第8話 なんてひどい演奏だ!?

 そのときかぜいた。〝草原そうげんわたやさしい風〟が。

 屋根やねうえ不時着ふじちゃくしたわたしのまえで、〝風のみどり〟と〝砂飴ざらめのベージュ〟が激突げきとつする。

 犬上いぬかみくんだ!

おそかったじゃないか!? ケンケン!」

砂飴ざらめのベージュ〟がまきらさる。

 それを無視むしするかのように〝草原の緑〟が吹きける。

たせた! ごめん! ケガ大丈夫だいじょうぶか!?」

 風紀ふうき委員いいんちょういながら、犬上くんが心配しんぱいしてくれる。

「はい! でも……」

べそうにないのか!?」

 いたみは大丈夫。なんとか我慢がまんができる。でも、問題もんだいは飛べなくなってしまったこと。

 工場こうじょうの屋根の上。ここはかくれる場所ばしょもない。これって絶体絶命ぜったいぜつめい!?。

「ちょっとはなれてくれるかなぁ!」

 風紀委員長のこえともに、犬上くんが吹っ飛ばされた。

「くそっ!」

 犬上くんは、ころがりながらも屋根をってき上がる。

 そこをねらって、風紀委員長がツメをおおきくうちるう。

 えない攻撃こうげき

 犬上くんがうでをかまえてそれをける。

「くっ!」

 ベージュのかがやきにらされたクラスメイトの腕に、あか一筋ひとすじきずはいる。

「ぃ……オオカミさん!」

「大丈夫だ! コウモリっ!」

 振りかえりもせず犬上くんがさけんだ。

「やっぱりコウモリに味方みかたする、ってのは本当ほんとうだったんだね! ケンケン!」

「して、わるいかよ!」

 犬上くんが叫んだ。

 なんか、いつになくとてもあらっぽい。もしかしておこってる!?

「ああ、悪いね!」

 いくつもの見えない攻撃が犬上くんに集中しゅうちゅうする。

「くそおっ! 見えねぇ!」

 やぶれかぶれに腕を振るって犬上くんがそれをいていく。

 だけど、腕を振るうたびに、そのに傷がきざまれてく。

「ヤセ我慢、どこまでえられるかな!? ケンケン! そんなのの味方するより、ボクと組め!」

「はぁ!?」

 オオカミがひときわ大きな声を上げた。

「ボクとケンケンなら、こんなコウモリだって簡単かんたんつかまえられるし、まつりがわったあとも、上手じょうず学園がくえん運営うんえいできるさ!」

「なにってやがる!?」

 犬上くんがリックをにらむ。

「風紀委員さ! 学園をもっとくする。生徒せいと会長かいちょうないのはってるだろ!? このままじゃ学園はみだれる一方いっぽうだ。だから、良くする! 取りまりはキミのやくだ! きたない仕事しごと、キミ、得意とくいだろ!? いぬコロくん!」

 言葉ことばとはさかさまに風紀委員長はツメを振るう手をめない。

 さそってるんじゃない、〝ふみつけてる〟んだ。

 ひと自分じぶんおもどおりにしたい。かんがえてるのはそれだけ! あったまた!

 ――そう思った時だった。

「キィ━━━━━━━━━━━━━━ッ!!!」

 自然しぜんにわたしのどから声がた。

 それは、〝真鍮しんちゅうしょくひかり〟をはなって風紀委員長にかって集中する。

「ぐあああっ!」

 風紀委員長があたまをかかえてのけった。

 真鍮色の光が照らす委員長いいんちょう。その右肩みぎかたが、〝砂飴ざらめのベージュ〟にかがやいてる!?

 まるでべっこう飴みたいだ。

 こ、これって!? もしかしてクオリアのコア!?


「なんてひどいおとだ……ヘタクソが弾くヴァイオリンか!? お前は!」

 委員長がツメを振るう。

 見えない攻撃! わたしに向かって飛んでくる!?

「コウモリっ! あぶないっ!」

〝緑の風〟がきらめいた。犬上くんが風をまといながらダッシュをする。

 ごおっ!

 ものすごいつむじ風がわたしをつつみ、〝砂飴ざらめのベージュ〟はまぶしく光り、弾かれた。

 見えない攻撃、犬上くんが、ふせいでくれた! すごい! 

「ほう防いだね! だけどまぐれだろ? その証拠しょうこに、ホラ!」

 委員長が指差ゆびさした。

 犬上くんのほっぺたには赤い傷が一筋刻まれてる。

「ォ、オオカミさん!」

にすんな! コウモリ! オレはアイツがゆるせない。だからこんな傷なんて痛くねぇ!」

「フン、なにがゆるせないって!?」

 バカにしたような声でリックがく。

「ああ、ゆるせねえ! あの掲示けいじばんは、絶対ぜったい。ゆるせねえ!」

 え? 掲示板……!?


「ハ! なんだいそりゃ?」

「うるさい! お前の言ったこと、受けてやる! だが、その前にオレをたおしてみろ!」

 犬上くんが向きなおる。

「オレがけたら、お前の言うことをきく! だけどこれはけだ! オレがったら、お前が言うことをきけ!」

「オーケー! いいだろう。なんだい? ケンケン」


昼間ひるま、掲示板にあったあたらしい校則こうそく……取りせ!」

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