第13話 冒険者のランク
昨日あった領主への挨拶が終わらしたことで視察でやることがないらしく、フィリス様はいろいろな飲食店を回ったりとか、人気な武具店の剣や盾、露店に広げてあるものなどを買っていた。
飲食店や武具店を回るのはこの町での商品の質を知るという意味で視察といえるけど、麻の布を広げて商売している髪が薄くなってきてるおっさんから怪しげな人形を買っているのは、もうただの旅行だよな。
しっかりとした視察をやるんだとしたら、そういう道のプロとかもいないと無理だろうし、本格的なのはフィリス様のようなまだ十五になったばかりの少女に求められるとは思えないから、いいんだろうけど。
「本日は何のご要件でしょうか?ご依頼ですか?」
今日はフィリス様が魔物討伐するということで、自分とハロルドさんがついて行く形で冒険者ギルド来ていた。
ここに来るのは数か月ぶりだからか懐かしいという感情が湧き上がってくるが、それ以上に自分たちに冒険者たちの視線が集まって来ていることが凄く気になる。
覇気のないハロルドさんと駆け出しっぽい俺、そして容姿が重視される受付嬢よりも整った顔立ちをしている少女という、あまりにも釣り合いが取れてなくていまいちどういうつながりがあるのかよく分からない組み合わせだから、そりゃ注目されるわなとは思うけど。
「いえ、この依頼を受けたくて」
フィリス様は掲示板から取ってきた依頼書を受付カウンターに置いた。
受付の人はフィリス様と依頼書を三回ほど交互に見比べ、俺とハロルドさんを見た後にさらにフィリス様と依頼書を見比べて、そしてフィリス様に視線を戻した数秒後に依頼書を受け取る。
「ええっと、コボルトの討伐ですね。この依頼は上位種もいることが確認されているので、Dランク以上でないと受けられません。ですから、ギルドカードを提出してください」
フィリス様は胸元についているポケットに手を入れ、少し厚いカードを取り出し受付の人に手渡す。
「Dランク……。確かに条件は満たしていますね。ですが――」
「おい、あんた」
受付の人が何か言おうとしてたのを遮って、俺より少し年上っぽい男がこっちに声を掛けてきた。
……なんとなくだけど、面倒そうな予感がする。
「確かに適性ランクみたいだが、その依頼のコボルトってのは弓や剣、ときには魔法を使って連携してきて、指定されている等級以上に厄介な相手だ。しっかりとパーティーを組んだ方がいいぜ。……ですよね、セリーナさん」
「ええ、そうですね」
満面の笑みを浮かべて同意を求める冒険者に対して、受付の人は顔を引きつらせていた。
これから言おうとしていたことをわざわざ遮ってきて、どや顔で見られても、いやなんなんだよってなるよな、そりゃ。
「ですよね!……だから同じDランクであるこの俺が一緒について行ってやるぜ」
いらな!!
ついてこられても、変な先輩風を吹かせてうざいということは今のやり取りで分かりきってるし。
「いえ、必要ありませんよ。そちらにいるセオドアさんとハロルドさんは同じパーティメンバーなので」
あんまりついて来てほしくないなと思ってしまった冒険者はこちらを一瞥して――、
「あんな二人で大丈夫か?」
……悪気あるわけではなさそうだからこっちをけなしているわけじゃなく、本当にフィリス様のことを心配して言っているんだとは思うんだけどね。
「はい、とても頼りになるパーティーメンバーです」
フィリス様からしたら自分一人で魔物の討伐をやりたいだろうから、一緒にパーティーを組んでやるのは避けたいんだろう。
「いや、でもな~」
「おい、坊主。俺がCランクだから心配はいらない」
ハロルドさんはいつの間にか冒険者カードを取り出していたみたいで、納得いってなさそうな冒険者に見せつける。
この行動は仕事としてこれを追い払うためなのか、それともイラっとしたから見返してやりたいと思ったからなのか、それとも面倒な奴を追い払うためなのか。
なんとなくだけど、仕事であるということや私怨も入っているような気はするが、依頼について来てほしくないという方が比率として高そう。
「まじか?ならあんたは?」
「……Eランクです」
「ふーん」
「……自分は付き添いみたいな感じなので」
俺のせいで納得してくれないことになってしまう可能性もあるし、要求値に満たさないランクを言いづらかった。
なんか、へんな言い訳しちゃったし。
「それなら安心ですね。では、コボルトの討伐依頼を受理いたします」
「俺もついて行ってやる。もちろん報酬は、全部そっちにやるぜ」
こいつ、フィリス様とハロルドさんが遠巻きに――いや、わりとしっかり拒絶しているのは気づいてるのかな?
この人は報酬がネックだと思ったのかもしれないけど、そういうことじゃないんだよね。
報酬なしでもついて来てくれることを考えると、悪い人ではないんだろうけどさ。
「ディクソンさん、こちらの方々はランクの要求値をしっかりと満たしていますし、今回の依頼において最適なパーティー構成をしているのだと思います。しかし、ディクソンさんがいきなり加入して場合、もともと予定していた作戦や連携などが崩れてしまう可能性があります。そしてこの方々はそういったことを気にして、ディクソンさんには遠慮してもらいたいのだと思いますよ」
「……セリーナさんが言うなら」
うーんとうなり、納得いってなさそうにはしていたが頷いてくれた。
これがプロの受付嬢ってやつなのか。
いや、というよりも飼いならしている感じがするから調教師としてと言った方が適切な気もする。
この受付の人にそう伝えたら、なんとも言えない表情をしそうだけど。
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