【夜会話】ダイキ



 夜に手頃な時間が空いた。ダイキと話でもしようか?


  ◇


 ダイキの部屋に訪れると、自然と過去の記憶と死因の話になった。


『まさか、ダイキがおじいちゃんだったなんて、思ってもみなかったな……』

「それこそ、俺自身だってそうだよ。自分がジジイだったなんてよ」


 ダイキは椅子の上にあぐらをかいて腕を組む。こういった所作に不思議と威厳が感じられていたが、知らず知らずのうちに年甲斐というものが滲み出ていたのかもしれない。


「もしかすると……侑、お前もそうかもしれないぞ? 実際、体だけ若いとごまかされて分からないもんかもしれねぇからな」

『確かにそうかも……』


 精神年齢という言葉があるが、高校生の体に引っ張られれば、誰しも若々しい態度になってしまう可能性もある。

 ……しかし老爺だった自覚を得ても、ダイキの立ち居振る舞いに目立った代わり映えはない。


『でも、ダイキは根本的には同じような人物だったの?』

「あー……自分で言うのも変な話だけどよ、あんまり変わんなかったかな……」


 あるいは「みんな同じ高校生である」というフィルターを通して見ていたからこそ、根本の貫禄が覆い隠されていたのだろうか。


「けど、一番は携帯……じゃねぇや、スマホが使えてたから気づかなかったんじゃねぇか?」

『ああー……』


 それは一番大きいと言っても過言ではない。セルフレジに苦戦していたのを知らなければ、より一層驚いていたかもしれない。


「どうしても孫と連絡取りたかったからな。苦労して教室通って学んだ甲斐が、まさかこんなところで発揮されるとはな……」


 世の中、不思議なこともあるものだ。


 ――他愛もない話をしながら、夜は更けていった。


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