第20話 決着!

「これが、最後さいごよ! さんかん!」

 背後はいごのコンテナのうえで、緋色の娘にわとりこえがした!

 ゴオッ! なにかがこっちにんでくる。たまだ!

 だけど、もうかない! 出来できることは、しんじること。〝えるおと〟を信じる事!

「… ……━━‥━━…━・━!!」

 わたしは、せまりる火の玉を紙一重かみひとえでかわした。 

 火のつばささきりかかる。あつい、けど、もう、げない!。

「よけたなあああああ!! コウモリィィィィっ!!」火の玉がさけんだ。

 火の玉――それは、緋色の娘にわとりそのものだった。

(と、飛べないんじゃなかったの!?)

 ひたいからほのおして飛ぶ緋色の娘。まるでロケットだ。

 火の玉となった緋色の娘にわとりおおきくえんえがきながらもどってくる。

 ものすごいスピード! だけど、よけることなら、こちらのほうが上だ。

 ぐこっちに向かってきた火の玉を直前ちょくぜんでひらりとかわす。

 だけど、そのとき――わたしは見た。

 緋色の娘にわとりくるしそうなかおをしているのを。

 それだけじゃない。こしまであったその娘のかみが、に見えてみじかくなっているのを。

 まさか!? 髪のやしながら飛んでいるの!? どうして、そこまで!?

 でも……だったら!!

 わたしは覚悟かくごめた。翼をひるがえし、緋色の娘にわとりを向けてはばたいた。

 向かうのは、うみ。まっすぐ全速力ぜんそくりょくんでいく。

「チキンレース!? バカにするなあああっ!」

 緋色の娘ニワトリの叫び声はすぐうしろで燃え、海はかべのようにせまってくる。

 スピードは、あっちの方が断然だんぜんはやい。

 いまにもいつかれそうだけど、まだだ、まだ、まだ!

「おちぃろおおおおおお――っ!」

 緋色の娘にわとりが叫んだ。

 こわい……けど。今、ここで決着けっちゃくをつける。つけてわらせる!

 おもいだしたのは、科学館かがくかんで見た、音の実験じっけん装置そうち

 できるかどうかもわからない。でも、信じる! 

 思いがちからとなってのどをふるわせる!

「━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ッ!!!!」

 わたしはうたった。

 歌は〝真鍮しんちゅうしょく〟のひかりはなち、海を大きくえぐっていく。

 海がつくり出すハーフパイプ。そのなかをわたしはばたいた。

「なっ!?」緋色の娘にわとりが叫ぶ。

 大きくえぐれた海面かいめんに、距離きょり見失みうしなってバランスをくずしている。

 波立なみだつしぶきが、緋色の娘にわとりの炎をしていく。

「ちぃくしょおおお――っ!」

 緋色の娘にわとりは叫び声をあげ、海へと落下らっかした。


 ジリリリリリリ――!


 同時どうじに、ポケットの懐中かいちゅう時計とけいりだした。

 逃げれた! と、思ったんだけど……。

(こ、声が、出ない――!?)

 力がけてはいらない。たちまち、海がせまってくる。

「きゃああ――!」

 普通ふつう悲鳴ひめいなら出せるけど、それじゃ、なんにもなんないよ!

 もうダメ、ついらくする!

 あきらめかけたその時だった。

 みなとかぜが吹きはじめた。

 〝草原そうげんわたみどりの風〟が、まっすぐこっちにやってくる。


 ああ、無事ぶじだったんだ! わたしは思った。 


 だけど――突然とつぜん、もうひとつの光がわたしの真上まうえからあらわれた。

 〝真夜中まよなかつきらす白虹はっこう〟そんな色のかがやきが、いきなりそらから降ってきた。

「コウモリ!」

「コウモリさん!」

 声はまったくの同時にこえた。

 そして――

 空中くうちゅうで3つの光がきらめいた。それから、山下やました公園こうえんに一つの落下音。

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