第3話[10]〜[15]
[10]
受理年月日: 平成9年 5月8日
取り扱い警察署: 警視庁
行方不明者 氏名:鹿瀬 瑞希
生年月日: 昭和62年 3月5日 (10歳)
失踪当日の服装: 白のワンピース。髪を赤いリボンで結いていた。
受理年月日: 令和6年 5月1日
取り扱い警察署: 警視庁
行方不明者 氏名:岩田 綾人
生年月日: 平成16年 11月1日(20歳)
失踪当日の服装: 黒いtシャツと 黒いジャージ。
受理年月日: 令和6年 5月9日
取り扱い警察署: 警視庁
行方不明者 氏名:佐藤 純
生年月日: 平成15年 6月10日 (21歳)
身長: 170cm
職業: 建設業、失踪当日の服装も作業着出会った可能性が高い。
[12]
あれはなんだったのかなあ。
俺は当時、東京の白丸って駅から歩いて30分くらいのところに住んでて、バイト先が青梅の方で朝6時からだったから、毎日始発で出勤してた。
家出る時は朝4時とかだったよ。山んなかだから薄暗くて誰もいなくて。
当然、誰にも会わないし、あっても野生動物くらいだった。
家の近くに名前もない山がそこらじゅうにあるんだけど、ある日、通勤時だからやっぱり朝4時くらいに、頂上の道から白装束の集団が50人以上かな・・・?行列で降りてきたのを覚えてて、
そんなの過去にも未来にも人生で一度きりだったからはっきり覚えてるんだけど、
あんな時間に何してたんだろう?
[13]
「僕らのね。せいだけじゃないんだよね。
そりゃ僕らもその、何人か、やってしまった訳だけれども。
そんなことは僕らが子供の頃から日常茶飯事だったからね。東京のこの辺りでは。
戦争は終わったけど、僕らは当時、毎日が命懸けだった」
[14]
顔に降ってくる水滴の不快感さで目が覚めた。
そして目が覚めた場所が明らかに自分の部屋では無いことに違和感を覚えて起き上がる。
顔の近くにあった金網は見えているはずなのに反射的に起き上がってしまったたので、顔をぶつけてしまう。
改めて、ここはどこだ。寒い。冷たい。狭い。
手足は動かせないが首は動く。どうやら・・・コンクリートの桶の中で、雨晒しの状態で寝かされているらしい。
なぜこんなところにいるのだろう?記憶を辿っても何一つ身に覚えがない。
やがて、「外」から男の声で
「イタエサキ……イタエサキ……」と聞こえる。
「おおい!! 出してくれ!!!」
精一杯叫ぶと、声の主は近づいてきて、こちらを見下ろした。
「助けてくれ!!」
男は、雨の中ずぶ濡れの白装束を着て、黙ってこちらをみている。・・・顔に、なぜか見覚えがあるが、思い出せない。
縛られている手足を精一杯ばたつかせて助けを求めるが、男は黙ってこちらを見るだけ。
すると足に激痛を感じた。脳が、「激痛」と感じたそれは、「冷たさ」であることに気付いたのは、足元から流れてきた水が頭の先に向けて流れていってからだ。
「助けて!! 出してくれ!!!」
男は、ゆっくりと顔を金網に近づけて、言った。
顔中が皺だらけで感情が読めない。
「『道留め』はな、年に五人は潮渡りを『しぶくろさま』に送らなきゃならん。ここのところ水害が増えてるから、
今年はもっと送らないといけないかもしれない」
みちどめ?しおおくり?そんな言葉を聞きたいんじゃない!!ここから出してくれ!
そして白装束の男は去っていった。
その後、大勢の人が真上を通っていった。
何度も、何度も大声で助けを求めたが、誰一人、足元にいる自分に気づかずに通り過ぎていく。
足の感覚がなくなってきた。そして段々と水の勢いが増していき、水位が上がっていく。
……そういえばあの白装束のおっさん……一階のジジイじゃないか!?
なんで俺がこんな目に……なんで……誰か気づいて。ここから、出して。
[15]
沼炊き
儀式の前に「潮渡り」(いわゆる■■)に食べさせたと言われる肝汁のことを、一部ではこう呼ぶことがある。
使われる肝は膵臓であり、理由は、膵臓と「水道」の語感が似ているからであると、一説にはある。
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