【狂気ミステリーBL】5話【あらすじ動画あり】
◆お忙しい方のための冒頭動画はこちら↓
https://youtu.be/Kvxqco7GcPQ
「ここには、一体どうゆう人たちがいるんだい?」
〝笑い犬〟が、向かいの部屋を指さした。
「貴方の部屋の向かい——〇五号室の住人は、〝眠り男〟と呼ばれています。彼は重度の睡眠障害を患っていて、名前の通りいつも寝ています。時々、夢遊病で夜に棟内を歩き回ることがありますが、構わないで下さい。歩き回るだけで害はないですし、いつの間にか帰ってきますから。逆に夢遊病をおこしている時に閉じ込めてしまうと暴れるので、夜だけは鍵を開けてあります。普段は、木訥で大人しい青年なんですけどね」
次に〝笑い犬〟は、〇六号室を指さした。
「ここの住人は〝さかさま〟といって——」
その時、二重扉の方から、ヒャハハと甲高い声が聞こえてきた。
診察帰りなのだろうか、手錠をはめたのっぽの男が、あっちへフラフラこっちへフラフラと歩いてくる。ついていく看護師も必死そうだった。
「丁度いい。あれが〝さかさま〟です」
後ろから、〝笑い犬〟が耳打ちしてきた。
「アレッ!? 何だ〝人形〟じゃんかよォ〜久しぶりだなッ!」
〝さかさま〟と呼ばれた男が、私の存在に気づき、やってきた。馴れ馴れしい態度で、身を乗り出してくる。
「なぁなぁ、記憶をなくしたってホント? 俺のことは覚えているぅ?」
「……いや、すまないが」
「ウッソだろうぅ! あんなに仲良かったのにぃ!? ひど~いっ!」
〝さかさま〟は、おいおいと泣き出した。だが、その口元は楽しげにニヤニヤと笑っている。
「……私は、君と仲が良かったの?」
「は?」
急に〝さかさま〟の声が低くなった。顔にも暗い影がさす。
「そんな訳ないだろう? 誰がそんなこと言ったんだよ? 俺とお前が仲良い訳ないじゃん。だってお前は——」
〝さかさま〟は、途中で何かを思い出したのか、再び陽気な態度に戻る。
「そっかぁ! 今日、〝王様〟が暴れたのって、お前が戻ったからかぁっ! ん? いや、違うな。〝王様〟はいっつも暴れてるんだったっ! ヒャハハハッ!」
腹を抱えて笑い出す〝さかさま〟に、私は戸惑うしかなかった。
先ほどから相手は、「そうだ」と言ったり、「そうじゃない」と言ったり。一体、どっちが本当なのか。
だが、それよりも気になるのは——。
「〝王様〟って——」
「あれぇ、知らないのぉ? 〝王様〟は〝王様〟だよ。でも本当は、〝王様〟は〝王様〟じゃないんだぜぇ!」
……やはり、よくわからない。
その後も〝さかさま〟は意味不明なことをペチャクチャ喋り続け、一通り騒いで満足したのか、来たときと同じ唐突さで、自分の房へ戻っていってしまった。
「〝さかさま〟の話を真面目に聞かない方がいいですよ」
呆然とする私の車椅子を、〝笑い犬〟が押した。
「〝さかさま〟には虚言癖があり、何が本当で嘘かわからない。というより、全てが作り話なのかもしれない。躁鬱病も患っていて、躁状態の時はずっと喋っているくせに、鬱になると部屋に閉じこもって、時々、狂言自殺まで起こしたりする。その時はもう、スタッフ全員がかり出されての大騒ぎです。〝さかさま〟と呼ばれているのも、彼が毎日その日の気分でコロコロ性格が変わるからです」
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◆『ハッピー・ホーンテッド・マンション』(死神×人間BL)
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