第7話 スマホは電源を切れっていっただろ!

こえるか!? コウモリねえちゃん!}


 そのとき、バイオリンの演奏えんそうにまぎれて、〝雨粒あまつぶ水色みずいろ〟がきらめいた。

 ――べ、便利べんりさん!?

 聞きのがすほどのちいさなこえ変身へんしんしてなかったら、絶対ぜったいに聞こえてなかったろう。

 とりあえず、どこかにいる。わたしはちょっだけホッとした。

おれにはおまえさんの声は聞こえねぇ。だから、聞こえているとおもって勝手かってにやる、一かいキリだ。いいか? これから俺がアイツの〝スキ〟をつくる。そこをねらってべ!}

 水色にきらめく声はそう聞こえた。

 と、飛べって!? 

 相手あいて攻撃こうげきなにかが飛んでいるのはまちがいないけど、〝えるおと〟には何も見えてこない。

 よけられる自信じしんがないのに、飛びすなんて!?

 かんがえているあいだにもどんどんバイオリンはちかづいてくる。


 ピピピ、ピピピ、ピピピ……


 ――突然とつぜん、音がした。 

 電子音でんしおん。スマホの音!?。

 音がっているのは、わたしがかくれたのとはべつ階段かいだんだ。

 そこがほのかにあかるくひかって見えている。

「なんだこの音は!」

 風紀ふうき委員いいんちょうさけんだ。

「ここはボクの場所ばしょだぞ!? ボクだけのコンサートホールだ!」

 演奏はいっそうはげしくなり、バイオリンの音はごうごうとなりひびいた。

ゆるさないっ! 許さないっ! 許さないっ!」

 階段が、まるでかみみたいにひしゃげていく。

 ひぃいいい!

 わたしはあたまをかかえてうずくまった。

 かたちうしなっていく階段にかって、風紀委員長はゆみ何度なんどちふるう。

 パイプがはね飛び、ふみばんちゅうう。

いまだ!}

〝雨粒の水色〟がきらめいた。

 ええっ!? 今!?

 もう、やぶれかぶれだ。わたしは地面じめんをけってつばさひろげた。

 だけど――それより一瞬いっしゅんはやく、ひらいたものがあった。

 くろくて、まるい、コウモリの翼? ちがう! かさだ! 黒い傘! 

 まさか、便利屋さん!?

「そこかあああああッ!」

 風紀委員長がおおきく弓をふりかぶる。

 飛びちながらわたしは見た。

 風紀委員長のにあったもの。

 それは、バイオリンの弓なんかじゃなかった! 長くて大きい、ケモノのツメ。

 そこからはなたれた見えない衝撃しょうげき。ねらわれたのは、黒い傘!

 え――!? 傘なんかで、ふせげるわけがないよ!

げ……!」

 わたしは叫びかけた。だけど――

 バシィッ!

 てつをもく攻撃は、黒い傘によってウソみたいにかるかれた。

「えっ!?」

 いったい何がこったの!?

「飛べ! コウモリ姉ちゃん!」

〝雨粒の水色〟がかがやいた

 そうだ、今はにしている場合ばあいじゃない!

 くうっ!

 一気いっきばたき、わたしは工場こうじょう屋根やねうえへ飛び出した。

 飛び立つ時に見えた風紀委員長の姿すがた

 楽団がくだんいんのような燕尾服えんびふく。頭の上には小さな丸いみみ。トリじゃない、ケモノだ!

 なら、そらは飛べないはず!

 そう思ったけれど、風紀委員長もあきらめない。大きなつめを工場のかべき立てながらものすごいはやさで上ってくる。

「だましたなあああああっ!」

 そ、そんなことわれても!?

「くらええええええっ!」

 風紀委員長が工場の壁にぶらさがり、片手かたてを大きくうちるう。

 見えない攻撃! 

 よけなきゃ、たる!

 わたしはやみくもにターンした。

「くっ――――!」

 翼のさきいたみがはしる。

 よけきれなかった! 

 翼の先がやぶれてしまい、空気くうきがうまくつかめない。

 工場の屋根がみるみるせまってくる。

「きゃあっ!」

「やったぞ! った!」

 風紀委員長が屋根の上でちかまえてるっ!?

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