっ! 初めてじゃというから、手加減してやっていたのに! これだから嫌なんじゃ! 昔からお前さんは、何にも考えていないような無垢な顔をして人を貶める、とんでもない冷血漢なんじゃ!」
あまりの言いように戸惑っていると、
「気にすんなよ」
と、〝さかさま〟がポンッと肩を叩いてきた。
「〝長老〟は賭け事になると、神経がオカシくなるんだ。そうゆう依存症なんだな。でも言ってること自体は間違ってないぜ。俺も、お前にはさんざんひどい目にあったし……」
〝さかさま〟は、チッと舌打ちをすると不機嫌そうに黙り込んでしまった。
これでは慰められているのか、責められているのか、よくわからない。
「クソッ! IQが何だ!」
〝長老〟が卓を叩き、こちらを指さしてくる。
「まだ一荘ある! 次こそは、絶対に勝ってやるからのぅっ!」
それから数時間、その場にいた全員が〝長老〟のお許しが出るまで、席を離れることはできなかった。
「アレとは、何だい?」
広間から部屋に戻る途中、前を歩く〝笑い犬〟に聞いてみた。閉鎖病棟のモルタルの床に、二人分の足音が響き渡る。
「アレ、ですか?」
「そう。さっき、みんなが言っていた」
「あぁ」
と〝笑い犬〟は宙を見やったあと、首を振った。
「貴方は知らなくていいことです。それに私自身、まだまだ未熟者で、あの治療法についてはよく知らないので。さぁ、どうぞ」
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