【狂気ミステリーBL】4話【あらすじ動画あり】
◆お忙しい方のための冒頭動画はこちら↓
https://youtu.be/Kvxqco7GcPQ
「髪はどうしますか?」
シャツに手を通していた時、手伝ってくれていた〝笑い犬〟が聞いてきた。
「髪? あぁ——」
二ヶ月間眠りっぱなしだったので、私の髪は肩の辺りまで伸びていた。
「どうしたらいいのだろう?」
「そうですね。明日は、理容師が来る日です。必要ならば手配しておきますが」
「そう。じゃぁ、お願いしようかな」
「かしこまりました」
馬鹿に丁寧な口調だった。これでは患者と看護士というより、主人と付き人だ。
だが、〝笑い犬〟らしいといえば、らしかった。
短く切りつめられた髪。寸分なく整えられた服。勤勉そのものの顔つき。真面目な彼はきっと、他のどの患者に対しても、今のような態度で接しているのだろう。
「どうかな、変ではない?」
着替え終った私は、 〝笑い犬〟に聞いた。
開襟シャツと、ネルのズボン。今、着ているのは、患者全員に配られている服だ。きっと以前の私も着ていた——はずなのに、なぜか居心地の悪さを感じた。
「えぇ、お似合いです。貴方は、何を着ても綺麗だ」
〝笑い犬〟が熱っぽい息をもらした。意外な反応に戸惑っていると、
「……ッ!」
冷たいものが手首に触れた。見ると、〝笑い犬〟が、私の手首に手錠をかけていた。彼の瞳には先ほどよりもはっきりとした底暗い熱が浮き沈みしていた。
「すみません。外に出る時は、こうするのが規則なので」
そう言われては反論の余地がない。私は黙って、もう片方の手首にかかる手錠を見つめた。
その時、ふいに見てしまった。手錠の鍵がかかる瞬間、〝笑い犬〟の口元が一瞬、ひくりと引き攣り笑ったのを。
(……気のせいか)
出掛ける準備を整える 〝笑い犬〟の瞳には、熱の片鱗も見当たらなかった。私は、今見たことを忘れることにして、用意された車椅子に乗り込む。
寝たきりだった私の体は、自分では自由に動かせないくらい萎えていた。リハビリは午後から始まるらしいので、それまでは、これで院内を廻るしかない。
〝笑い男〟に車椅子を押してもらい、病室の外に出る。
モルタルの廊下の両側には、いくつも房が並んでいた。どれも似たり寄ったりの造りで、入り口には必ず鉄格子が嵌められている。廊下の先には、厳重な金属製の二重扉がそびえていた。
〝笑い犬〟が一度立ち止まり、色々と説明してくれる。
「この閉鎖病棟には、全部で六つの病室があります。貴方がいるのは出入り口から入って一番奥の左、〇一号室。右手奥が〇五号室となっています」
「へぇ。じゃぁ、〇四号室がないわけだ。何か意味があるのかい?」
〝笑い男〟が、感心したように頷いた。
「さすが、〝人形〟だ。以前の貴方も感情が乏しい代わり、知能数や判断能力はずば抜けて高かった。〝先生〟も、貴方には一目おいていたくらいだ」
〝笑い男〟は、思い出したように付け加えた。
「〇四号室がないのは、よくある迷信のためです。四(し)は死(し)に通じる。患者の中には、そういったことを異常に気にする者もいますから」
「ここには、一体どうゆう人たちがいるんだい?」
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