吸いたい
ヌアインの前でそわそわと佇むアイシャは、年若くも美しい、まるで妖精のような少女だった。雨に濡れたピンク色の髪がしっとりと肩にかかり、濡れたせいでほんのり暗い色合いを帯びている。それがかえって彼女の瞳の鮮やかな紅色を際立たせ、危ういほどに愛らしい姿を醸し出していた。
アイシャは、甘い香りを放つ彼の血に魅せられたように、じっとヌアインを見上げている。彼女は彼の問いに一瞬だけ戸惑ったものの、目を逸らすこともせず、じっとその瞳を見つめ続けていた。
「うん、雨は…好き。でも、あなたの血はもっと好きかも…」
大胆にもそんなことを言い放ったアイシャの唇には、柔らかな笑みが浮かび、その可愛らしさにヌアインもつい目を細めた。
「そうか…雨よりも、私の血が?」
彼が問いかけると、アイシャはこくりと小さくうなずき、気がつけばヌアインの近くまで距離を詰めていた。濡れたピンクの髪が揺れ、彼の手にそっと触れるような位置にまで来た彼女は、胸の中に秘めた渇望を隠せない様子だった。
「ほんのちょっとでいいの。あなたの血…味見させてくれないかな?」
可愛らしくも、どこか物欲しげな目つきでアイシャが言うと、ヌアインは困惑したように眉を寄せた。しかし、その瞳にはアイシャを拒むどころか、慈愛にも似た優しい光が灯っている。
「それは難しいかもしれないな、アイシャ。だが、君が望むなら…」
ヌアインはふわりと微笑むと、アイシャの髪に手を伸ばし、優しく撫でた。アイシャはその温もりに驚きつつも、つい目を閉じて身を委ねるようにしている。
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