第45話

 最後の一体を二人で同時に斬った。

 影は煙が立ち昇るように消えていった。

「やっと終わったのかな」

 龍太郎が辺りを見回す。影は見当たらなかった。光のない真っ黒な町が静けさと共に広がっているだけだ。

「どうだろうな」

「楽朗」

「ん?」

 楽朗は目を向ける。

「僕は死にたいなんて思ってないよ、生きたいよ」

 龍太郎は真っ直ぐな目で言った。

「そうか」

「しにたくなったこともある」

「ああ」

「けどね、あの頃の楽朗を見てて思ったんだ」

 龍太郎は手を握りしめた。

「精一杯生きたいって」

「じゃあ、そうしろ」

「ここに来たのは、きっと神様が僕に頑張ってほしいから、楽朗に会わせてくれたんだ」

「そんな神とか都合良くいると思うかあ?」

「こんな世界があるんだもん、きっといるよ」

「じゃあ、長く生きられなかった俺は神に見放されてたのかもな」

「かもね」

「いらねえよそんな神様、クソ食らえだ」

 龍太郎は笑った。

「まあ、短くても悪くない人生だった。生まれて良かったと思ってる」

「そっか」

 龍太郎は優しく微笑んだ。

「帰ったらしんどいんだろうなあ」

 龍太郎はうずくまる。

「だろうな」

 楽朗は歯を見せて笑った。

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