第2話 [6]~[9]

[6]

1枚目の画像:笑顔の70代と思しき老人。男性の写真。


2枚目の画像:黒地に白く、「道」という字が書かれた写真。


3枚目の画像:鍋料理の写真。湯気がたっている。


4枚目の画像:白黒の写真。上半身裸で、褌を履いた男たちの集合写真。男たちの後ろには川が流れている。


5枚目の画像:場所は都内の都心部と思われる。その歩道側の側溝が撮影されている。


6枚目の画像:白い衣を身に纏った人々が、木製の棺を囲んでいる白黒写真


7枚目の画像:古地図。渋谷川、神田川、袋池 に赤い印がついている。


8枚目の画像:「とにかく怖いんです。助けてください。」から始まる、インターネット掲示板に投稿された文章の画像。



[7] 


怖いというか・・・俺の近所に住んでる変なおじいちゃんの話ね。

帰り道にあるアパートの一階に住んでるおじいちゃんなんだけど、そのおじいちゃん家、一階なのにカーテンとか付けてないから部屋の中が丸見えなんだよね。

それで、いつもおじいちゃん、部屋の中から外を見てて、俺が通ると笑って手を振ってくれるんだよ。

最初はキモ・・・って正直思っちゃったんだけど、なんだか出迎えてくれてるのかなと思って最近は可愛く思えちゃってさ。俺も挨拶を返すようになったんだよ。

変なのは、俺が酔っ払って終電逃しちゃった日。

仕方がないからタクシーで帰ったら、時間は深夜の3時になっちゃって、帰り道はどこの家も当然消えてて、「今日はあのおじいちゃんも流石にいないよな。」

と思ってたら、おじいちゃんの部屋だけ灯りがついてて、俺が通ったらおじいちゃん、まだ起きてて俺に手を振ってくれたの。

嬉しいというか、怖いというか・・・少し不気味だったかな。


[8]


新宿のとあるビル建設現場で働く若い作業員の佐藤は、ある日、職場の年輩の先輩から古い噂話を耳にした。

「お前、新宿には気をつけろよ。戦後からずっと怪異が絶えないんだ。」

新宿の怪異?聞いたことねえよ。地図にも載ってないような田舎の村じゃねえんだから。

冗談めかした先輩の言葉を気に留めなかった佐藤だが、その夜から奇妙な現象に悩まされ始めた。

毎晩帰宅途中の新宿駅西口の地下で、決まって「イタエサキ…イタエサキ…」と呟く年配の男を見かけるようになった。

男は湿った路地で白い布をまとい、何かに祈りを捧げているように見えた。

気味が悪いと思いつつも、なぜか目が離せない。

もっと気味が悪いのは、佐藤以外誰もそいつのことを気にも留めないで通り過ぎることだ。

見てみぬふりをしているのではない。見えてないように見える。

スマホを見ながら歩いてる奴は、スマホを見ながらそいつをかわして歩いていた。


不気味に思いながらもそいつを通り過ぎると、今度は道脇にある側溝が気になった。

いつもは見えないはずの側溝が薄暗い光に照らされているように感じ、佐藤は吸い寄せられるように側溝を覗き込んだ。

その瞬間、何か冷たい手が彼の足を掴んだ気がして、慌てて振り払うと、側溝の中から無数の「顔」がこちらを覗き返していた。それぞれ目を瞑り、苦悶の表情を浮かべている。

「わあ!!!」と佐藤が大声で叫んでも、やはり誰も気にせず、まるで見えてないかのように通り過ぎていく。

男の呟く「イタエサキ」の声と共に、側溝の奥からは冷たい水がじわじわと溢れ出し、彼の周りに広がっていった。

それさえも誰も気にしない。水に濡れながら、水に浸かりながら、何事もないかのように。

「やめてくれえ!!!」

佐藤は叫ぶと、いつもの見慣れた新宿駅西口の光景に戻った。

佐藤は全身に汗をかいていた。


翌日、佐藤は作業中に、再び耳元で「イタエサキ…」という囁きを聞いた。耳を塞いでも消えないその声が、やがて自分の声で口から漏れていることに気づいた時、背筋に冷たい汗が流れた。

何度も「やめろ、やめろ」と呟きながら声を振り払おうとするも、声はやむことがなかった。

そのうち、ついに佐藤の口から大量の水が溢れ出した。顔面中の毛細血管を針で突き刺したような痛みが襲う。

やがて鼻、やがて耳、やがて目からも大量の水が溢れ出した。


その夜、佐藤は側溝の脇でひたすら「イタエサキ」と繰り返し呟きながら、地面に倒れ込んでいた。

誰も気にもとめない。佐藤をただ避けて、通り過ぎていく。

体は冷たく硬直し、周囲にはなぜか水の滴が広がっていた。

翌日、彼の姿は忽然と消え、路地の片隅には泥まみれの白布と乾いた紐のようなものが残されていた。


[9]


よっぴー様


ご質問いただいた件で、自分に心当たりがあります。

090 ■■■■ ■■■■ までご連絡ください。

菊池


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 凍狂う @SBTmoya

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