第21話 夢はもう終わりだ!

 フィンくんは、ウサギくんのいるかがみなかうでれて、ウサギくんのにぎりしめていた。

いままで、できないっておもってた。でも、勇気ゆうきせばかがみなかにだってとどく」


 かがみめんをはさんでかいう、そっくりなかおをした二人ふたり

 ウサギくんはかがみうつったフィンくんの姿すがただったんだ!

「なっ!? おまえ! つかまえるのはコウモリだってっただろ! つよくなりたいんじゃないのかよ!?」

「ぼくはつよくなりたいんじゃない! ぼくは……キミにかえってきてほしかったんだ」

「は!? おまえおれしたんじゃないのかよ?」

「ちがうよ! ボクは勘違かんちがいをしていた。キミがていったのはボクに愛想あいそをつかせたんだ、っておもってた。でも、キミはボクのためにていったんだね」

 そういうと、フィンくんはかがみなかつよった。

交代こうたい――だよ! ウサギくん。キミののぞみはかがみそとること」

 ウサギくんがかがみなかからされ、それとわるようにフィンくんがかがみなかはいっていく。

「なっ!? なにするんだ!」

 今度こんどはウサギくんがフィンくんをす。

簡単かんたんなことだったんだ。キミはボクだったんだね。ボクのあこがれ、それを実現じつげんしたすこさきのボク。こうやってわるうちに、やがてボクは成長せいちょうし、やがてキミになっていく」

 またフィンくんがウサギくんをす。

 いつのにか、二人ふたりこえかがみとガラスでできているステンドグラスのようにじりっていた。

 フィンくんのっていた『ちかくにいるのにとどかない』。

 それってかがみのことだったんだ。


「これからは、いつでもわってあげるよ」

 かがみこうでフィンくんがっている。

「――くそっ! ねがいがかなちまいやがった!」

 ウサギくんがお手上てあげをしている。

「もしかして降参こうさん――ってこと!?」

 わたしはおもわずこえげた。

「うん!」

 フィンくんがかがみこうでうなずいた。

 よかったー。わたしはホッとした。


 そのとき突然とつぜん、ウサギくんがわたしをせて耳元みみもとでささやいた。

「コウモリって〝おまえ〟のことだったんだな」 

「えっ!?」

 こ、これって、おまえ佳穂わたしってことだよね!?

 バ、バ、バレてる!?

大丈夫だいじょうぶ、フィンにもこのいぬっころにもだまっといてやるよ」


「おまえ降参こうさんしたんだろ!? コウモリからはなれろ!」

いとこなしのナイトさまなにってるんだよ!」

「こ、こんなやつがボクの未来みらい姿すがたなの!?」

 ガラスのかべなかと、かがみこうがわと、そしてこちらがわ

 三にん男子だんしあらそいをしている。

 これっていったい、どうしたらいいの!?

 

 ジリリリリリリリリ!

 懐中かいちゅう時計とけいり、今日きょう祭礼さいれい時間じかん終了しゅうりょうした。

 とにかく、四にちげきれた。

 解放かいほうされた気持きもちでわたしはおもいっきりびをした。

 その途端とたん

 ぐううううううううっ!

 ――またおなかった。

 三にん男子だんし視線しせんがわたしにあつまる。

 やめてほしい……。

「さ、もうゆめわりだ!」

 パチン! 

 ウサギくんがゆびらすと、かがみ迷宮めいきゅうはだんだんうすれてえなくなっていった。

 あとのこったのは、一枚いちまいかがみ

 って、ここ最初さいしょ階段かいだんりた横浜よこはま中華街ちゅうかがいえき地下ちか通路つうろかがみだ!

 かがみなかにはウサギくん。

 かがみまえにはフィンくん。

「コレからよろしくな!」

「コレからよろしくね!」


 クラスメイトに友達ともだちが〝二人ふたり〟もえた。

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