[号外]また来た…「台風から変わった温帯低気圧」

 また来てしまった。

 「台風から変わった温帯低気圧」。

 もともと台風だったので、南の熱い海でため込んだ水分をたくさん持っている。

 しかも、「温帯低気圧になった」というのは、ただちに「弱まった」ということではない。

 台風は熱帯生まれなので、温帯に来ると適応できなくなり、弱まっていく。

 ところが、それが温帯低気圧化すると温帯に適応してしまうので、普通に発達する可能性があるのだ。

 今回の「台風から変わった低気圧」は、日本列島を通過するあいだは、中心気圧に関しては「現状維持」という予報である。

 また、温帯低気圧になると、前線と一体化するので、低気圧から遠くても前線沿いでは大雨が発生する可能性がある。現にそうなっている。

 「空気にどれくらい湿気をため込む余裕があるか」という数値を「湿数」という。「湿数」が低いほど雨が降りやすい。で、現在、南西諸島、九州、四国、本州(北東北をのぞく)はその湿数がとても低い状態になっている。

 つまり、湿気がちょっと増えただけで持ちこたえられなくなり、どっと雨が降る可能性があるということだ。


 愛媛県の松山市は、松山駅や松山城のあるあたりの街の中心部で浸水被害が発生したとのことだ。

 松山市は何度か訪れたことがある。お城のお堀のまわりところが大きな通りになっていて、広々した感じで歩くと気もちがいい道だった。また、松山市の中心部は路面電車が生活の足になっている。このお堀の水があふれ、路面電車の線路も一部が冠水しているようだ。

 昨日夜から今日未明にかけて、長崎県北部で、一時、線状降水帯が発生したようだし(気象庁「今後の雨」による)、松山市付近は、線状降水帯そのものではないけれど、それに近い「線状」または「帯状」の強い雨雲群が発生していた。


 この雨の範囲は、今日の午後から、日付が変わるころにかけて四国・本州を移動して行く。現在(二日一四時ごろ)は四国東部から関西地方にかけて強い雨の領域が広がっている。これがさらに東に移動していき、「夜の初めごろ」には関東に到達、そして夜半には東の太平洋上へと移って行く。

 しかも、この雨の領域は、「線状降水帯とは呼べないけれどそれに近い線状または帯状の強い雨の領域」を持っているので、それがかかると「激しい雨」(一時間に三〇ミリ以上)・「非常に激しい雨」(一時間に五〇ミリ以上)が来ることになる。


 この「線状降水帯」または「線状降水帯ではないけど強い雨の領域」は、とつぜんやって来る、とつぜん雨が激しくなる、というところに怖さがある。

 松山の雨量を見てみても、午前一〇時ごろは普通の雨だったのが、午前一〇時三〇分頃から雨量が非常に多くなり、一時間に換算すると五〇ミリを超える雨量になった。それで午後一時にはまたもとに戻り、現在は雨は上がっているようだ。

 能登大水害のときもそうで、線状降水帯が発生するまではそんなに雨が強くなかったのに、非常に短い時間で雨が激しくなり、災害にいたった。


 また、雨が降ると、雨がやんでからも土が水分を含んで、土砂災害の危険が続く。また、川は、上流に降った雨が時間差で下流に押し寄せることがある。

 前線と低気圧が去ると雨がやむ。雨が激しいと、激しいだけ、雨がやむとほっとするのが人として自然だと思うけど、「激しい雨」・「非常に激しい雨」のあとに本格的な災害が襲ってきたりする。

 雨がやんだあとも、しばらく警戒心を持ち続けたほうがいいと思う。


 それから、これからこの雨の領域が来るのを迎える地域の人たちは、これからの雨の降りかたに注意しましょう。


 なお、気象庁は、土砂災害、浸水、洪水(川筋ごと)の危機の度合いを地図形式で見やすくした「キキクル」というページを開設している。「気象庁 キキクル」で検索すると出て来る。紫が災害発生手前の警戒レベル最高で、ここまでで避難していないと危ないというもの、これが黒になると「災害がすでに発生している(可能性がある)」という意味になり「緊急安全確保」が発令されることがある。

 「キキクル」は「危機が来る」という意味の愛称なのだろうけど。

 なんか、「キキクル」というと赤いリボンのかわいい少女魔女さんが来てくれるみたいな感じで、表示している内容にくらべて愛称がかわいらしすぎるのではないだろうか?

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続・台風の話 清瀬 六朗 @r_kiyose

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