第46話
「もっといたかったな」
遠くの方でゆらゆらと揺れる影が見えた。こちらに向かってきていた。
それを見て龍太郎は立ちあがる。
「あの影大きいね、ラスボス? あれ倒したら帰れるのかな」
「いや、あいつは不死身だ。戦ってもいいことないぞ」
「あは、楽しそうだね。不死身の敵を倒す」
「だから倒せないんだって」
龍太郎は一人で突っ走っていった。まるで新しいおもちゃにはしゃぐ子供のようだった。
楽朗は人の話を聞いていない双子の片割れにあきれる。
「あれとやんのかよ」
楽朗は息をはいたあと、龍太郎の背中を追った。
「君は楽しませてくれるのかなあ!」
龍太郎は嬉々とした声を発した。
影の腕と剣が衝突して激しい振動が腕に伝わってきた。
龍太郎はあまりの衝撃にのけぞった。身体に電流が走りぬける。
「うわ」
「下がれ!」
首根っこを捕まれて後ろにぐんと引っぱられた。
龍太郎のいた場所を黒い腕が草刈り鎌の如く通過。
目と鼻の先で風がブン! と鳴った。
あの場所にいたらどうなっていたであろうか考えたくもない。
龍太郎は生唾を飲み込む。
「普通の奴らの比じゃねぇぞ」
「早く言ってよ」
「来るぞ!」
突進してくる強大な影。
二人は左右に別れる。
影はすぐさま方向転換。足を踏ん張ったアスファルトがぐしゃりと沈む。
双子の片割れの方に向かっていった。
腕が龍太郎目がけて飛んでくる。
剣で受けるが腕が思いきり弾かれてしまう。
何度も受けきれるものではなかった。
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