第45話
最後の一体を二人で同時に斬った。
影は煙が立ち昇るように消えていった。
「やっと終わったのかな」
龍太郎が辺りを見回す。影は見当たらなかった。光のない真っ黒な町が静けさと共に広がっているだけだ。
「どうだろうな」
「楽朗」
「ん?」
楽朗は目を向ける。
「僕は死にたいなんて思ってないよ、生きたいよ」
龍太郎は真っ直ぐな目で言った。
「そうか」
「しにたくなったこともある」
「ああ」
「けどね、あの頃の楽朗を見てて思ったんだ」
龍太郎は手を握りしめた。
「精一杯生きたいって」
「じゃあ、そうしろ」
「ここに来たのは、きっと神様が僕に頑張ってほしいから、楽朗に会わせてくれたんだ」
「そんな神とか都合良くいると思うかあ?」
「こんな世界があるんだもん、きっといるよ」
「じゃあ、長く生きられなかった俺は神に見放されてたのかもな」
「かもね」
「いらねえよそんな神様、クソ食らえだ」
龍太郎は笑った。
「まあ、短くても悪くない人生だった。生まれて良かったと思ってる」
「そっか」
龍太郎は優しく微笑んだ。
「帰ったらしんどいんだろうなあ」
龍太郎はうずくまる。
「だろうな」
楽朗は歯を見せて笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます