第11話
楓は暗い階段を降りて、リビングまで来た。
父に電話をかけることにしたのである。
ぷーぷーぷー
110を押す。
これも繋がらない。
電話機が手から落ちた。床にぶつかる音がむなしく響いた。
誰も助けてくれない。
「もう、やだよおおお」
涙がとめどなく溢れた。電話機の前でしゃがみこみ、しばらく泣いていた。
どれくらい涙を流していただろうか、涙が涸れたのだろうか、考えが変わっていた。
泣いていても、なにも変わらない。
ポケットに入っていた玉がほのかに光っていた。
リュックに食べ物と水を詰める。冷蔵庫の食材を口にする。
「まず」
どれを食べても無味でパサパサした食感だった。とても食べられた物ではない。けれど、日持ちしそうな物は持っていくことにした。相変わらず、お腹は空いていないけれど、食べなければいけないと思った。こんなことなら普段からもっと食べておけばよかったと後悔した。
シャワーを浴びて、服を着替えた。昨日はそのまま寝てしまっていたから、やけにさっぱりした。
台所の包丁を手に取った。デッキブラシの先端を折ってロープで包丁をグルグル巻きに。槍にした。
「よし」
家からでた楓は物陰に隠れながら少年に会った所を目指して町を進んだ。
電柱の影に隠れる。
得体の知れない影がすぐ近くにいた。
楓は槍を握りしめながら影が通り過ぎるのを待っている。
「きたら、これで……」
影が今どこにいるのか確認した。
通り過ぎて影は向こうの方へ行くみたいだった。
そのまま楓は影を何体かやり過ごしていった。
とりあえず、昨日少し話した少年に会わなければならないと思った。この町の状況とか
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