第3話 紅白?ケチャップとマヨネーズ。
服装といえば、今頃気付けば同じ学校の制服。
まだ、仲春だというのに夏服なのだが。半袖の白シャツに赤のリボン。黒い長めのスカート。白金の髪と海のような青い目。とはいえ同年代の制服姿という見慣れているもの。それでも、そのファーストコンタクトにまさしく新手の破壊兵器。その一種からの渾身の一撃、のような衝撃を俺は受ける。
なんとも…奇抜な目覚めだ。
うちの妹、案外あのテンションが平均なのか?
基本女子と話さない種の人間には分からない。別段、俺自身としてはコミュ障というわけでは無いが(と思っていたい俺なのだが)
ちと元気過ぎやしないか?
[パタン。]
俺は即座に部屋に入り、戸を閉める。さて、廊下には誰もいない。札と小銭と手持ちのスマホを床に落とす。あっ……ごめん遡。と心の中で謝る。取り敢えず、壊れてはいないみたいだ……
その少女の自己紹介に、俺はどうにかいつもの調子で言葉を返す。
「ふぅ、目ぇ覚めたんだな、よかった。元気そうで何よりだ。俺は別天裂斗。さっきは助けてくれてありがとうな。死ぬ所だったよ本当に……」
至って凡俗な一般回答に対して、なんとまあ凄いことに全く同じ答えが返ってくる。調子が変わる様子は一切、無く。いや、むしろ強く。珍しい人間も居たものだ。
「私の名はァッ! 悪夢の破壊者!
デストラクション・ナイトメア!
その名の通り、天使だ!!!」
風呂に入る前とは存在感が鬼と蝶の差!!存在すら消えそうな程に儚げで、疲れ果てていたような彼女が今となってはなんだろう……俺よりも遥かに元気みたいだ、レベルでいうと、カンスト?限界突破?上限解放?取り敢えず凄いな、回復力……だが、それで圧倒される俺ではない、この男、あの妹と暮らして14年。そう簡単に突っ込まないでいられるタチには育っちゃいない。ん、てんし?天津飯の聞き間違いか?ドラゴンボ⚪︎ルの?
「…自己紹介で止まるゲームのNPCかよ…
つか名前的に悪魔だろうがぁ!」
「なっ!!そんな心外なっ!
それをいうなら悪夢だろっ!
なんつって…
あれ?面白くないなしょうもなっ…」
正直言って、本当にただの悪夢みたいな光景だ
った。高校生二人が部屋で騒いでるって……しかも、狭い部屋で。
「まあ、元気だな。俺、買い物に
行くんだけどキミに聞きたい事もあるし、
目覚めたばかりで悪いが
付いて来てもらえるか?」
すると彼女は急にを赤らめて俯きがちにこう答える。
「うむ、わ、わかっ…た。ついてく」
えっ……さっきの威勢はどうした?ギャップなの?可愛いじゃん。
一旦服だけ取って廊下で部屋着から部屋着に着替える。玄関の扉に手を掛ける。思いとどまって背後に目を向ける。
「そういえばキミ、靴って…?」
「えっ?屋内だから履いてないケド」
それはそうなのだが、そうして俺は彼女の足を見る。きれーだな……
「そうだな、多分俺が運ぶ時に脱げたのかも」
「……すみません」
助けてもらった挙句靴を無くす始末。
「んーっと?くるしゅうない?」
今時聞かねえよ?それ…そして何故疑問形?
「大きめのサンダルならあるが…」
「うむ!ありがたく!」
彼女は迷う事なくそのサンダルを履いてこちら
を向く。おお……ぶっかぶか
[ガチャ。]
俺は、玄関の戸を開く。
「買い物?いつもありがとうね〜
いってらっしゃい。」
母さんがリビングから見送る。
6時半過ぎ、暗くなった空から赤い西陽が
二人の間に差し込む。一番星が白く煌めく。
つかドアの音聞こえてるって……さっきの会話
聞こえてたりするのか……?まあいいか、
「行ってきます!」
こんな具合で夕方の散歩もとい、おつかいに
俺達は出掛けた。
廊下を歩き始める。
あ、お隣さん。黒い縁の眼鏡のおにーさん。お世話になってるゲーム屋、
マンションを出て、暫く無言が続く。近所を声を一切、発する事なく歩く男女の組。俺もそんなに話すのは上手くないんだよな、
「あのー、ところでだけどもう一回名前、聞いても?」
「そうか、ならばッ!私は名はア!悪m…」
「よし、分かった。悪夢じゃないって分かった……分かりたくなかったけど…」
さっきまで儚げだった美少女が病に侵されて居るだなんて。
「?」
効果音としてはきょとん?だ…
「?じゃなくてだな……普通にキミ、何者なの⁉︎
あの大地といいバケモノといい」
彼女は首を傾げて
「分からない?うむ、分からない。」
彼女は自問自答する。
「そっかー分からないかー。じゃあさっきの事、覚えてる?あの意味分からん空間のこと、」
「分からない?うむ、分からない。」
再び彼女は自問自答する。
そうかー分からないかー。あれぇ……大丈夫かな?冗談みたいに一応聞いておこうか?
「もしかして、記憶そうしつ…だったり?」
「あっ、それだ!きっと私それだ!」
「そうかぁ困ったな……」
頭の中真っ白ってどんな感覚なのだろうか。
俺、別に頭ぶつけるような運び方、してないよな、きっと。名前(?)だけでも覚えていたことは幸いだが。
「まあ、きっと大丈夫さ、」
遠くを見てそれっぽく言ってみたが多分、普通に意味無い、だって記憶無くなっちゃってるんだもんな……自分の名前(?)だけは覚えていたみたいだが。
「ええ……何様目線?」
我ながらそうだよな、だから、自分自身思っている事をありのままに答える。
「数年後に開かれるであろう同窓会で一方的に覚えてる同級生から言われる、"どなた様?"だよ」
「それはそれは…御愁傷様で…」
憂いの目で見られた。
「だよなぁ…。あ、着いた。」
一言で言って何処にでもあるスーパーだ。まあ格安の個人スーパーということで家にある食料、日用品は大抵この店の物だ。本当にありがたい。
だが、しっかりと問題がある。
早速、「あ、こんちゃ…」
同じクラスのヤツがバイトしている。それだ。
「…………ども、(あっ、裂斗くん、さっきお
んぶしてた子と一緒だ……なんか雰囲気違うけど……ただならぬ関係なのかな、お似合い……白金色の髪染めてはないみたい……外人さん?可愛いな…うちの学校の制服だし、もしかしたら転校生?夏服だけど…かわいいな…可愛いな…かわいいな…可愛いな…可愛いな…
可愛いな…可愛いな…かわいいな…
かわいいな…可愛いな…可愛いな…
ふふふふふふふふ……)」
前の席の子。
前後ともに長い黒髪の子。
話した事未だ無いんだよな。
授業での強制会話の時間でさえ…つか、なんかめっちゃ笑顔で、ぶつぶつ言ってる⁉︎よし、行こう。ジャガイモと小麦粉とケチャップとマヨネーズを買いに行こう。ついでに、足の大きさ合うサンダルでも売ってるか見てみるか。
自動ドアを通り抜け、少し歩いた後、真顔でデストラクション・ナイトメア、彼女はこちらに顔を向けてテストの結果を告げるような(しかも赤点を取った時のような)そんな声で呟く。
「ねえ、記憶喪失って大分まずいヤツ?」
「そうだな、つか今頃気づいたのかよっ!?」
「うむっ!覚えている限りの事を話すと…
この少年、別天裂斗は何処ぞかで気絶していた
美少女(私)を自室に連れ込み、あんなことや
こんな事をして、その挙句私をポテトにして食
べようとしている……そして、その少年は現在
私に向かって
「さあてぇ、どんなポテトになりたいぃ?
ぐふぅへへへぇへぇ…」
と、マぁジでよろしくない表情で供述している模様。はぁ…貞操の危険と時間の香りしかしないな…今のうちに風呂に入ってる妹さんに助け求めておくか。やれやれ、これだから思春期は」
「黙って聞いてりゃ、ど・こ・の変態だよっ⁉︎」
「この薄暗いスーパーの中で
私の前に立っている少年。」
分かってたが……コイツ真顔だ、、
「俺だな……よし、サンダル買うのはやめよう」
いまいち、コイツのキャラが掴めねえ。
キャラというか性格というか。
買う物をカゴに入れ終わり、レジへ向かう。
「…………ども、」
なんでだろ、なんでこういう時って
気まずいって分かってる人が来るんだろう
運命って不思議だな…流石に挨拶は返す。
「あ、こんちゃ…」
「………れじぶくろ」
「あ、お願います…」
「………つり」
「…どうも」
「………さよなら(あぁ、ぁぁぁぁぁぁぁ かわいいいいいい!!!!!?!、、、!、
なんてことだ初めて見た瞬間は威力が強すぎて
直視してしまえば死ぬかと思ったけども、いざ勇気を振り絞って見てみれば目に優しいだなんてものじゃない…あぁ全てが浄化される…
ふぅ…この眼球は絶対に誰にも渡さない。)」
普通に買い物カバン忘れてた。
「っ⁉︎ああ、さよなら」
やはり、ただならぬ気配を纏う同級生。
イレギュラー以外はいつも通りに買い物を済ま
せて帰路に着く。なんだったんだろう。
あの、長い前髪から垣間見える凄い目は……
思ったたよりも暗くなったな。すっかり日も沈んで、夜、と呼べる時間帯に入った。一番星だけでなく、それ以外の星も空に浮かぶ。赤い星、火星だろうか?白い星々の中で一段と強く光る。
歩きながら横を見る。
「帰路、帰宅、家、…行く宛…無いな」
「うむ!察しがいいようで何よりだよ少年。」
白金の髪を月が照らす。
「さっきから少年て、
どう見ても同い年だろ」
「ある意味では、そうでもある」
快活な笑顔でそう言う。
「どの意味で、そうでは無くなるんだか」
すると、いわゆる、怪談を語る調子で、
「例えば今からバケモノに襲われたら?」と、
「これまた恐ろしい事を…」
数時間前にキミと一緒に体験したよ…
その事が記憶から消えてしまっている
ようだけど、
夜の住宅街。街灯が薄暗く光る。瞬いている。黒をベースの紅白の着物を着た少女。うちの妹の二個下くらいか?黒曜石のような色の長髪。
紫の帯が鈍く反射する。印象的な紅白が目に残る。
「あれ、和服。珍しいな」
思わず口が滑ってしまった……
「ん?お主、儂が見えておると?」
ん?気のせいか……最近の中学生怖いし少し距離取っておこう。危ない危ない余計に関わってメンタル削られるのは勘弁だ。ただでさえ待ちに待っていたゲーム買えずにバケモノに襲われて、記憶喪失の少女に出会ってそのうえ、怖い中学生に絡まれるのは御免だな。だって目ぇ、鋭いもん……街灯の下ゆえに光をギラン、と反射する。
──────────
中学生が現れた!
▶︎相手をする
逃げる
逃げる
逃げる
↓↓↓
相手をする
▶︎逃げる
▶︎逃げる
▶︎逃げる
目も当てられない男子高校生は
逃げた!
──────────
「ん?避けたな?お主、儂が見えておるな?」
そして、例の中学生が俺達の目の前に立ちはだかる。話し方……そういうお年頃?懐かしいな
どうやら、逃げきれなかったようだ。
「ゑ゛?………そういうパターンあるの?」
「そうか、そうなのか。
「どしたの急に、知り合いの子?」
「俺に可愛い知り合いがそう簡単に出来るとでも?」
目つきが鋭いとはいえ可愛いのは否定し難い……ロリコン?知らねーよ。
「私とか!?」
うわ、めっちゃ笑顔……まだ、知り合いレベルなのかな……
「………自覚あるのは結構だが自分で言うのは
やめとけよ?」
そして、再び立ち塞がる中学生を俺は受け流すように避ける。取り敢えずは距離を取る。
「おい、おのれ、やはり儂が見えとるんじゃなぁ!!返事くらいせんかい!!!こら!」
「はいっ!」
うん!やらかした!
つい威圧にやられた、見た目ロリなのに、
多分中学生くらいだし、妹と同じ感じで流せないかと、思ったのに、少し年下みたいだけど。
「なら、話が早い。」
ええ……何のお話?和菓子なら食べるけど?
そして、彼女は恐らく俺の人生初体験であろう
リアルの呪文詠唱を始める。
「から
「うたげ?…まじかよ…コレ…バトルパートっ
てこんな簡単に入るものなの⁉︎」
俺は遥か上を見上げてそう言った。そう、今、俺たちの目の前に立っているのは例の中学生なんかじゃない、誰がなんと言おうと、コレは、この乗り物は………およそ現代のレベルとは程遠い……
SFに出てくるような、ロボットだ、、、
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