第44話

 また影を斬った。

 影を斬ると流れてくる感情に吐き気がした。

「大丈夫か?」

 楽朗が影を切り裂いてから龍太郎に話しかけてきた。

「平気だよ」

 湧くように出てくる影。

 龍太郎と楽朗は背中合わせになる。

「どんだけいんのこいつら?」

「わかんね」

「退屈しなくていいね」

 龍太郎はニヤリとした。

「飽きるッつーの」

 二人は同時に動いた。

 さすが双子と言うべきかピタリとした息だった。お互いの考えがわかっているかのような動きで影を寄せつけない。一方が斬ったあとで間髪を入れずにもう片方が別の影を斬る。次々と、斬って斬って斬りまくった。

「凄いよ楽朗、身体が二つあるみたいだ」

「二つもいらねえだろ」

「なんで?」

「一つでもろくに扱えてないのに、二つじゃ持て余すだろ」

「そうかなあ、僕は便利だと思うけど」

「動かねえ身体二つになってもしょうがねえだろ」

「それはそうだね」

 二人はまた背中を合わせた。

「なんでか楽朗と一緒だと動きがよくなる」

「相性が良いやつといると、この世界だとこうなる」

「じゃあ、僕達一番強くなれるじゃない? 同じ遺伝子を持った双子なんだもん」

「兄弟が相性いいかって言ったらそうでもないだろ」

「そうかなあ」

「まあお前となら強くなれるってのは確かだな」

「仲良しだったからね僕ら」

「そうだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る