第20話 捕まえたっ!

 オオカミの突進とっしん一瞬いっしゅんまった。

 その瞬間しゅんかん犬上いぬかみくんをとりかこむようにガラスのかべがった。

「コウモリ!」 

 ガラスのかべこうがわ、とらえられた犬上いぬかみくんはいつもの姿すがたもどっていた。

 ガラスのかこいを必死ひっしたたく。だけど、それはびくともしない。


 そのとき、どこからか〝うた〟がこえてきた。

 

 ひらひらちいさなコウモリちゃん

 あなたはいったいだれでしょう? 

 みなとうえをくるくるり

 ぶらげられたアジのひら

 ひらひら、ひらひら、ひーらひら

 ひらひら、ひらひら、ひーらひら


〝きらきらほし〟のヘンなうたどうにかしてよOff with your head!! わたしはおもった。


 ってるこえ――ううん、ちがう。てるけどちがう。

 多分たぶん普通ふつうひといたらおなじにこえるとおもう。

 だけど、わたしにはちがって〝える〟。

 ってるこえはガラス。〝すべてをとおし、無色むしょく透明とうめいなガラス〟のいろ

 歌声うたごえかがみ。〝すべてをうつし、はねかえす、かがみいろ〟。

 せんぜんちがう!

 

 突然とつぜん、あたりがくらくなった。

 かがみこう、スポットライトがらすなかだれかがってる。

 しろくてながい、ふたつのみみ。おしろ召使めしつかいのようなあかくろ衣装いしょう

 そして、フィンくんそっくりなかお――ウサギくんだ。

 

「やっと、オオカミがおとなしくなった。さて、いったいだれが、こうもりをつかまえるのかについて証人しょうにんぼう。フィン・有栖川ありすがわ、こちらへ!」

 

二人ふたりとも……ごめんね」

 うしろをかえると、そこにはフィンくんがっていた。

 かがみとガラスの迷路めいろには、無数むすうのわたし、無数むすう犬上いぬかみくんがうつっている。

 なのに、ウサギくんとフィンくんの姿すがたはそれぞれひとつだけ。

 

「オオカミはうごけない! コウモリをつかまえるんだ!」

 ウサギくんがった。

げろ! コウモリ!」 

 犬上いぬかみくんがガラスのかべつよくたたく。


 こ、これってやっぱり、フィンくんが追撃ついげきしゃ《チェイサー》だった、ってこと!?

 でも、ウサギくんはフィンくんとはべつにいる。

 いったいどういうこと!?


本当ほんとうにごめん。ボクに勇気ゆうきがなかったから、んでしまった」

 フィンくんはわたしにかってあるした。

 わたしは、一体いったいどうすればいいの? 

 げるのか、たたかうのか――――

 でも、ちかづいてくるフィンくんは、わたしにかってうなずいた。


 ――そうか! フィンくんのあこがれのひと、って! 

 わたしは、一うしろにがってみちひらけた。


「……つかまえた!」 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る