第30話 年頃になったなら慎みなさい
今日もまた誰か、
一体どういうことなのか僕にも分からないが、女性中心の社会であり、男女の比率がかなりか頼っている現代社会において、生で男性の股間を見る機会がないらしい。
そんなのはこちらとしては全く関係のない事なのだが、体育の授業はいつの間にか僕の身体をモデルとした保健体育へと変更された。全員が正座、または体育据わりで真剣に授業に打ち込んでいる。今までで一番の集中だ。
「つまり、男性はこの様に、陰茎と呼ばれる生殖器が備わっており、リラックスを伴った興奮状態によって、勃起させ固さと大きさを保ち、これらが我々の持つ女性器と交わる事で、生殖が可能になると云う訳だ――」
「――近代ではその殆どが人工授精である事に対し、この様な原始的性行為はその数を大きく減らしているため、最早ごく一部の環境でしか行われていない。まぁ、中には女性でありながらも、陰茎を選んで付ける存在もいるようだが……」
先生の話を真剣に聞いている者は本当に要るのだろうか、すべての注目は僕の股間へと注がれている様な気がする。今では宝剣も落ち着きを取り戻しているが、気分は大変よろしくない。
「先生! 勃起と云うのは、今以上に大きくなるのですか⁉」
「どうなの⁉ 愛美くん⁉ 私もそこのところ詳しく聴きたいわ! 後学として! そう! あくまで勉学の視点でね……!」
保険の先生は何度も眼鏡を正しているが、明らかに僕の股間に興味が向いている。
「えぇ、まだこの段階は半分にもなってません。最大値だと三倍程のなります」
『ざわ……! ざわ……!』
僕の答えで女子たちが騒がしくなった。
「是非、ここで見せてくれる⁉」
「全然嫌ですね……。これ僕が女性でも同じ扱いになるんですか? 普通に人権踏み躙られてませんかね?」
「愛美くん、あなたの男性としての人権は守るわ。だけどね……これは授業であり、教育として認められた範囲内のものなの! 恥かしいかもしれないけど、お願いするわ! 今この世界には、陰茎を直接、生で見る機会がある子はほとんどいないの! 今を逃せば、彼女達は一生勃起という現象を知らずに生きることになるわ!」
大義名分にしては内容が雑過ぎる。
僕の扱いは精々、珍しい動物の生態そのものであるというのが分かった。しかし、いきなり勃起させるというのもおかしな話だ。好きな女の子に見せるのも躊躇う事柄であるのに、不特定多数の女生徒に見せなければならないというのもおかしい。
「先生! アタシならしんちゃんを勃起させられます! 彼女ですので!」
あゆみちゃんである。これ程までに同じクラスである事を恨むタイミングは無い。その彼女の発言で辺りは更に騒がしくなり、あゆみちゃんが僕へ近づいてくる。
「そうなのね、恋人である御木本さんが相手であれば、愛美くんも
「はいっ♡」
『はいっ♡』ではなーい。僕は全然よろしくないのだが、丸出しの下半身にあゆみちゃんが近づく。僕の太ももに手を置き、ゆっくりと滑らせると、面白い様に血液が一点に集まる。それを見た女性とたちが手品を見ている様に湧き上がる。
『す、すごい! あの二人の関係はそこまで進んでいるの⁉』
『彼氏彼女ってそんな感じなんだ! なんだかお腹熱くなって来た……!』
宝剣は手を触れることなく血液を集め、徐々に天を穿つ。
「おっきくなったねぇ♡ みんなに見られて恥かしい……?」
恥かしいなんてもんじゃない。こんな環境ではいつフェロモンが暴発するかも分からない。ある程度はコントロールできると言え、まだ完璧じゃない。止めなくては。
「も、もうやめませんか……? これ以上は……!」
「御木本さん。そ、それで最大値なのですか?」
「まだだよねぇ? 一緒にお風呂入った時は、も~っとすごかったもんねぇ♡」
『きゃーっ♡ 御木本さんったら大胆っ♡』
『一緒にお風呂だなんて♡ 教科書でしか見たことないわっ♡』
この場において僕の味方は存在していないのか! 絶望的な状態からの公開処刑に僕の男としてのプライドは大きく傷ついている。あゆみちゃんの方を見ると、物凄く満足した顔をしている。まさか、この場でマウントを取りに来ていたのか⁉
「これで、しんちゃんはアタシの……! 誰にも渡さないんだから……!」
彼女は僕を独占したくて、この様な大胆な行動に出ていたのだ。他の女生徒に対する牽制とマウントである。きらら先輩の爆弾発言から、女生徒と接点を持つ機会が増えていたが、それに不満を持っての行動だろう。
「これ以上はぁ! いけませぇんっ!」
大きな声で叫んだのは、真っ赤な顔をした鬼怒川さんだった。
「皆さんは! 自分の興味の為に! 他人の意志を害しても良いと思うのですかぁっ! わたしも、最初は興味があったけど! 愛美くんはこんなにも悲しそうな顔をしていますぅ! これは人権侵害ですぅ!!」
『えっ……なんでそれで鬼怒ちゃんが怒るの? え? そういう感じ?』
『ざわ……! ざわ……! まさか、愛美くん、鬼怒川さんとも……?』
「理解してもらおうとは思いませんっ! でも、みなさん自分に置き換えて考えてください! 人と違う所は誰にだってあります! それを珍しがってみんなして囲んで、興味本位で、踏み込まれることは、とても! 怖い事ですぅ!」
「鬼怒川さん……!」
彼女は中学生の頃から、膝の件で同級生や周りに揶揄われたのだろう。症状をいちいち説明した所で医学知識のない外野は興味本位で近づいてくる。人と違うという事は、それだけ人の興味を惹くという事なのだ。
「分かってもらえないのなら……! わたしが! 愛美くんを守りますぅ!」
大きな体を広げ、僕の宝剣を隠そうとしてくれる鬼怒川さん。一生懸命なのがわかる。だけど、僕は半円の状態で囲まれている為、すべての方向から隠す事は物理的に不可能である。鬼怒川さんはまるでバスケットのディフェンスの様に、動いている。
「そうですぅ! 直接隠してしまえばいいんですぅ!」
彼女は僕のパンツとズボンを引き上げ、直接宝剣を隠そうと試みるも、既に三倍となっている為、上手いこと履き直す事が出来ないでいた。
「残りはぁ! わたしで隠しますぅ!」
何を思ったのか、はみ出ている部分を鬼怒川さんの柔らかボディ全てで隠そうとしたのか、僕の身体に直接抱き付いて来たのである。
「むごごっ……! 鬼怒川さん……! く、苦しい……!」
「わたしが! 愛美くんを守りますぅ……!」
「ちょ、鬼怒川さん……! もう隠れてるから! 大丈夫だから! しんちゃんを放して! こらっ! おっぱい押し付けるなぁ!」
はみ出した僕の宝剣は、鬼怒川さんの柔らかい全身を摩擦され、巨大なおっぱいに挟まれる事で柔らかなミルク石鹸の香りに包まれた。これはまずい……!
「ぎゃーっ! しんちゃ~ん! しっかりして~! 気絶しちゃってるぅ!」
「ま、愛美くん~! ご、ごめんなさぁ~い!」
僕の意識は大きな柔らかボディに包まれ、ゆっくりとブラックアウトしていく。
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