第4詩 潟の王


  聞かれよ

  溟い水底におわす潟の王

  かつて潟はそなたのもの


  溢れし水を治むるなら 乙女の血を供えよ

  眠り饅頭を食わせ 生贄を潟に落とせば

  竜が喰わん

  さは いつよりか続くしきたり

 

  かの日 不遜にも生贄の乙女 一計を案ず

  毒の饅頭にそなた殺されし


  恨めしや

  生け贄の約定を破った人ども許すまじ

 

  いまこそ目にもの見せよ


  巨体を 鰭を 顎を 顕現せよ

  湖面を叩き 波濤を起こせ

  潟を溢れさせよ

 

  そなたの望む乙女の血は与えられた

  古の記憶を呼び覚ませ

  目覚めよ 潟の王

  クリダステス








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これは主人公の詩ではなく敵側の詩です。

敵の詩人はこの詩によって潟の怪物を召喚します。

かつて潟に棲み、生贄の乙女を喰らっていた魚竜です。

ちなみにクリダステスというのはモササウルス科の魚竜の一種です。化石は最大でも6メートル程度のものしか見つかっていませんが、小説では10メートル前後の大型の魚竜をイメージしています。

突然変異的に大きくなった、あるいは人を喰らい妖力を得て巨大化したという設定です。

いえ、ぶっちゃけモササウルスよりもクリダステスの方が言葉の響きがかっこよかったのでセレクトしたのです。


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